某メディアアート世界的公募グランプリに応募してみる この投稿のラスト12時間ぐらいでちょっと面白い体験をしたので、3段ロケットになぞらえて記録してみる。 まずは、この公募グランプリへの投稿向きな作品「RoboGamer」をちょうど去年の今頃思いついて開発を始めたので、足掛け1年になるのだが、いざ投稿しようとなると中々時間がとれず、結局、締め切り週になって取り掛かり始める始末。 締め切りが延びたのは不幸中の幸いだったのだが、さらに今週はGillの留学関係書類の準備で振り回されてしまった。 まあ楽しんでやっているということにして(そうしないと自分が辛い)。 しかし自分のときもフランスビサ申請書類書いたなあ…私の場合は3人分なので、一度コツをつかんでしまえばなんと言うことは無いのだが、気合を入れないと読めやしない言語の役所の書類なんていうのは、一人で悶々と取り組んでも辛いだけだ。 そして普通のフランス人がフランスの入国審査を知らないように、普通の日本人は日本の入国審査を知らない。 いろいろ勉強になった。 大体ここ数日の送信ボックスがすごい。30通/日で、しかもどのメールもかなり時間をかけて書いている。 まあ楽しんでやっているということにして(そうしないと自分が辛い)。 で、投稿のほうなのだけど、とにかく初めてだし目鼻をそろえるか~。と仕上げたDVDを嫁に見せてみると「つまんない」とダメ出し。内容は面白いのかもしれないが華やかさが無い、というようなことを言う。 この時点で予定より押しているので余裕は無いのだが、嫁にダメ出しされた時点で私の「心の力」一次タンクは完全にカラに。すぐさま2次燃料に切り替えて、ちょっと考えてみる。 そもそも前回SIGGRAPHにダメ出しされた内容(実際には査読結果が返ってきて無いので、風の噂でしかないが)もやはり「絵的な派手さ」だった。HMDはタダでさえ地味に見えるし、他のロボット部分も「美学」とかいって(実際にはメカ精度の問題なのだけど)かなりシンプルに構成したので、見た目の派手さが無い。そう、何の意味もなくてもロボットが踊るとか、そういう派手さがないと、ダメなときはダメなのだろう。 とりあえずはっちゃけ要素を導くために、先日のGillとのディスカッションを思い出してみる。学生は背景知識が少ないので理解力が低いが、その分、自分の言葉で咀嚼するので、いくつかキャッチーなキーワードが出てきていた。逆にその手のキーワードというのは、ロボットなり、CVなりVRなりの専門家や、作家本人である私が1年かけてウンウンとコンセプトを錬りこんできた人間では当たり前すぎて出てこないワードなのである。 しかし「何がおもろいのか」を1秒以下で理解させるためには、それが必要だ。 加えて言うと絵的な要素も、音声も、音楽も、もっと気を使わなければならない。 特に、これは学会ではなくて、アートなのだから。 とはいえ、時間には限りがあるので、ある程度のジョークセンスに則した構成で、補足映像を1本作ることにした。技術的にはかなり高度なことをやっているので、これがあるかないかで、理解とその結果はずいぶんと違うはずだ。 まずSIGGRAPH初期バージョンで使うはずだった…が没にした曲を掘り起こしてくる。特に気に入っている2曲だけ使う。 絵的に新しいものを描き起こしたりするのはまず無理なので、ラッシュを洗って新しいコンセプトで使えそうな映像を掘り起こす。逆に手元にカメラと機材があったら、また撮影とかデモ映像作りのための開発行為を行なってしまうだろう、危ない危ない。 フォントなどのテイストもポップ路線で攻める。使う言葉も、語句の統一感をおそれず、理解のしやすさ、純粋な面白さに視点を置く。 尺は1分きっかりを目標。約2時間ほどでシーケンス完成。嫁に見せてみるが、笑いが止まらなかったところを見ると成功だ。その勢いで、調子が悪いDVDオーサリングソフト「Ulead DVD Movie Writer」を使うのをあき らめ、代わりに「Adobe Encore」に切り替えた。作りかけのプロジェクトを棄てて、さらに工数が多くてめんどいソフトに切り替えるのは勇気が要る行為だが、正体不明のエラーで永遠にはまり続ける余裕は今の私には無い。 これまた2時間ほどでメニュー作業と映像3本を構成終了。当初、補足映像とするはずだった追加の1本は、アペリティフとしてオープニングに入れることにした。これでディスクを突っ込んだ後の最初の印象がずいぶん違うはず。DVDはメニューで映像を選べるので、既存の渋い映像は技術解説としてつかえるし、ボーナストラックも何かの役には立つだろう。何せ全ての映像の著作権は私が持っているわけで。 テストのDVDを焼いて見るが無事再生可能。バックアップを焼きながら、ジャケットも作る。だいぶ時間がなくなってきたところで、提出物を確認すると…オンライン以外にかなり必要なものがあることに気づく。特に書き物。真面目に考えたら寝たくなるような内容なので、もう3段ロケットに切り替えて、最後は何も考えずにWordと立ち向かう。書きおこし、描き下ろしとまではいかなくても、新しいスクリーンショットと説明を加えるだけでもかなりまともになるはずだ。 さらに2時間ほど作業して、結局10ページのドキュメントが出来上がった。画像は増やしたと言っても、コンセプトや技術だけで文字100%のページがいくつかあるので、これはこれでかなりすごいことかもしれん。てゆかもっと画像増やしたいな、欲を言えば。 無事、プリンタとPDFで印刷して、ガシガシと署名をしていく。伊達にヨーロッパの契約社会で暮してない。丁寧に全ページ、イニシャルいれてやった。さらに、DVDはプルーフとして2枚、CDROMは小型版。レーベル印刷 する余裕は無いので、全部、手書き、イラスト入り。 あらかじめ買っておいた国際郵便封筒に入れてみる。500gの封筒に250gの内容だがまあサイズもぴったりなのでよしとしよう。 外は生暖かい雨なので、傘を出して郵便局に出してくる。終わった。 途中歩きながらいろいろ振り返る。予定より9時間ほど余計に時間がかかってしまったが、クオリティというか、作品の完成度はぐっと上がったように思う。 こうしてみると、締め切り1週間前どころか1日前に全てのことを済ませているように見えるかもしれないが、1年間のうち、何度もこういった修羅場を味わいながらここまで来たのだった。修羅場と修羅場の間の寝かせ方も問題で、今回はAceSpeeder2とかGPUVisionとか3人の学生の世話とかそういったものが、見えないところで積み上げになっている。 さらに言うと、いつもはいろんな人に手伝ってもらっているのだが、今回はアートへの投稿ということもあり、完全に一人で作業した。今まで関わってきてくれた人は共著に入れてあるが、著作としてもコンセプトとしても、もともと一人で思いついたものなので、思い切ってピンで投稿してみた。 これでRoboGamerはバージョン3.1というところか。Laval Virtualまでどれぐらいがんばれるかわからないけど、実際には実働1週間切り始めているので4になればラッキーだろう。ならなければ発表辞退もありえる。 さらに今日出した公募グランプリは重賞も重賞なので望みがあるかどうかもわからない。初参加だし。いずれにせよ5月には結果が出るだろうし、もしダメなら、このプロジェクトは休眠行きかもしれないな。 …とおもったら、そういやSIGGRAPHからSketchに出してくれ、と言われていたんだった…!締め切り4/12か…5月ならいいんだが…こりゃまたがんばるしかないなあ…明日も出勤かな、やることメモして寝ようっと。