『Pokémon GO』に学ぶ商標問題と、VRを面白くするために「もっと大事なこと」。


★文中、ポケモンGO、PokemonGoなど表記が揺らいでいまが、日本語表記については微妙な状況にあるようですので、本稿ではNiantic公式に従い可能なかぎり『Pokémon GO』と表記します。

ことの発端はこれ。本稿公開時で3,000RT(個人RTレコード更新)。

★ちなみに、最終的な拒絶査定でもないですし、商標ゴロに訴えられているわけでもないですし、今後日本で発売できないわけでもないですよ。RTする前に、このエントリーを中盤まで読んでくださいね。

手っ取り早く、くだんの発言の知財処理上の詳細を理解したい人はこちらの方のエントリーを読んでいただくのが良いと思います。

 

世間は Pokémon GO で大騒ぎです

 

この原稿はとあるWebメディアに向けて執筆していた原稿の成れの果てなのですが、技術だけでなく、社会的インパクトが大きすぎる上に、書いているそばから新しい話が出てきてしまい、もう個人Blogぐらいか書きようがない話になってしまいました。

まず『Pokémon GO』は大ヒットした位置情報ゲーム『Ingress』を作った Googleから独立したAlphabetグループ企業 Niantic Labs社 が開発した最新の位置情報ゲームです。

 

<動画:Ingress – It’s time to Move. (2012/11/15)>

 

IngressがSF風の雰囲気で演出されているのに対し、『Pokémon GO』はポケモンの世界感を大事に、その育ったポケモン世代にアピールしています。

<動画:UK: Pokémon GO – Get Up and Go!>

 

★ゲームの中身についての解説は、まだ日本でリリースしていませんのでまたの機会にいたします!

近日中に日本でもプレイできるようになるそうですので、ゲームのリリースについての情報はこまめにNiantic公式Blogと、公式Twitter、ストアを確認することをお勧めします(Android, iPhone)。

 

なお、本稿では分かりやすさのために、前作である『Ingress』の用語に訳せるところは可能な限りIngress用語で解説しています。Pokémon GO のゲームの詳細について予習したい人は公式のこちらの情報用語集を読むと良いと思います。

株価への影響

▼任天堂株が1年4カ月ぶりの日中上昇率、ポケモンが米首位(Bloomberg・2016年7月8日)

www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-08/O9Z08F6KLVS201

この記事の時点で「前日比11%高の1万6560円まで買われた」、とありますが、この記事の執筆時点(7/16)の10日間でも、オーストラリアやUKはじめとするヨーロッパの各国でリリース直後から話題となり連騰し、初週7月15日の終値で 2万7780円まで上がっています。長く低迷していた頃に任天堂株を最低購入価格である150万円で買った人は、 Pokémon GO リリース後に倍近い額になっている計算です。なお、任天堂は Niantic Labs社に3000万ドル(当時 約36億円)の出資をしていますが。直接の開発元であるNiantic Labs社や株式会社ポケモンは上場公開しておらず直接投資できない点と、ゲームと連携して遊ぶIoTデバイス「Pokémon GO PLUS」を近日中に発売する予定の任天堂株が買われているという情報です。

経済インパクト大、そして社会問題にも…

さて問題は株価だけではありません。その異常なまでのプレイヤーの熱狂ぶりが報道されています。

運転中の Pokémon GO 禁止、警察署やミュージアムでの Pokémon GO での進入禁止などはニュースが多すぎて把握できませんが、特徴的なニュースを引用しておきます。

 

▼アメリカ人、ついにメートル法を学習 「ポケモンGO」のキロメートル表記が分からず検索急上昇BIGLOBEニュース・2016/7/12)
www.excite.co.jp/News/it_g/20160712/Biglobe_7672285195.html

▼「ポケモンGO」公開4日で売上14億円突破、米調査会社データ(フォーブス・2016/07/12)
forbesjapan.com/articles/detail/12822

株価上昇だけでなく売り上げも大変な規模です。「公開4日で14億円」がどれぐらいすごいかというと、Niantic社の前作 Ingressでは「立ち上げから現在までの総売上が110万ドル(約1億1300万円)」(同記事, SuperData社の元記事)ですので、そのインパクトの大きさが売り上げ規模から想像できます。

