先週の日記を思い起こしつつ執筆。 「ハウルの動く城」をやっとみた。フランス版のDVDで。 というのも学生とE’Lecrercに連れて行ったときに勢いで買ったものなのだが、日本版と違って、各言語が入っているのでフランス語の勉強にもなるのでお得感がある。それに珍しくコレクターエディションにも手を出してみた。 本編は…ネタバレもあるので適当にしておこうと思うのだけど、簡単に言うと…宮さんのコンテの山を運ぶ途中、どこかの廊下で人にぶつかり床にばら撒いて、数ページ遺失しながら、適当に順番をそろえて作画にまわしたのでは…という感じ。もしくはそういう事故もおきずに、膨大なコンテの中で作画が終わったものを編集さんがなんとかつないだらこうなりました、とか。 とにかく、「文学的な味わいがあるカット」はあまりなくて、ほとんどが「説明的なカット」か「説明不足なカット」。 映画の導入に必要な常識的な構成が、かなり無視されている印象があるし、後半のほうのストーリープロットも、まるで『耳をすませば』の雫ちゃんが書いたのか?というぐらいベタなファンタジーすぎて、荒削りで…あなたらしい作品だと思いました。とラーメンのひとつでも作ってあげたいぐらいの雰囲気です。 背景はドイツとフランスが混ざったアルザスっぽい感じではあります。犬のシャーロックホームズやカリオストロの城で実現できている、欧州風味の世界観と文学的表現の融合はあまり期待できませんでした。 テーマ曲もハウスのCMが頭にしみこんでいるので、最初はシチューしか浮かんできませんでした。これは鈴木プロデューサは事前タイアップの逆効果として学ばないといけないと思います。 まあ酷評はこの辺にしておいて、プラスの評価は、キムタクの声優は意外によかったですね…というより、立ち居振る舞い等、おそらく後半はキムタクを意識して作画がされているのではと思いました。ドラマやSMAP×SMAPなどで見せる演技とは別の境地を感じます。 個人的な見所としてあげられるのは、登城シーンですね。 ストーリー上はなんてことはないカットですが、実に長い秒数が費やされています。ここで、荒地の魔女とソフィーの位置関係を、階段の段に見立てて、うまく表現しています。汗や老い具合もアニメーションらしく上手に表現されています。 「千と千尋」でもよく見られますが、宮崎監督は階段を使った映像表現が上手ですね。 画面に奥行き感と、背景美術と人物のセルに融合感がでますし、動きを表現しやすく、それでいて人物の位置関係も描きやすいです。 さすがレイアウト出身、というところでしょうか。 さて、本編はこの辺にしてコレクターズエディションにあった「ハウルの城はこうして動いた」について解説してみます。 これをみて非常に驚きました。 あまりに技術的に「力技」を使いすぎです。 これは完全に時代に逆行しています。 なんというか、2.5次元というより、2.2次元ぐらいの技術です。 この解説映像を見た外国人が本気にして真似しないか不安です。 たしかに話題としては「動く城」をどう動かすか、は重要なのですが、その解答が、手書きパーツとベジェトレース、ボーンの入った2Dビルボードの手付けアニメーションでは、今日日の「紙&人形アニメーション」やFlash作家と同列になってしまいます。 ほとんどのつじつま合わせをモーフィングでやっているのも気になります。 もう2回目は、モーフィングがモロに目に付いてしまって…。こんな舞台裏ならみないほうがよかった、というぐらいです。 アニメーション物理も城の脚にちょっと、あとはゆれるランプにちょっと、と手付けのアニメーションに比べた利点というものがありません。 ほとんど作画さんのためのシミュレータとして使った、という見方ではないでしょうか。 一般の視聴者はハイビジョンバイジングやAfterEffectsされたTV特撮ものやTVアニメを見慣れているので、それでいいのかもしれないんですが、クリエイター側とか、海の向こうのPIXARさんとかの感想を想像するに赤面ものの技術を胸張って発表しているような状況を感じずに入られません。 まあ協力各社のためのサービスカットというのもあるとは思いますけどねえ…。 私が担当エンジニアなら、いっぺん、フル3D,フル物理でパイロット映像を作ってみて、それを皆に見せてみて、「どうだろう?手書きと物理、何が違う?」という話を先ずやってみたと思います。 そのテストがあってこそ、2.2次元技術が光ると思うのですが…。 製作段階からBlogやFlashを導入している宮崎ゴロウ監督の「ゲド戦記」はもしかすると、そういう気負いがなく見れてよいかもしれません。 Blogも単なる話題だけでなく、生々しいです。19歳の新人の炊き出しとか、週末のラッシュ上映や、全体完成映度(現在18.6%)、それからプロジェクトマネジメントとしての方法論など。 宮崎ゴロウ監督は、やはり土木系出身だけに、現場の雰囲気作りと作業の積み上げ方法論には才があるようです。 ちなみにBlogは2つあって、 前作までプロデューサ補で今作では制作の石井朋彦氏の「制作日誌」 http://www.ghibli.jp/ged_01/ 「監督日誌」となっています http://www.ghibli.jp/ged_02/ 制作日誌が面白いですね。 なお声優もきまったようで、王子・アレン役に、岡田准一、大賢人・ゲド役に、菅原文太となったようです。