今週末は「La fete de jeu」、いちいち訳すのがめんどいがゲームフェスティバ ル、とでも訳しておこうか、町中でゲームというゲームが展開されるフェスティ バルがある。 アナログゲーム、テーブルゲーム、カードゲーム、球技にビデオゲーム・・・エ ンタテイメントテクノロジーの研究者としてはフランス語圏、ラテン語圏、しか もこの地味な町でこういった遊戯を発見できるのはこの上ない喜びである。 ちなみにあまり知られてないかもしれないが、ゲームの世界にもモンドセレク ションがあって、それはモナコで開催されている。オセロとかもたしかそこで受 賞したから有名になったはず。 まあ、ともかくビデオゲームと対を成すゲームといえば仏語圏は捨ておけない存 在なのだ。 それはそうとしてFete de jeuに話を戻すと、今回ついに出展者になることに なった。 ほぼ独りで企画を持ち出して、展示にこぎつけた。 フランス語まったくわからん状態で渡仏したわけで、3年でここまでくるとはさ すがに恐ろしいオッサンだなとつぶやいてみる。 そうはいっても科学者の端くれなので…いや「端くれ科学者」が週刊連載並に 論文の終われてるってのも変な話なんだけど…転んでも論文のネタになるよう なことをやらねばならないからそれはそれで大変だ。 昨日は一日中、AceSpeederWiiを書いていた。なんだか自分的に大幅機能アッ プ。具体的にはプレイヤーデータの解析機能。オンラインゲームだったら GameSpyみたいに大儲けできそうなネタでもある。まあともかくゴリゴリ書く。 ひととおりゴリゴリ書いた後で、いちおう展示なのでプレイヤーの幸せも考えな いといけないので、各機体でちゃんとクリアできるか試してみる。えらい難し い。何十回とプレイする(ログを取ってるので何回プレイしたかはカウントでき るが・・・途方もない回数)。ちょっとでもパラメータいじろうものなら、過去 のテスト結果は信頼できなくなるから、実験者、オペレータ、コーダーは同じ人 がやっては大変。そんなことをずっと独りで続けてきた作者のナカタニさんには 足を向けて眠れない。てゆか日本どっちだっけ?てゆかそもそも眠れない。 少しでも空いてる時間はコードネームPPP(Wiiお絵描き)をひたすら直す。まだ満 足に動いているという感じがしてないので直すところが多すぎる。 WiiRemoteの 位置検出で、新しいアルゴリズムを思いついてしまった以上、実験もしないで展 示をする気にもなれない。 プログラムをごりごり直してたら、ある瞬間から突然IR-LEDが片目になったので プログラムを疑ってたら、実は自作のUSBセンサーバーの赤外線LED が片側昇天 しててあせる。ハンダごて探して出てこなかったのでよけい焦る。これが本番 だったらジ・エンドだった。…が嫁の機転で無事発見。LEDの断線をチェックす るよりも、新しいのを作った方が早いと判断し、かねてから希望だった「極小セ ンサーバー」に挑戦する。正味1時間強。なんとLED間距離を 20cmから2cmに縮め た。もちろん初期化時にそういう初期設定をあたえないとまともに検出できない が、テストしたら、ノートPCの画面前30cm角の空間で検出できた(LEDは電源ボ タンがあるような位置)。これは転んでもただでは起きなかったかもしれん。 嫁に感謝しつつ、体験者用の説明ポスターのイラストなど書いてもらいつつ、次 は「妊婦の夫」としての仕事をすることにする。SageFemme、つまり助産婦の講 習会に参加。全6回中、父親参加の日だったので。幸いなことにSageFammeのオ フィスはマイエンヌ川をはさんで徒歩2分。美しい流れがベランダから見える新 築高級マンションの一室。他のフランス人カップル2組といっしょに出産時の心 構えとか、実際に何が起きるのかとか、陣痛が始まったときの姿勢とか、子供の 抱き方とかを学ぶ。まあいちおう他の2組と違って初心者じゃないので、心構え とかはよくわかってる(はずだ)し、助産婦(ちなみに小柄美人、とても出産経 験者とは思えないイキイキ姉さん)よりは男性側の視点で見れる。実際には出産 で血がドバーと出ても普通の男性は失神しないだろうし、後産の胎盤だって、見 たら「ううん、美しい・・・9ヶ月もよくがんばったね」と言いたくなるシロモ ノのはずだ。それに日本の病院での出産姿勢では「妊婦は絶対見れないもの」を 見ることが出来るから、まあ男性の経験は男性の経験で意見としてはかなり役に 立ったらしい(助産婦談)。