IVR展2015に行ってきた/日産とコマツの特別講演拝聴録

主に3年生を連れて、3D&VR展にいってきました。
展示がお目当てではあったのですが、設計製造ソリューション展の特別講演も興味深かったので拝聴してきました。
6月25日[木] 10:00~11:30

【D-S】特別講演 ~CIOが語る“ものづくりIT戦略”~

日産自動車のIS/IT部門が目指す“Digital Strategy”

日産自動車(株)
アライアンス グローバルVP 常務執行役員 CIO グローバルコーポレート IS/IT担当
行徳 セルソ

コマツのものづくりとIT部門改革~ピンチをチャンスに変える~

コマツ 執行役員 情報戦略本部長
山根 宏輔

まずは日産 IS/IT部門のお話。

★は筆者注。「IS/IT部門」とは、日本の企業における「情報システム部門」と訳せばよいと思います。日本だと「情報通信システム本部」や単に「IT部門」などと呼ばれています。生産管理などを中心としたIT部門のお話で、Information System(or Service or Solution) / Information Technology の略でしょうか。日産用語なのかも?

行徳セルソ 執行役員
イメージビデオ
Overview
Global Cooporate IS/IT
Digital Strategy
2014年度 11兆円 営業利益も順調
2011-13年度の営業利益が少ないのは、インドブラジルなどのエマージングマーケットの投資が負担がかかった。
日産を支えている2つのマーケットは中国とアメリカ。
アルゼンチン、ブラジルなどラテンアメリカが苦戦。
NISSAN POWER 88 プロジェクト ブランド(シェア)8%,セールスパワー8% 品質を落とさずに
ゼロエミッション=排出物ゼロの電気自動車でリーダーシップ
コストを拡大して、それを縮小させていくか
ビジネスの拡大、新しいプロダクションライン、販社、など必要なプラン、プロセスとIT。
特に日産においてはプロセスとITは同じのものとして扱っている。
日産ルノーに加えて、ダイムラーとの提携、部品の共通化。
(このような仕組みの展開が)コアコンピテンス=核となる強みと考えている。
主な滋養活動
・ゼロエミッションにおけるリーダーシップ
 EVにおける技術
・テクノロジー リーダーシップ
 Google Carに対して、NASAとの提携。5年間のパートナーシップ。NASAのテストは数キロ、日産は数万キロ。NASAの持っている技術と日産の持っているテスト技術の交流。
・RENAULT NISSAN
 アライアンス(提携)のシナジー効果の加速
 もうワンステップすすめて、研究開発、購買、生産物流、人事において統合。
 CMF(Common Module Family)
 ルノー x 日産 x ダイムラーの提携により、年間43億ユーロのシナジー効果を捻出していく
・東京証券取引所から「攻めのIT経営銘柄」に選定
・Alliance IS/IT組織
 両方の会社(ルノーニッサン)に権限を持っている、ゴーンと行徳、日産とルノーにそれぞれ副社長。
 ・5つの組織
 ・1500人規模のセンター
 ・シリコンバレー
・Global IS/IT組織
 1300人、13万ユーザー
 グローバルISとITを統合するためのマトリクス(2次元表)体制になっている
・BESTプログラム、2011年からVITESSEプログラム
 2005年よりワールドクラスIS/ITを目指し、BESTを実行。
 ベンチマークを行って、2005年の段階ではワールドクラスのITを持っていないという判断、これによりBESTプログラムを実施。
 プログラムの標準化、どうやって各リージョンで展開するか、コストマネジメント。2300億円以上のリターンがあった。
 2004年まではアウトソーシング、シングルベンダーの状況だった。この契約が2004年まで。BESTではこれをどうやって自社の運用管理に持っていけるか。
 アプリケーションのポートフォリオを使ったり、アセットの洗い出しをした。400以上のアウトソースの切り出し。取捨選択。10%の運用コスト削減。
 2010年で80%の購買を標準内のソーシングで達成。IS/ITの3割削減。
・VITESSEプログラム
 Power88と同時期に開始。
 Value Innovation, Technology Simpification, Service Excellence
 Value Innovation:
  One PLM。PLMを他社、サプライヤーと供給できるか
  Business Expansion、Product Costing / Model Productivity、Overall Opinion Improvement、デジタルデザイン、顧客マネジメント、
  Revenue Management(いままでのように安く作ればいいのではなく、安くてよいものを作って、顧客のとってもよいことをしなければならない)、
  Enhancing Quality(統合品質管理システム、車両、顧客、品質インシデント)、
  Support Fuction Global Standarization(End-to-endで業務プロセスとデータフローを再定義して自動的にKPIを取得・可視化、クラウドベースのオンライン教育)
 Technology Simpification:
  アプリケーションの数を減らす、インタフェースも減る。インフラは共通プラットフォームになっていく。
 Service Excellence:

