「永遠に捨てない服が着たい」を読書感想文にする前に。

今関信子 (著) 「永遠に捨てない服が着たい」

第59回青少年読書感想文全国コンクール高学年の 「課題図書」 。
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【大人の感想】
「あとがきで感想を書く」チートの対策がされており、「ちょっと長いあとがき」というタイトルで、311について、子供たちが理解できる解説になっている。しかし内容が散漫で、見た目の感想文の書きやすさの一方、本質的な難度は高い本であると思う。
まず論説ではないので、科学的な視点を持った論理構築とドラマツルギーが弱すぎる。
『~に感動しました』、『共感しました』という書き方は期待できない。
しかも「科学的な論理構築」が希薄なのは、『なぜこの本が課題図書なんだろう?』という自問をし続けることになる。
児童書特有の読みやすさの影に、先生受けの良さそうな固定の方向性があり、子供から公平でバランス感覚をもった視点を奪い取る傾向がある。右上がりグラフの使い方など。「地球の温度は右肩上がり」と思わせる手法は、一言で言えば左翼的。
そもそも、この話のストーリーに科学的な物証はあっても、科学も化学も出てはこない。
ドッジボールでCO2削減量をたとえても、タヌキの皮算用である。
純粋な子供たちは一瞬は騙されるが、いざ感想文を書こうとすると、話の中身のなさに頓挫する。

しかし、著者ではなく、話の中心人物である岡部さんには共感ができる。
自分も大学時代、暗室で大量のゴミを作っては捨て作っては捨てしていた記憶がある。
岡部さんの師匠は正しい指導をしている。ここで突き放されることに意味はある。
この本の中心である「永遠に捨てない体操服」とは帝人ファイバーのポリエステルリサイクル活動「エコサークル」があってこその活動である。リンク先を見ていただいてもわかるのであるが、岡部さんが子供たちに見せて、書籍のタイトルにもなっているパタゴニア社のペットボトルリサイクルフリース自体も、帝人のリサイクル技術にパタゴニアが2005年に参加して成立しているという事実関係がある。

本書を3回読んで、しかも1回作文を書いたにもかかわらず中身のなさに7時間苦悶した息子に、
『どんな感想文を書くか、以下の3つの路線から選んでごらん』と問うてみた。

1. リサイクル衣料の活動を中心に
2. (本人が面白かったという)ピンホールカメラについて
3. なぜ活動が成功したのか、どうやって?

実際のところ、1,2,3とも、数ページ分ぐらいしか内容がなく、「なぜ」、「どうして」、「どうやって」というトリガーになった部分がたいへん曖昧に書かれているので、路線が決まっても、やはり難航した。

そもそも科学的にも技術的にもトピックがなく、保守的な先生方に対して、特に理由なく否定的な社会が
「描写されているわけではないが、常に付きまとうテーマ」なのだから仕方がない。
いや、作者の今関さんは、この「反骨精神ならではの逆転の発想」をちゃんと色濃く描写するべきだったのだろう。

さて、以下、息子が、口述筆記をベースに作文体にしたものである。
レギュレーションにより3ページ・1200文字に収めるため、本人も相当苦労をした様子。

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「僕の小学校に太陽電池がない理由は?」

この本『永遠に捨てない服が着たい』は今関信子さんによる本当のお話です。このお話の中心人物は、京都に住むカメラマンの岡部達平さんです。カメラマンであると同時に、牛乳パックの再利用や、環境移動教室などでゴミや自然について考える人です。岡部さんは京都市立清水小学校で半年間、五・六年生に環境学習を教える先生になりました。僕はまず「普通のカメラマンが、先生を、しかも環境の先生をするなんて」とおどろきました。
岡部さんのお話は、大学生の頃、写真の修業をしていた時のふとした気づきからはじまります。当時はデジタルカメラではなかったので『カメラマンという仕事はぎょうさんフィルムなどのゴミを出さんと成れへんものやろか』と気づき、その時から「ゴミのことも考えるカメラマン」になったそうです。ピンホールカメラを、捨てられた材木で組み立てて、レンズにあたる穴はジュースの缶を使って、シャッターの調節はフィルムの空き箱を使って作りました。僕はピンホールカメラの仕組みはわかるけれど、同じものを作ることはできない、世界に一つだけの環境にも役立つカメラだと思いました。
この本のタイトル「永遠に捨てない体操服」のお話は、いきなり実行されたわけではありませんでした。岡部さんは小学校での半年間の授業が終わった時、子供たちに廊下で、ペットボトルを再生した服について「私も永遠に捨てない服が着たい」と言われて悩みます。子供たちが参加しなくても成り立つリサイクルなら例がある、でも子供が主役のリサイクルはまだありません。リサイクル衣料にするために、飾りが無く、ほとんどがポリエステルでできている、子供達が使うもの、それは学校の体操服でした。しかし、協力してくれる学校は、なかなかありませんでした。
そんなころ、岡部さんはこのカメラで、間違えて太陽を撮ってしまいました。素晴らしく力のある太陽の写真でした。太陽をピンホールカメラで写すには一秒かかります。その写真を岡部さんは、環境問題のリーダーである「森作り森さん」に見せたところ「皆既日食が起きる日に、太陽の写真展をやってはどうか」と提案されます。三十枚の太陽の写真から、たったの九枚の写真を選んで「」という名前の写真展を開催することになりました。みんなが太陽について注目する皆既日食の日に、九秒で人類が一日に使う総エネルギーをまかなう事ができるということを伝える写真展です。
僕はこの本を読んで、僕の小学校の屋上には、なぜ太陽電池を置かないのかな?と思いました。ソーラーカーの玩具で試したので知っていますが、明らかに学校の屋上は太陽電池の置場にいい場所です。たぶんコストなどの問題でつけていないのだろうけど、なぜ置かれていないのか、理由が知りたいです。
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なかなかいい作文。
正直なところ、このような書籍を選書にした側、もしくは夏休みの読書感想文をアウトソーシングしている先生方に、多少の責任は感じてもらいたいと思う。

エコロジー、リサイクルの意識の高い子供たち、本書の中で描写されている通り、もはや常識であり、子供たちにとっては「私が大人になるときにはもう間に合わないのでは」という気持ちも、むしろ正しいものだと思います。
一方で、教育の現場こそが、エコロジーを考える必要がある現場の一つでもあります。
大量の紙消費、団体行動の名のもとに、同時に活動するためのエネルギーコスト、保守的な考え方。

地球環境の変化の速度ぐらいには、柔軟に、
子供たちに気づきを与え、自ら学び行動する機会を作り出す妨げはしないように、
頑張っていきたいものです。

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p.s.
 高学年にもなると、読書感想文の課題図書は2冊ぐらい買っておいたほうがいいと思います。
 ドキュメンタリーだと、こっちの方おすすめかも…。

はるかなるアフガニスタン (講談社文学の扉)