経済学と生物学が教えてくれる、「生き延びるエンジニアのための多様性」

技術が生まれてからその技術の意味を考えることには、

「なんだか後付で卑怯なんじゃないか?」

という疑問を抱くことがあるかもしれません。

でもこれは、複合的に絡まる、現代の社会において大変重要なことです。

また、技術者が技術の意味を考えることに目を向けなければならない理由があります。

 

ちょっと昔の研究者を紹介しましょう。

ハーバード・スペンサーの「社会進化論」で唱えられたワード
適者生存”survival of the fittest” と進化”evolution”
です。

進化といえば生物学者ダーウィンですが、それよりも前に経済学者であるスペンサーが提案した語であることが興味深いです。

その種が生き残るかどうかは、適応できるかどうかにかかっている、という考え方です。

技術と違って、生物種などは特に「考えて生まれたもの」という過程は成り立ちません。

「生物は神様が作ったもの」という考え方だったとしても、「技術は人が作ったもの」であり、「人が使わない技術」は死に絶えます。

技術が生き延びるためには、技術の利用者にとっての意味とか価値を明らかにすることが必要です。

 

そして、いま、生物学では「生物多様性の維持」が重要な課題になっています。

家畜や植林のように、人間の目的で増やした生物ばかりが増えて、多様な生物が存在しなければ、本来の自然の生態系が持っているバランスを維持することが難しくなります。

それは一体何が、危険なのでしょうか?

わかり易い例では、ある生物を一定の確率で補食し減らす外敵や、分解者のような「直接見えてこないけれども、絶滅されると困る種」の存在でしょうか。

生物の専門家によると、以下の3つの多様性に分けて考えられるようです。

種の多様性:様々な生物種が存在すること
遺伝子の多様性:同一種であっても種内の個体群や遺伝子が異なっていること
生態系の多様性:それらの種の生息環境が多様であること

「種の多様性」だけが目につくわけですが、
「遺伝子の多様性」は、その生息地に適応した結果生み出せたものであり、その多様性の低下が進むと、気候や病気に対応できなくなり、絶滅の危険性が高まります。
「生態系の多様性」とは、生物と非生物的要素が作り出す環境で、それらが有機的な関係を保つことにより構成された自然システムの多様性を指します。

生物種を技術や製品、遺伝子をそれを創りだしたエンジニアや設計思想と考えると、「生態系の多様性」はその製品や技術のニーズを生み出した社会を含めた環境そのものの多様性を指すということになり、納得がいきます。

日本がガラパゴス製品だらけになってしまうのは当然の結果であり、生態系の多様性や遺伝子の多様性、つまり幅広い社会環境やユーザモデル、幅広い思想のエンジニアを維持しなければ、技術種の多様性は維持できないし、たとえばリサイクル技術のように、使用済み携帯電話からレアメタルを効率よく回収・抽出・再資源化するような技術を考えた製品デザインにはたどり着きません。

「リサイクル技術?そんなことは私のエンジニアリングには関係ない」

と考えるかもしれませんが、サステナビリティ(持続可能性)を持ち、連続的な社会の変化に適応して「生き延びるエンジニア」としては重要な視点なのです。