一方で、同じSuperDataの調査によると、2016年にVR業界全体での売上は29億ドル(約3190億円)という予測。2020年には10倍以上の403億ドルに伸びるとして予測していますので、単純な掛け算・割り算では最初のインパクトが続くなら、VR業界全体の年間売り上げの1/3程度の規模となります。

経済だけではなく社会問題にもなりつつあります。

▼Teen playing new Pokémon game on phone discovers body in Wind River
(19歳が新しい携帯ポケモンゲームをプレイ中に水死体を発見, county10, 2016/7/8)
county10.com/201021174044426240

朝早起きしてポケモン探していたら、白骨死体とかじゃなくてけっこうナマ温かい死体を発見してしまったようです。ただ、このようなプレイヤーが増えることで犯罪抑止力の目にはなるかと思います。

▼Pokemon GO が、米国の夕方の公園の風景を一変させていた(Yahooニュース・松村太郎・2016/7/14)
bylines.news.yahoo.co.jp/taromatsumura/20160714-00059978/

犯罪が多く、お世辞にも治安が良いとは言えない日没のアメリカの公園の景色が、Pokémon GO用語の「トレーナー/Trainers」、Ingressスラングでいう所の「不審者」がたくさんいて、大人も子供も皆何かに夢中になっているような写真が撮影されています。それを裏付けるかのようにこんなニュースも。

▼「ポケモンGO」に便乗? ヒラリー陣営、ストップで集会(日本経済新聞・2016/7/15)
www.nikkei.com/article/DGXLASGN15H1I_V10C16A7000000/

日本では選挙権が18歳まで引き下げられましたが、アメリカではそれを笑うかのように Pokémon GO を選挙運動に取り入れているようです。日経新聞で「ストップ」と言えば株価の「ストップ高」なのかと思いきや「ポケストップ」、Ingressにおける「ポータル」、つまりゲーム上の「いかねばならない重要地点」で集会を開いているそうです。日経新聞の記事をそのまま引用しますが、

“ヒラリー陣営は集会にあわせ、ポケストップにモンスターを一定時間おびき寄せられるアイテムを使用する計画だ。陣営のサイトでは「無料でポケモンを捕まえ、戦わせよう。選挙人登録を行い、ヒラリー・クリントンについてもっとよく知ろう。子どもたち歓迎」として、家族連れの参加を呼びかけている”

候補陣営→エサ撒く→ポケモンやってくる→Pokémon GO ユーザ寄ってくる→話聞いてくれるかも?……それってつまり「ポケモンの力を借りて選挙に勝つ」という新モデルで、もはや「選挙にポケモンを召喚しているような状態」ではないでしょうか。日本の公職選挙法もこれぐらい斬新な方法を想定して整備してほしいものですね。

 

そして悲しい事件も起きています。

 

▼「ポケモンGO」に夢中の少女、車に跳ねられる(BIGLOBEニュース・2016/7/15)

www.excite.co.jp/News/it_g/20160715/Biglobe_3370741731.html

命に別状はなかったのですが、「ラッシュアワーで混雑している交通量の多い4車線の道路を横断」して事故に遭っています。事故後はアプリをアンインストールし他のプレイヤーに対して、「周りをよく見て気を付けて」と語っているそうですが、そのメッセージはアプリ起動時にも表示されています。

特にジム戦が白熱して盛り上がっているようで、動画を探すとポケモンを追いかけて人々が衝突しているような危なげな動画もあります。

以上のようなニュースは憶測やデマのような未確認情報まで含めるとたくさんあり、まさにとんでもない熱狂ぶりです。
Ingress or Pokemon GO

日本ではいつリリースされるのか?

日本ではいつ、Pokemon Go がプレイできるようになるのでしょうか?

待ちきれない人々からは「某巨大企業提携説」、「流行に弱い日本人の気質」、「サーバーの増強」など様々な憶測が飛んできます。

前作 Ingress を長くプレイするエージェント(Ingress用語;プレイヤーのこと)は、より多くの視点と経験を持っています。

まず、Pokémon GO が日本市場投入される時期として、最も早いタイミングとして見られていたのが、2016/7/16以降です。前作 Ingress が、世界中のプレイヤーを巻き込んだ大会を実施しており、その“最終決戦”Aegis Novaの最終ステージが、東京で7月16日に開催される予定でした(公式イベントHP)。Ingressの世界の上でも Aegis Novaで一旦のストーリー展開上の終結を見る、という設計でした。

