どうも統計でも「元旦に届かない年賀状を書く人」や「電子メール・Webグリーティングカードで済ます人」が増えているようです。

 そういえば1997年冬?に博報堂が「電子グリーティングカード」略して「電グリカード」という広告企画をやっていて、それをお手伝いしたことがあります。たしかそのころはYahoo!(電通)全盛時代で、他の検索エンジンといえばInfoseekぐらい。博報堂はサイバー関係は後発で、社長室直属の新プロジェクトだったと記憶しています。

 当時としても、けっこういけている企画で、ビール会社やクルマ会社がスポンサーになっていて、送った人にももらった人にも、抽選でクルマやらビールやらが当たってしまう、おめでたい企画でした。ちょうど八谷和彦氏のPostpetがブレイクする前で、メディアアート的でもありましたし。

で、我々工芸大チームは委託された抽選事務局にてありとあらゆる雑用をこなすのでした。

 確か当時のサーバーシステムはOpenSTEPのWebOjectで構築されていて、集中するアクセスに対して、とてつもなく遅くて非常に不安定で担当者が半死に状態で年末を迎えていたことを記憶しています(途中でplに書き直したような?)。まあ私たちが直接システムに手を下すのではなくて、逆に、システムがいちいち対応できないようなことを「事務局として」活動するのがお仕事でした。

 もう10年も前のことなので時効だとは思いますので以下簡単に紹介しますと…

■受信者が通知メールに返信してしまう

 ……これはもっとも多い例です。基本としては、数週間かけて同様の事例から構築した「事務局メール」のテンプレートから文例を選んで、返信者に「やんわり」返答します。あくまで受信者が赤面しないよう、「システムが自動に返しているんだ?」と思わせるような作文がベストです。『おかけになった電話番号は…』という感じのトーンになります。ちなみに、システム側では「このメールに返信しても届きません」としっかり書いてあります。なお、『久々に連絡くれてありがとう!そういえば先日貸した○○だけど…』とか『海外でもこうやって簡単にグリーティングカードが受け取れるなんていい時代になったんですね』なんてメッセージはまだハートウォーミングでいいのですが、私が知っている範囲で、もっぁ��も「痛い」間違い返信は、非常に長いメールで『息子や、久々に連絡くれてありがとう、今年はお父さんが亡くなって…』という内容のものでした。

 あまり深くは突っ込みたくないのですが、いったいどんな息子さんがどんなマダムにどういうシチュエーションで、どんなメッセージを送ったのか…それが判らないと返しどころも見つからないというか。

■運営側の意図に突っ込みを入れる

  『このシステムは無料で!と書いてあるが実はこういうことなんだろう!!』という感じの内容。これはもう我々バイト君には手に負えない案件になります。「ハイそうです申し訳ありません」とは返せませんし、へりくだりつつ、でも穏便に。という感じです。当時はまだ個人情報保護法もSPAMメールもない時代でしたからねえ。Niftyの休眠アドレスに送ったおかげで、有料で、しかもメールが届かない、という状況も生まれるころでしたけど。ちなみに、この手のメールは、なかなか良いところをついているんですが、想像力が豊かすぎて、逆に相手にヒントを与えることも多々あったりします。たとえば、グリーティングカードの送受信者をつかった友達ネットワークデータベースの自動構築、なんて最近のGmailぐらいしか実現できなさそうなネタではないですか。

■賞品を抽選する

  私は忙しかったので、この抽選の場には立ち会えなかったのですが、事務局スタッフ一同、『誰がクルマを当てるのか??』に注目が集まってました。ちなみにこの手の「クルマがあたる!」という商品キャンペーンですが、大抵はオプション全くなしの軽自動車、100万円以下ぐらい、というのが相場っぽいです。でないと景品表示法とかいろいろありますしねえ。真冬にエアコンなし、パワステ、パワーウィンドウもちろんなし、なんと内装のウレタンパッドもついてない、というような冷蔵庫のようなクルマを想像するのはちょっと寒いですが、それに近い感じですね。

 なお、本当にクルマは当たりました。メールで通知後、FAX で物理的な住所を確認して、さらにどうやって配送するか、というフェーズに入ったと思います。なんと当選しているのに連絡がなく、他の方にチャンスが渡ってしまったことも多々ありました。ところで抽選にはいろいろなドラマと奇跡があることも事務局スタッフは目の当たりにします。

 「すごいなあ」と思ったのは、何通も出していないのに、一人で数件の当選を果たす人。この人はこのシステムがそんなにたくさんの人に触られてない?と勘違いするかもしれませんね。でももっと「すごい!!」と思った人は『全部のコースにすべて応募できた人』ですね。あんなに遅くて混み合っていて、スタッフですら最後のステップまでたどり着けなかったことも多々あったのに、5コース5名、都合25名全部登録できるなんて、**本当に根性のある人**だと思いました。ええ本当に。

 まあ、そんなわけで黎明期の体験談(抜粋)でした。

 最近ではFlashを使ったグリーティングカードが主流ですね。

 しかもひところに比べて明らかにクオリティが落ちているような気がします。

 10年前に出来上がったアイディアを惰性で続けるのではなく、

よりいっそうの研究開発、チャレンジを続けてほしいと思うわけです。