9月が学期初めになるフランスでは、この時期は入学試験やら採用面接やらで忙しい。 研究室お向かいのESCIN(美大)では、今日は実技試験と面接らしい。先日はParisでデッサンの試験があったらしくErikが1週間かけて審査してた。 今日ロビーで座っているのは、その実技試験に通った学生なんだろうな。 ESCINのうちの研究室のコースは3Dグラフィックス、特にリアルタイム専門なので、そういう意味では先鋭中の先鋭なのかも。 あとはうちの研究室も昨日今日と、9月から採用の秘書さんの面接が続いている。ENSAM本部から送られてくるはずの事務官が急病とのことで、突然面接官を任命される。…といっても英語力の試験が中心。 職安に掲示してあったとのことで、遠くはアヌシー(Annecy)からも候補者が。皆さん(dames)いろいろな経歴。同じ質問でもいろいろな回答がかえってきて面白い。 例えば… 『9月の上旬に海外からの教授10名を招いて、カンファレンスを行う。何人かの教授はフランスがはじめてである。あなたはどうやって、いつ、どんな準備を行いますか?』というもの。 めいめいに、思いつく限りの準備を述べるのだけれども、ある例では「机でしょ、食事でしょ、あホテルも要るの?まあそうねえ、メールして要望を聞くわ、どんなホテルがいいかとか…常識でしょ、こんなの」と答える。まあ確かにホテルの★の数も重要かもしれないが、おそらく日本人の教授に対応は向いてないだろうな。きっと彼女のセッティングではCDG空港からTGVに乗ってLaval駅に着くまでで大冒険になってしまう。フランス人でフランス語が使える人間が、CDGからLavalに来る「常識」とは訳が違う。日本で外国人が日本語スキルなしで岐阜県各務原市三柿野駅に行くようなものだ。 他にも『日本からPh.Dを取得するためこの研究室に留学したいという学生から国際電話がかかってくる』というシチュエーションで電話対応をさせる試験もSimonの依頼でやってみた。既に聞かねばならないことと研究室のアドレスを書いて渡してあるにもかかわらず、とっさのこともあり、意外と国際的に通用する英語で喋れない人が多い(アルファベットがフランス語読みとか…)。 まあ面白いんだけれども、履歴書から想像できるステレオタイプを超えるような結果ではなかったともいえると思う。若い人は経験が足りないし、あまり若すぎると、大学院修士博士のような高等教育機関では使えない(学生と遊んでしまうのが関の山)。スペインで経験をつんだ国際派は、やはりスペイン人のようなおおらかさ・よく言えばいい加減さが身についてしまっているので、本当の意味での国際レベルのクオリティがあるとはいえない。私個人としては学際分野で比較的経験のあるシングルマザーのおばさんが一番よく働けると思うのだが、この手の人はサボることを覚えたが最後、言い訳と身の上話を聞かされるだけ仕事の邪魔になってしまう。結局のところ、年齢と経験と、身上のバランスが合っている人というのが妥当案になる。修士の学位を持っている人はある種の人には受けが良いが、実際の能力とは全く関係ない。それに、社会人研修を受けた人は、その人の弱点を如実に語っているので、必ずしもポジティブに働くかどうかは実技試験の内容次第。 ちなみにPCスキルの実技試験などもしっかり行っていますが、こういうのは若い人のほうが上かも。意外と難しいのが英文ビジネスレターで、ひどい例では自動翻訳のミスをそのまま使っている人もいた。 私としては、フランス語が不自由なのをいいことに捲くし立てるタイプは苦手だし、スキルがあることをいいことに、どんどん仕事を押し付けてくるタイプも苦手。英語能力は欲を言えばきりがないけれど(英仏・仏英翻訳や文法チェックが品質高くできれば問題ない)、困るのは「自分の英語能力が高い」と信じているけれども全くそうではないタイプ。PCスキルとかも同様。Excelで何でも片付けるタイプは百歩譲って良いとしても、WordとExcel、既に作られたデータベースしか使わない銀行系事務や電話交換手と違って、研究室秘書にはPowerPointやDTPなどのグラフィック系ソフトの能力も必要になる。 まああくまで経験則なんだけど、平均的な能力は期待できないけれども、安定している年配の秘書さんのほうがどんな時でもやりやすい、という経験がある。 あとは秘書系のキャリアではなくて、インターネット以降・MS Office以降の一般企業経験者の転身なども世間的な常識があってポイント高い。 まあそういう意味ではTechnopoleのValerieとかはものすごく優秀な部類に入るように思う。フランスは30代で親元の近いところにUターン就職する人が多いので、Technopoleはラッキーなんだと思う。 で最終的な判断だけれども、Simonは賢いので、最終決定は2・3日寝かせて熟考してから、ということになった。 雇用関係は、本当に大変。時には冷酷さも、思い切りも必要。はてさてどうなるか。