▼Pokémon GO、Ingressのナイアンティック川島氏に聞く 1万5000人規模のAEGIS-NOVA TOKYO開催直前、Pokémon GOの日本での提供は(ImpressケータイWatch・2016/7/13)

k-tai.watch.impress.co.jp/docs/interview/1010228.html

“川島氏:それらの国の優先順位が高かったというわけではありません。法律的な問題や安全性への配慮、時間が必要なものなどいろいろな要素が影響しており、慎重に選んだものです。重要性で決めたわけではありません。日本でのローンチが遅れているのは、サーバー自体が予想を上回るアクセスで、きちんとしないといけないというところです。発表だけして遊べないと言うのでは困ります。エンジニアは寝る間を惜しんで増強に努めています。近いうちに、日本でも提供いたします”

筆者も実際に取材を兼ねて参加してきましたが、CEOジョン・ハンケによるスピーチではやはり Pokémon GO のリリースに関する新情報はなく、そのタイトル名もあえて伏せてスピーチが行われるほどでした。

<動画:Aegis Nova Tokyo終了後のCEOジョン・ハンケによるスピーチ>

筆者の憶測の範疇を出ませんが、川島氏さんの「法律的な問題」、John Hanke氏の「名前を言えない」という点から日本は商標登録に問題があるのかもしれません。調査してみると「ポケモンゴー」と呼べる商標は任天堂から「商願2015-086693」として出願されており、任天堂株式会社、株式会社クリーチャーズ、株式会社ゲームフリークが権利者として明記されていますが、現状は「存続-出願-審査中」になっています。「Pokémon GO PLUS」(商願2015-087286)も「存続-出願-審査中」ですが、同時期に提出された文字だけの「Pokemon GO PLUS」は2016年5月27日に登録となっています(登録5852656)。どうやら類似商標などを懸念して審査官から拒絶のお知らせが出ているようで、補正手続きも出されていますが、7/16時点で最終的な判断まではたどり着いていないようです。

これはそもそも任天堂の商標出願ですし、一方で商標登録までたどり着いていなくてもサービス開始しているポケモン関連アプリもありますので、なかなか難しい問題ですが、これが日本でリリースできない理由のひとつになっているのかもしれませんね。インタビュー記事やイベントでの発言にも納得がいきますし、実際の係争が起きているわけでないようですが、商標関連は片っ端から出願してくる会社もありますので騒いでもいいことはありません。あくまで公式には「サーバーの増強」として、憶測は憶測として応援しながら見守るしかありませんね。

Q6-PokemonIP<原稿執筆時点での「ポケモン」関連商標検索結果(一部)、(日付左)が出願日(日付右)が登録日>

 

“ポケモン”は商標問題のポケットモンスター

結構身近なところでこんな話も聞こえてきますが、

▼クライアントや上司に「ポケモンGOみたいなゲーム作って」って言われた時に投げつけるまとめtogetter.com/li/999088

そもそも「ポケモン」や「ポケットモンスター」の商標って複雑なんですよね。

ポケモンだから複雑だというか、長年売れたタイトル、かつ自社発ではないIP(知的財産権)だとなおさらです。

▼ポケモンを例に出して世界一簡単に商標登録とは何かを説明するぞぉ(2016-04-18)

Pokémon GOはARではない…?

一方で、海の向こうのポケモントレーナーから「ARゲームじゃない、IPの力で成功した位置情報ゲームだ」なんて意見も出てきます。

冒頭に引用した米調査会社SuperData社も「Pokémon GO ARではない」と明言しているのも興味深いです。

我々はIP取得を忘れていないか?

たしかにIngressや Pokémon GO を支えるテクノロジーとして重要な技術は、「スマホでのAR」というよりも「大規模・多人数・同時の位置情報ゲーム」という点です。しかし「ポケモン」という長年任天堂他が培ってきたIPも上記の通り「なんとか守ってきたIP」という説明の方が正しいと思います。

任天堂のポケモン関連の商標をみると、本当にギリギリまでがんばって、登録の見通しが立った瞬間に出願をしていることが感じられます。日本の特許や商標は公開制ですので、新しい出願があったときには皆さんに異議申し立てができるように公告されます。興味がある人は特許庁の検索(無料)やTwitterの商標速報bot(@trademark_bot)などを追いかけてみると良いでしょう。

でも、任天堂がギリギリまで商標出願しない理由のひとつは、他でもないゲームファンの人々が商標出願情報から新ポケモン名を書き立てたり、商標ゴロに連想できるような類似特許を取られないため、でもありますよね。

みなさん新しいVR作品を取得する時に、IP取得していますか?

