「学生に裏切られる」なんて我ながらキャッチーなタイトルをつけてしまったが、どこの国でもよくあることだと思う。 学生というのは甘やかしてもいいことなんてないのである。 学生自身が「ちょっと自分のためになりそう」なんて思えば寄ってくるだけのことであり、 それが本人のためにならないのは先生自身がなんとなく気づいていたりもする。 運良く学生が自分で気づいて、自分の才能に自分なりの水遣りをして、花を咲かせれば、 そこでやっと初めて、教授と学生はまともに仕事が始められる。 講義して聴いてついてまわってるうちは「先生と生徒」なんだと思う。 はっきり言って小中学生の教室における師弟関係とあまりかわらない、研究はできない。 まあそんなことはわかってはいたんだが。 11ヶ月ぐらい前のBlogで書いていたある学生はやっぱりダメ学生で、 私のところに教えをこいに来てはいたが、センスはないし、買い物は下手だし、おまけに頑固ときた。 私としては技術流出を避けるために師弟関係や協力関係を結ばない相手には、深く情報を出さない主義(Blog等で技術の話をしないのはこのせいでもある)なので、師弟関係である「co-directeur」を結ぶ前に、試験をいくつかさせてもらった。 途中までは、いい線いっていたんだが、第二ステージから全く連絡がなくなった。 そもそも「進捗を連絡する」のも課題にこみにしておいたので、ほぼ失格である。 今日、近い話題になったのでSimonに彼の現状を聞いてみたところ、驚くべきことに。 彼の直属の上司は彼に「ダメ認定」をつきつけたらしく、グラントも打ち切り、彼に機材などの資金を提供していた、下の研究所の所長も、怒って協力を打ち切り、その後の行く末は不明という。 ちなみに彼はパリの名門大学の有名研究所の博士過程1年目学生である。 まあ私個人には特に影響がないように見えるかもしれませんが、 実際に「彼が進めるんだろうな」と思っていたプロジェクトが見事に消え去っていたので、 資金繰りとか研究目的の構築や説明からやり直さなければならなくなってしまったので、 これはみごとに「荒らされた」といっても過言ではないんじゃないかな、とか。 おそろしいなあ、フランスの教授も。 私が付き合うときは特に問題もないんだけどなあ。 それに彼の教授の指導能力というか、センスについても問題があるだろうに。 なお、この手の「問題がある学生」というのは、フランスの場合よく外に奉公に出されていることがある。 (スタージュのように6ヶ月とか期間限定で学位認定のための必須時効としての奉公ではなく) しかし、 「助けてくださいお願いします」とか擦り寄ってくるなら助けようもあるんだけどねえ。 たしかにうちは名門でも大研究室でもないけどね、熱意と愛情と技術はあるはずなんだけど。 能力のない学生というのは、そういう大切なものが見抜けない、だから裏切られる。 正確には裏切られるというよりも、自分で駄目になってるんだけどね。 少年易老学成難 一寸光陰不可軽 未覚池糖春草夢 階前梧葉已秋声 ちなみにこれは「少年老い易く学成り難し」で有名な『偶成』という漢詩で南宋の朱熹作とされているが、実は五山の僧がつくった和製漢詩だという説がある。 …というわけで漢詩にも裏切られることがあるのだな。