続きです。 フランスに住んでいるので日本で報道されているフランスのニュースはかなり少ないです。 ニュースサイト、前回の一時帰国時のBS1の国際ニュース、家族からの電話などでしょうか。 しかし米英系のメディアに翻弄され、パリだけの雰囲気で記事を書き、真実をゆがめるような報道をするフランス在中日本人記者にも若干の不満を感じます。 確かに都市部郊外では若者による騒動が起きているかもしれませんが、移民政策に対する見解や地方都市の現状を見ずにフランス全体やイスラム社会の印象を悪くする報道をするのは恣意的もしくは調査不足といわざるをえません。 まずは暴動は組織や思想、主張を伴ったものではなく、組織的な声明文もあげられていません。 散発的な都市部郊外の若者による放火や破壊活動です。 本質にあるのは貧困層に対する内政・教育問題であり、ここにおいて脈絡のない外国人差別などを引き合いに出すことは、フランス在住の日本人を騒動の被害者に巻き込むことになることを理解すべきです。 (フランス留学中で貧乏生活しており危険地域に居住しているいる学生や、アフリカ系フランス人と結婚して暮している日本人など) そういった意味で、本件に関する日本で報道されている記事の中で恣意的な特徴がある記事を引用してみます。 記事の裏までよく読めば、本質的・重大な記事ではないことがよくわかりますが、ぱっと見では「フランスで移民が暴動、拡大中」と書いてあるように見えます。 ■「パリ暴動、地方に拡大 移民隔絶、憎悪の悪循環」 2005年11月 6日 (日) 02:52 (産経新聞) http://news.goo.ne.jp/news/sankei/kokusai/20051106/m20051106000.html?fr=rk 「おれたちも暴動にはひどい目に遭わされているが、長い目で見れば、これは(フランス政府への)警告だ」。暴動現場の一つ、パリ郊外のクリシー・ス・ボワで、アフマドと名乗るタクシー運転手はBBCテレビにこう話し、「今回の暴動に対し政府が何もしなければ、次はもっとひどくなるだろう」とも語った。 ※フランスの話題なのになぜかBBCからの丸写しです。 しかも「アフマド」と言っているだけで、勝手にアラブ・アフリカ系の挑戦的な市民の発言として結び付けてます。 今回の件の意見を求めるなら北アフリカ系の若者を連れてこなければなりません。 ■仏暴動:移民若年層、差別に怒り 疎外感が過激化招く (11月7日 毎日新聞) http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20051107k0000m030141000c.html フランスには自国社会に溶け込む意思のある移民は受け入れる気風があり、仏に生まれ育てば国籍取得の権利が生まれる。その結果、現在、フランスは人口約6000万人のうち、イスラム系だけで約500万人の移民を数える「移民大国」となった。だが、イスラム教徒の女子児童・生徒に公立学校でへジャブ(イスラムのスカーフ)着用を禁じるなど、フランスには移民に対して自国社会モデルの受忍を迫る側面がある。 しかし、生計のためにフランスを自主的に選んだ移民1世と違って、移民2世、3世の若者は「生まれ故郷」であるはずのフランスで差別を味わっている。移民が暮らす郊外の団地での失業率は仏全体(約10%)の2倍以上とされ、1人当たりの年収は1万500ユーロ(約147万円)で仏平均よりも40%低い。 「昼はゲーム機で遊び、夕方になったら集合する。火炎瓶を手に機動隊との対決に出かけるんだ」。暴動に参加した若者はそう語る。暴動は先月27日、パリ北郊で、警察の職務質問を受けて変電所に逃げ込んだ移民系少年2人が感電死した事件がきっかけ。日常生活に不満を募らせている移民の若者の間では、自らの不満のはけ口として暴動に加わりやすい環境が生まれている。 ※ジャブを禁じているのではなくて、公立なので政教分離法において「明らかな宗教衣装を禁じている」だけです。 そういう意味では十字架も数珠もハチマキも禁止です(ウチの子の幼稚園の入学内規にもその記述がありサインしました)。 また私の周りにはアフリカ人2-3世の若者もいて、彼らはフランス国民になれるにも関わらず、それをあえて選んでいません。 (フランスに住んでいるアフリカ人全員がフランス人になることを望んでいるわけではないという現状を認識していない) よく読むと、暴動に参加している若者は昼間働かずにゲームをしているわけで、移民だからというのではなくてそもそも働く気がなくて社会を破壊しているということです。 ちなみにウチの世帯も平均年収の30%以下ですが、清く貧しく元気に生きてますよ。 以下はメディアやエンタテイメント、教育に関わる人間としての意見ですが、 昨今の若者の暴行を支えているのは先の大使のBlogにもあるように教育環境、 私は特に、フランスが抱えるティーンエイジャー以上に対する教育システムの問題とテレビの過剰な選択映像、過激なBlogや破壊と殺戮を奨励するビデオゲームの浸透などに代表される若者の教育環境にあると感じています。 (そういう意味では英国都市部のほうが先にこういう問題になるのではないかと思っていましたが…) また炎に見舞われていない地方在住のフランス国民にとってみれば、まるで「外国で起きるかもしれない出来事」がパリや都市部郊外でいきなり起きた、という状態です。 国際性と協調性と高い教養を愛するフランス人にしてみれば、否定とストライキばかり続ける低産労働者や未来を信じられない若者の増加などヨーロッパ憲法否決以後、自由と平等と博愛を同時に成立させるのための克己(自己闘争)が続いているような状態と言ってもよいのではないのでしょうか。 そういう意味では日本もこのような若者の暴動が起きる可能性はあまり否定できたものではないと思います。 またマンガやアニメの輸出に関わる日本の人々は、上記のニュースのように、フランス人の若者の思想に強い影響を与えている現実も少しは考えて欲しいと思います。 (でなければ近いうちに法による規制を受けてしまいます、それこそが良識者にとっての闇の時代です) 多くの良識あるフランス人は破壊や暴力は「最低の行為」であると認識していますし、初等教育から長い年月をかけてそれを説いています。 またそれに反する教育の低い若者が警察や更正施設に送られるのは当然のことですし、 暴力的なゲームやマンガが今まで以上に社会から締め出されるのはありえない話ではないでしょう。 (既に地上波テレビからは日本のリアルで暴力的なアニメが放送されなくなってきています、単にコストが高いからかもしれませんが) (つづきます)