IPといってもよくいうキャラクターのことではありません、もちろんインターネットプロトコルのアドレスでもありません。Intellectual property、具体的には特許出願と商標出願をしていますか?

私は企業との共同研究や商業案件の場合は必ず特許か商標を出願しています。

単独個人のお金で出願することもありますし、共同研究先と共同出願することもあります。大学から業務特許で出願して大学の保有になっているものも多いです。

出願したものが全て権利化されるわけではありませんし、むしろ特許の場合は物言いがついて頭を悩まされることの方が多いです。

しかし他者に真似された時も悔しいですし、訴えられるのも困ります。

でも、最も辛いのは「将来自分が特許や商標を出願した時に、自分の作品のおかげでIPが成立しない」という時ではないでしょうか(まあ味わってみないとわからないでしょうけどね…)。

この先、VRやARで一山当てよう、とおもっているあなた。

作り手なら、まずはIPについて学びましょう。Pokemon GOの問題は、学ぶよい機会ではないでしょうか。

 

IngressとPokemon GOの本質を見抜け

ところで、現在のゲーム業界はインベーダーのコピー基盤の販売で拡大したという歴史を覚えている人はおりますでしょうか?

PlayStationのDUALSHOCK2に実装されていたバイブレーターの制御技術が、PlayStation2を一時発売停止に追い込み、特許問題になったことを覚えていますか?
(なお、この技術は白井の修士時代の研究に大変関係があるものです…)

今、IngressとPokemon Goの人気の本質にあるものはなんでしょうか?

ポケモン人気?位置情報ゲーム?それらの本質を見抜いておかなければ(一時は劣化コピーで儲かる瞬間もありますが)、ものづくりの原動力が見抜けていないということです。継続的にはその後の訴訟やサポートで大変な痛い目を喰らうかもしれません。

私はこう考えます。

多くの社会的影響も含めて、設計上、強く人々を惹きつけているのはGPSを用いたスマートフォンゲームであること、特にその中でも「マルチプレイヤーARであること」が最も重要ではないでしょうか。

Google MapsやGoogleが支えるサーバー技術は確かに強大なのですが、AWSやPhoton、そしてGoogleのサーバーサービスなど、本質的にはお金を出せば買えるものなのです。そもそもNiantic Labs自体、(2014年のGDCにて)Ingress APIをUnityプラットフォームに提供する準備がされており、Pokemon GO自体もこの環境において開発されているようです。

スマホARは今後、Pokemon GOを軸に大きく転換期を迎えるものと感じています。

VRエンタテイメントでは今後、実体体験型VRとマルチプレイヤー型のモバイルARにすみわけが進んでいくのではないでしょうか、その中で、既存IPとの連携、VRにおけるStory(ナラティブ)など考えることは多いのですが、それもやはり、人々が飽きればそれで終わってしまう可能性がある演出要素でしかないのではないでしょうか。驚異的な存在であることは間違いないです。

VR/ARエンタテイメントでみんなが忘れていること

このように強大な存在ではあるのですが、実は、Nianticの人々はPokemon GOを作ったのは、他でもない、Ingressのエージェントたちだ、と明言しています。これはリップサービスでしょうか?たしかにお世辞なのかもしれませんが、この22歳の青年のスピーチを聞いて何を感じますか?

Pokemon Goが出たとしても、インストールしたとしても、Ingressが生んだものは強大です。

技術やIPは大事なのですが、コミュニティを醸成していく技術は超大事です。

そして、私は「Nianticの杜撰さ」は褒められることではないけれど、その先進性と「未完成さ」は評価できると思います。

日本でのリリースはいつになるかはわかりませんが、世界各国で Pokemon GO が始まってから起きたことは、Ingressと人々を研究する側としては「想定されていること」でした。

 

相模Ingress部で学んだこと

ちょっとした余談になってしまいますが、筆者は相模原市立博物館と協働で、位置情報ゲームをつかった相模原市全体のフィールドミュージアム化についての共同研究を行っており、2013年からARやGISを使ったゲームによる人々の理解や行動がどのように変化するかについて調査しています。