なお私自身は分娩新生児医療の日仏の違いに驚い た。知っててよかった。へその緒はすぐには切らないし(すぐに切る必要はない し、酸素を送る生命線なので)、半裸でだきとめるらしい(保温と匂いなどの理 由)。お母さんが抱きとめられないときはお父さんがTシャツの中に入れろ!と か言われる。とにかく一瞬でも赤ちゃんを離しちゃダメだ、という。張りのモニ タリングとかも、あまり信用しないで、外れてることもあるし。そもそも出産に おいて「責任者はあなたたちですから!」と言われる。あとは不必要に体を洗わ ないらしい(羊水拭き取らない、という意味)。日本はあれだな、赤ん坊がでて きたら即、へその緒切られて、看護婦に渡されて、バーコードつけられて、照明 でグリルされて、箱に入れられて、ちょっと顔みせ程度に抱かせてもらったら、 あとはガラス越しの箱の中だもんな。ほとんど動物園かマトリックスだよ。ちな みに父親抱いてると、乳首吸いにくるらしい(某スパゲッティモンスター教団の 「男性の乳首はなぜ存在するか」よりも明確な答をここに発見できるわけで)。 でも退院までガラス越し動物園状態で、顔も見てない、退院まで子供がどれぐら いの重さで、どれぐらいの(気温じゃなくて)体温で温める必要があって、何が 必要か、なんてわからんよな。「あかちゃんがやってくる」→「なんか買う/読 む」だもんな日本の父親ができることってのは。 まあそんなわけで妊娠とか出産とか育児ってのは初めてでなくても勉強になるな あと思ってたら、窓の外では嵐がやってきた。雷。雷。雷。雷神の太鼓のような 雷。滝のような雨。と、そこへ(先日娘を瀕死の交通事故で失いかけた)友人グ レゴワールから電話。車で迎えにきてくれるらしい。ナルの保育所も閉園時間ち かかったのでホント助かる。 朝の学校では超不機嫌だった息子(これについては詳細は書かないが、微妙に登 校拒否気味)が、併設の時間預り(アフタースクール)では超ゴキゲン。フランス 語もバリバリ喋ってる。おそらく登校拒否は言語の壁の問題ではなくて、先生と の相性なんだろうなあ・・・と思いつつ、帰宅。自分はそのままグレゴワールの 車に残りFeteDeJeuの準備。親切なことに機材を運んでくれるらしい。 研究室に戻っていそいそと機材をかき集めて、自分の設営会場の古城へ。ビデオ ゲーム関係は「お城の舞踏会」が開催されてそうなホールで開催。責任者は町の ゲームクラブ「SimmsClub」のリーダー。情報系の学生さん。おもってたよりも いいやつぽいので安心。プロジェクタがあったほうがいいよ、ということなので 研究室に戻って探してみるが、畜生め、ないじゃん(これについては腹の立つこ とがいっぱいあるがいちいち書かない)。会場に戻ってリーダー Emmanuelに AceSpeederWiiの操作説明。今夜はこれから21ー04時までネットワークゲー ム大会らしいので、それにあわせて代わりに展示してもらうことにした。ちなみ に隣には日本仕様のファミコンとかあるマニアっぷり。写真取ってくればよかった。 いったん食事しに家に帰る。もちろん会場に戻ってもいいんだけど、「ゲーム キューブ版マリオカート大会」(たぶんインターネットがない、という理由と、 みんなでマイクパフォーマンスとかしながらわいわい盛り上がるスタイルなの で)やら「Wiiボクシング大会」をとなりでやってる状況で開発とか執筆とかす るぐらいなら家で、日記書きながらやった方がいい気がしたのでいまに至る。 いったらBlogのネタにもこまらないぐらい楽しいんだろうけどね・・・まあ明日 の天気もわかんないし、自分は科学者&開発者なので、ここは心を鬼にして、新 作開発に注力すべし。 それにしてもセンサバーの修理を終わらせておいてよかった。いまごろハンダご て握る体力ないし。 朝の4時までに何か完成したら持っていくよ、極めてると終わらないのである意 味、無理かもしれないけど。 ちなみにここまで書いて、タイトルを考えあぐねて「クリエイタ然としたある日 のできごと」としてみた。 なんだか日常的にこれぐらいのできごとはある。 全てが非定型業務なんだけど、創造力とコミュニケーション能力と回りの心が美 しい人々の助けによって、乗り越えていると思う。全然「然」じゃないがそれも 「然」。 いつかある日突然日本に帰ったら、こんな日々のことを思い出すかと思って詳細 に書いてみた。 仕事戻ります。