開発スピードをどんどん短くする。全体のIS/ITの内部のプロセスも見直していく。

 ROI(投資に対しての効果) 87%→93%
 新たなビジネスチャンスを創出
  コネクトサービス、テレマティクス(車両、売り上げに貢献するプロセスに対するデジタルプラットフォーム)、そのためのデータサイエンティストの育成を進めている。
   例:LEAFのプローブデータを活用した電費向上策、故障早期見地(お客さんが気づく前に探す仕組み)
   ビデオ:シリコンバレーで行っている研究開発についての紹介。ビッグデータと機械学習によるテレマティクスと学習、事前予測技術について。ドライバーの視線分析なども。
    LEAFのドライバーの運転の仕方で、同じドライバーなのか違うドライバーなのかを分類。”PoC”については今後も共有していきたい。
    SaaSとビッグデータとサービス、APIを提供して、開発者に提供しようとしている。これによって顧客に付加価値を提供することができる。
IS/ITに求めているSSS
カルロス・ゴーンはSpeed, Standardization, Simplification スピードと標準化と簡単にすること
Communication
すばらしいシステムであっても、ユーザー、販社、顧客、外部の人に伝わっていなければ意味がない。コミュニケーションに力を入れている。Annual Report発行など。
★予想以上にすばらしい内容だった。LEAF買いたくなった。
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コマツ 情報戦略本部長 山根宏輔
ご経歴:1981年コマツ入社、経理課配属。専門分野は経理・財務。1993年 米国亜プライドマテリアルとのJVに参加し、経理課長を経験。現在、情報システム部門長で8年目。
コマツはどんな会社
 2014年度 売上高 2兆円弱(建設機械89%、産業機械11%)海外売上高 8割、海外従業員比率 6割
 パワーショベルはバケツサイズで5250倍異なる製品、ホイルローダーはサイズの違いだけで125倍もある。乗用車と比べると、スケールの異なる製品がたくさんある。
グローバル本社としての役割見直し
・ビジネスとITは表裏一体
 一番よくわかったのは311の大震災のとき。システムが止まったらすべてとまった。表側はビジネスでいい、裏はIT。
・一歩前へ、外へ(One Step ahead & Step into the field)
 つまり現場主義。デスクにいるITの人材は多いが、生産や販売の現場に出て行け!というか。最も若手が海外出張している部門。現地で外国人と一緒に仕事してもらうのが一番。
 本社側人材のレベルアップ
 ・豊富な業務知識、