その中でも、ゲームをゲームの中だけで終わらせるのではなく、積極的に経済活動につなげたり、プレイヤーへの啓蒙活動や、文化・知的探求活動につなげていくための手法や知見、データをまとめています。

▼相模Ingress部

ingress.sagamiharacitymuseum.jp

▼フィールドミュージアム構築における代替現実ゲーム「Ingress」の活用 (SliderShare)

▼代替現実ゲーム「Ingress」で魅力的なまちづくり ―プレーヤーも、観光客も、地域住民も喜ぶためには(観光政策フォーラム・2015/4/1)

・Part1 ゲームが観光客を連れてくる!?
  www.kankou-seisaku.jp/ksk/jsp/kankous/st?n=87&d=1

・Part2 ゲームを使ってフィールドミュージアムをつくる―市立博物館との市民協働プロジェクト―
 www.kankou-seisaku.jp/ksk/jsp/kankous/cr?n=87&d=19

・Part3 Ingressで見える、魅力的なまちとは
 www.kankou-seisaku.jp/ksk/jsp/kankous/cr?n=87&d=20

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<筆者主催のイベントでの相模原市渕野辺駅前の商店街の様子・Ingressエージェントと地元商店街の融合が見える>

 

今となっては、この規模のIngressイベントは珍しくなくなってしまいましたが、Ingress公式のXF(cross faction, 両陣営合同)イベントが発表される前から、JAXAや はやぶさ 、博物館と絡ませた初詣やら、豆まきやらを企画し、Ingressをハックして楽しんでいたのです。

クラシックなITやサービスの考え方では「ペルソナ」つまりユーザはたいてい一人として設計されています。しかしミュージアムやMMMMORPGのプレイヤーはひとりではないのです。

 

<上記SlideShareから:ミュージアム来館者は単体ではないため、複合ペルソナを考える必要がある>

Ingressガチ勢問題

一方、位置情報ゲームをあまりプレイしない人々からは、特に「Ingressは”ガチ勢”が多い」と言われ敬遠されます。

確かに、装備や行動、発言やリーダーシップにおいては「普通じゃないな」とか「XMでアタマやられているな」(訳注:XM=エキゾチックマター, Ingress世界でそこらじゅうに拡散している謎のエネルギー)という人もたくさんいらっしゃいます。

しかし、Ingressのプレイヤー全てがガチ勢というわけではなく、ゆるふわ勢も、コスプレしながら楽しむ人も、妊婦さんもいます。

Ingressというゲームの設計や戦略上、そのような行動を取る人、またうつ病や肥満、運動不足の解消を目的としてゲームを開始した人も多く、ちょっと変わった人も多いです。

ネットではガチ勢の人たちばかりが目立ちますし、ハングアウト(訳注:Google Hangouts、Ingressのエージェントが情報交流に使っていることが多い)ではものすごく高圧的な人物が、会ってみると以外と温和な人だったりして、なかなか見極めるのは難しいのですけれども。

一方で、ガチ勢の中でもこのゲームを愛する人々、ボランティア精神がある人はただゲームをプレイするのではありません。運営と連携し、陣営や自分が所有するポータルや実績を一旦忘れ、寄り添ってコミュニティ醸成活動に参加します。そうしないと、位置情報ゲームは固着しはじめると「これは俺の所有物」と考える人も多くなり、それによる力の誇示や争いが生まれ、初心者が入りづらくなり、活動範囲も狭くなり、カルト・セクト化してしまいます。これはイングレスのようなMMMMO(Map-based Mobile MMORPG,マップベースモバイ大規模多人数オンラインゲーム)だけではなく、一般のMMOでも同じ傾向があります。

クリエイティビティを発揮できるゲーム

一般のMMOと同じ要素がある一方で、Ingressの「遊び」のもう一つの重要な要素、それは「自由」です。

カイヨワをベースにした[遊びの成立]の現代語訳。遊びは「遊ぶために遊ぶ自己目的性の行為」であり、「隔離された活動」,「非生産的活動」,「虚構の活動」, 「規則のある活動」,「未確定の活動」そして最も重要なのは「自由な活動」 であること。 自由はいつでもやめられること。日常と非連続、現実世界に富を生まない、現実とは区別がつく (写実でもよい) 、遊びの世界を支配するルールがある、先が読めない、選択の自由がある、「遊び」の成立。これら全ての特徴がそろっているときに純粋な「遊び」が成立し、「遊戯状態」にあると定義できる。