本社のIT部門として、絶対持っておくべきノウハウは、コマツという会社に入ってきて、コマツのものづくりと現場の知識。

 ・クリアな方針策定と展開力
 ・グローバルでの意思疎通力(英語力)
  本社のIT部門が世界を足しげくラウンドチケットで回ることで、(南米など辺境部門でも)御用聞き、話ができるようになってくる。
・IT部門のミッションは「PLM」
情報戦略本部 国内拠点
 溜池山王にあった本社から、IT部門を北陸、小山、大阪の現場に配置。本社の経理部門を事業部門を本社に集めた。経理時代の失敗経験として、原価計算をやっている部門を本社に持ってくると駄目。物を知らない、もの作りの価格を部門を本社に持ってくると大失敗。
・IT部門が自ら会社をリード:キーワードはPLM
 PLM: Product Life-cycle Management、ではなく Propose, Link, Monitor の略
 情報戦略本部がLink, Monitor, Propose。業務部門には積極提言、調達管理強化、国内には直接統制レベルを上げて統合、緩やかな統合連邦制維持。
・2009年リーマンショック後の重点活動
 IT機能の集約と最適化
 (1) IT資産の集約:部分最適でやっていたら絶対コストは下がらない。まず集めないとアプリケーションのカットもできない。他者もやっていると思うが、予算の権限がなければ強力なガバナンスを発揮できない。(経理畑出身ということがあってか)集めたい、というお願いをしたらうまく通った。費用の配布をやると中間に落ちてしまう。全体で下げていこうという意識はまったく働かない。
 (2) IT調達の集中化:VMO (Vendor Management Office)を設置し、IT関連機能を一本化。同じベンダーにオーダーかけても値段をチェックできないという体制だった。これを一本化。価格をたたくのが目的ではなく、リーズナブルな調達、契約、ひとつの開発業者については同じ契約。最初の年は大きな金額効果が出た。その後は契約、コンディションの一本化の効果のほうが大きかった。新たな技術を入れていくときにも完全にリンクしていく仕組み。
 (3) システムの最適化:投資の規模-変化の大きさをマトリクスで比べてみる。基幹システム(効率化ツール)を縮小させ、戦略的ツールへ。CADは中央。
  アプリケーションの統廃合:1970年代からIT化をすすめているが、問題はさまざまな環境があって非常に複雑。過去のメインフレームなどはPaaSでクラウド化完了。コスト的効果は大きかった。
・海外生産システムの標準化
 BAANの導入。ソースコードを買ってカスタマイズしていたので、開発環境と変わらず。
 ERPを使って標準化を進めている。一本化するとよいのはマザー工場制をとっているので、日本のマザー工場から教えに行くときに、ツールが同じであるとやりやすい。ある建設機械を別の工場に移す、クロスソーシングにおいてもやりやすい。CADの展開も標準化されているので、生産立ち上げ期間の短縮、垂直展開に役立っている。
・プリンター集約
 もともと13種の複合機、プリンターだった。これを1社に統合。若手チームで推進した。偉い人に自分の部屋にプリンターをおきたい、という要望を、ワンフロアに2台程度、IDをかざさないと印刷されない、とり忘れも無駄な出力もない。最初は抵抗があったがあとで無駄な紙がないと評価された。コストは3割減。
・グループのICT能力向上 全社教育
 ブラックボックス化したところを業務システム基礎トレーニング。ものづくりを知らない世代を全3日で、外部講師による世の中一般のものづくり(看板方式など)とベテラン社員によるものづくりのシステム研修。ギャップを理解させることが重要。
・ICT業務改革ステアリングコミッティ
 トップの判断をどう行っていくか。
 社長、CFO、各事業の本部長を入れて、ICTでやりたいことをプレゼンする、ここに若手をアサインする。若手社員が社長の前でプレゼンする機会はないが、フラットな関係を保つ上で重要。東大の藤本先生とものと情報の流れ図を展開している例、社長が昔のものづくりを思い起こしたりする。若手が会社の中の動きを一生懸命調査するのでとてもよい効果がある。
・ピンチをチャンスに変える
 システム部門の意識改革:リーマンショックは大きかった、システム部門の意識改革は重要だった。PLM (Prppose, Link, Monitor)。
 業務改革をみずからリード:自身を持ってやりきる。
 システム部門の存在感アップ:社員のモチベーションアップ
コマツの最大級電気駆動式ダンプトラック930E、小松市「こまつの杜」にいくと見れますよ
【感想】
 地味な話が多かったが自分が某C社の福島工場でICT部門の若手社員だったので懐かしく聞いている。情報系が当時から軽視されていたのだけど、実際に経営の力になるまで20年かかっているのだなあ。
 全体の感想として、ちなみにVRに絡んだ話題は両社ともほとんどなかったのだけど、コマツに関してはとある企業に大型案件発注というニュースを聞きつけてきたよ(英語とかフランス語で)。日産もコマツも、まずは基本として、間接部門であるICT部門が、ものづくりと業務の中核にいるのであるという自覚を持って、コーポレートガバナンスの本丸で、現場意識を持って活躍していくというのが大事であるね。ベンダーさんもやることが変わってくる。また逆にデジタルコンテンツ系の会社のほうが、(面白いものを作っているだけに)この手のITガバナンスが弱い感じもする(ガチガチのセキュリティの向こうなので、あまり見えてこない。CEDECでも間接部門の話はあまり出てこないし)。
 日産LEAFのシリコンバレーでの研究の取り組みは恐ろしい側面もある。LEAFのユーザは個人情報の利用について同意しているのだろうか?でも将来的にはそれをプラットフォームにしてAPI化して、アプリケーション開発者に提供して、最終的にはユーザの利益につなげようという姿勢は応援したい。日本のものづくりの会社にはそういう発想が著しく足らない。ITはIT部門のためにあるのではなく、社内のユーザ部門のためだけにあるのでもなく、取引先や協力会社、顧客のためだけにあるのでもなく、ものづくりを未来に引っ張っていく要素そのものなのだという認識が必要。そうでないと隣のIVR展の世界になかなか行かない。まあ既存のベンダーコストが高すぎるという背景もあるのかもしれないが、連続的に革新させていく仕組みが絶対に必要。そういう意味ではコマツの若い人をこの革新に突っ込ませていく姿勢は大変評価できる。
 実は自分のことを振りかえると、某C社時代、私が所属していた福島工場(プリンタの主幹)は、全C社内でもモデルとなるようなイノベーション発信基地だった。工場長向けの若手のプレゼンや技能コンテストは、さながら演舞会で、若手社員が本気で変えようとがんばっていたね。あの時代、あの会社に足りなかったのは(1)他社のものづくりを「あたりまえ、どこでもやっている」と見做さず学ぶ体制、(2)自社の生産管理パッケージを他社や協力会社に提供できるような体制、第三者視点、(3)海外生産拠点に人を送り込む上でのキャリア形成のルール(人は同じスピードでは育たない)、(4)若手奉公(本質的な改善を見抜けても、権限がなく先輩社員につぶされる)、(5)アウトソーシングしすぎ。(6)本社強すぎ、(7)世間的なテクノロジーより一歩遅くてよいと思っている…といったところではないかしら。まあ普通のメーカーのITってそんなもんなんだろうけどね。今はもうちょっといいんだろうか?
展示についてのレビューを書く暇がないので、Twitterから紹介します。

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