上図はカイヨワをベースにした[遊びの成立]の現代語訳。遊びは「遊ぶために遊ぶ自己目的性の行為」であり、「隔離された活動」,「非生産的活動」,「虚構の活動」, 「規則のある活動」,「未確定の活動」そして最も重要なのは「自由な活動」 であること。

自由はいつでもやめられること。日常と非連続、現実世界に富を生まない、現実とは区別がつく (写実でもよい) 、遊びの世界を支配するルールがある、先が読めない、選択の自由がある、「遊び」の成立。これら全ての特徴がそろっているときに純粋な「遊び」が成立し、「遊戯状態」にあると定義できる。

「行動の自由」や「やめる自由」もさることながら、現代ではプレイスタイルや表現、つまりファッション性や同人制作など「個々のユーザのクリエイティビティを発揮できる自由」も重要な要素です。

<写真上:様々なファッションで参加する>

<写真下:同人制作の数々>

動的ペルソナ:「白井博士の未来のゲームデザイン」より
動的ペルソナ:「白井博士の未来のゲームデザイン」より

これは「白井博士の未来のゲームデザイン」において予言していた「動的ペルソナ」が確実に進んでいるということで、Pokemon GO登場以降、2016年以降はこの図の動的ペルソナに「Pokemon GOをプレイする女子」を想定してエンタテイメントシステムを設計していかねばならないということです。

 

みんな新しい体験が欲しい

どうしてあたらしいゲームを始めるのか

筆者の調査によると、日本人が初めてゲームを開始する年齢が「4歳」で、その理由は「プレイしたいゲームがあったから」ではなく「友人や周囲の話題についていきたい」というモチベーションが切っ掛けになっています(幼稚園におけるヒアリング、大学生に対するアンケート中心の調査による。本当は大規模調査したいので誰か一緒にやりましょう)。つまり「ゲームを開始する理由はそもそもソーシャル」ということです。

また新しいゲームを開始する時、特にプレイしたことがない「新しいジャンルのゲームを開始すること」は人々によって難しく、ちょっとした挑戦になります。自分の意思ではダウンロードしないアプリをダウンロードする時は、仲の良い、信頼できる他人から誘われる時が最も有効に働きます。新しいSNSツールなどがまさにその典型で、自分が信頼しているリアル友達に誘われない限り、もしくは強い強制力がある、センスいい、出し抜かれたくない、話題についていく必要がある、といった理由がない限りは新しい価値観のゲームをプレイしたりアプリをインストールする事は、なかなか期待できないのではないでしょうか。

Pokemon GOを始める理由

その中で、Pokemon GO が持つ魅力、「Pokemon GOを開始する理由」だけでも列挙してみるとこれだけの要素があります。

・ポケモン世代

・既存スマホゲームに飽きた

・Ingressエージェント

・運動不足解消したい

・なんだか米国で話題なので

・(非ポケモン世代)子供がインストールしろというので

・(非ゲームプレイヤー)株価への影響がすごいので知っておきたい

多くのPokemon GOプレイヤーや、未リリースの日本市場が気づいていない点も指摘しておきます。

ほとんどのスマホユーザーが「友達が欲しい」と思ってゲームをダウンロードしたりはしません。

しかし Ingressは大会に出ると、ほぼ高確率で新しい友達が増えます。

 

Ingressは愛されているのです。
(時には愛憎余ってたいへんなことになりますが)

そんなこともあって、Niantic LabsはIngressエージェントを中心に、Pokemon GO の日本でのベータテストを事前に行っています。体験したIngressガチ勢は「Pokemon GO は Pokemon GO、IngressはIngressで面白い」と言っています。やっぱりIngressは愛されているのです。一目惚れがそのまま続いている感じです。

専用ハードウェアこそが頑張る場所

上記の通り、”ガチ勢”は簡単に乗り換えをするのではなく、今後、IngressとPokemon GOなどそれぞれの位置情報ゲームにあわせてスマホ2台持ちといった方法に流れていくのではないかと予測します。その中で、Pokemon GO プレイヤー専用のIoTガジェットである『Pokemon GO Plus』や任天堂が売り出すかもしれない関連商品や専用ハードウェアのような展開は、さらに新しい文化や商機を生み出すと見ています。

日本製品が世界で成功するなんて話は、本当に最近聞かなくなってきているなか、
任天堂は頑張って商品展開を進めてほしい!と思います。

 

もちろんNiantic Labsも動いています。他社の参入チャンスも大いにあると思います。

▼ポケモンGO、ARデバイスへの対応等、今後の新機能に期待(MoguraVR・2016/7/14)

www.moguravr.com/pokemon-go-ar-vr/

ポケモンGOを近々リリースされる可能がある新型Google Glassや、Microsoft HoloLensなどのウェアラブルARデバイスで体験可能にすることも検討中だとハンケ氏は語っています。

(関連記事)ポケモンGOがVRに対応の可能性 ライセンスが示唆か

みなさん知らない人も多いので、Niantic Labs社のCEOである、John HankeがGoogle Mapsを作るさらにはるか前に、何を作っていたか、紹介しておきます。

Windows95の時代にMMORPGを作っていた人物が「自分の子供を外に連れ出すゲーム」を作ったのがIngressです。時代を先取りしすぎです、しかも「Meridian 59」は、権利問題を解決して、いまでもプレイ可能な状態でネットに存在しています。

John Hankeの挑戦はまだまだ続くのではないでしょうか。

そして、この先進性を一緒に楽しんで、未来に進めていかければなりません。

 

IngressやPokemon GOはコンテンツなのか?

筆者が今回、Aegis Nova Tokyoで見たかったのは、Ingressの人気や人々の行動・理解がどのように変化していくのか?といった点です。課金アイテムの売れ行きとかアフターパーティーの人の集まり方とか。そもそもIngressは終了するのか、Pokemon GOは始まるのか。

そういった「IngressやPokemon GOはコンテンツなのか?」といった疑問に、Aegis Nova Tokyo終了後の私は明確にNo、だと言えます。

Ingressは世界システムです。エンタテイメントシステムです。
Pokemon GOも次なる可能性やポテンシャルを秘めています。

それは一過性の人気ではなく、人類の歴史に大きな第一歩を与えるアクションであると感じます。

 

どう控えめに見積もっても、
長年続いたJRの「ポケモンスタンプラリー」は来年夏には終了していると思います。残念ですが。

夢の世界がどこにあるのか?

ARで想像を補うのか、VRに自分を浸すのか。

ARは宇宙のリアリティです。VRは地球のリアリティです。

どっちがいいか?そんな宗教戦争は無意味だと思います。

 

夢の世界を地上に持ってくる技術は、たくさんあっていいとおもいます。

Pokémon Go の日本リリース、いろんな問題が片付かなくて、いつまでたってもラウンチしないけど、おかげで新しいARゲームやビジネスのアイディアはどんどん出てきます。

GoogleGlass今売れよ!的な。 

ちなみに、現在公開されている Pokemon GO はトレイラーで描いていた機能のほんの一部でしかない、今後もどんどん機能追加されていくはずです。負けていられません!!

 

まとめ

まったくどうにも信じられないぐらい長いエントリーになってしまいましたが、最後まで読んでくれてありがとうございました。

『Pokémon GO』に学ぶ商標問題と、VRを面白くするために「もっと大事なこと」。

・”ポケモン”は商標問題のポケットモンスター。

・VRコンテンツ作ってる人は、特許でも商標でもいい、IPとっとけ、いますぐとっとけ。

・プレイヤーも作り手であることは楽しい

・プレイヤーは複合ペルソナ、ひとりじゃつまらない。

・プレイヤーは動的ペルソナ、Pokemon GO以降を設計せねば。

・ライブ感、みんな集まるMMMOを維持する技術

・みんなに愛される必要性

・ハードウェアこそがんばれ

 

以上、テクノロジーの話ではない話ばかりで、何も前に進んだ感じがしない話になってしまいましたが、なんでこんな長い話を書いたのか、というと、私も「ひとりじゃつまらない!」のです。

ARやVRのエンタテイメントシステムのその未来を、これからもバシバシ解説していきたいと思います。

世界のエージェントやトレーナーたちと一緒に、今日も、歩きます!

 

 

 

追記

おとなり韓国も…

そういや日本のGoogle Mapsの地図著作権もいろいろ問題あるわけですが、これは Ingress で解決済み。
こうやってNianticがいろいろ風穴あけてくれているという理解もできる。