ひさびさに会議参加報告書いてみた。 というかいつもどおり、私がまじめに学会参加していると、 超高速のロガーと化す。 (しかもちゃんと会場質問もする) 話の意味なんてものは、読むひとが自分で考えたらいいと思う。 コメントくれたら答えるし。 13:26 2009/06/03 @筑波大学東京キャンパス http://www.trasti.jp/forum/forum20_kyg.html 第20回 横幹技術フォーラム 「SNSが切り開くバリアフリー・コミュニケーション」 ~企業内SNS最先端の活用事例~ 総合司会 舘日章(産学連携委員会委員長) 横幹技術フォーラムとは横断型機関科学技術研究団体連合(学術団体)と横断型機関科学技術推進協議会()が共同で行っている研究会である。 開会の挨拶 桑原洋(横幹技術協議会 会長・日立) 活動を始めて4年。融合の時代に学産が融合して活動する。科学技術基本計画にも盛り込まれる方向ですすめている。 今日「インターネットを明日から禁止」といわれたら、とても生活できないが、出始めの頃はそうではなかったと思う。SNSも企業、企業を含めた団体など使っているところと全く使っていないところで、異なった意見の収集、議論などかげかいのない価値を創出している。しかしそこから先が大事だ。「SNSはいいらしいぞ、つかえ」という無責任な押しつけはダメである。まず使ってみる。そして、自分の組織と照らし合わせて採用していくということが非常に重要である。 20世紀の人まねの時代は終わりを迎えている。自分至上世界である。いままでのマーケティングは調査をしていくことばかりであるが、今何を考え、何に不満があり、どんな物がほしいと思っているか、SNSの根幹の考えを採用して、常時オンラインでポテンシャルユーザーの声を聞いて次を考えていく、という広げて活動していくという意味があるのではないかと考えている。 —- 司会:諏訪 博彦(電気通信大学) 13:40~14:00◆講演「SNSが変える企業内コミュニケーション」 (株)NTTデータ技術開発本部システム科学研究所 所長 山本 修一郎 SNSは2006年4月から開始。Nextiの参加者7400名、約80%の社員が利用。ユーザー公開日記は150件。毎日千人前後のユーザーが利用。当初は全体展開ではなく、草の根ではじめて、問題意識を共有できているひとから誘って参加できるようにした。「のれんをくぐる、小径をとおる」といった「雰囲気を醸し出す」の が大事であると考えた。 浜口前CEO「役員や社員が組織や役割を超えて気軽に情報発信共有したり、意見を交わしたりできる仕組みが大事である」と評価。森村誠一(作家)『作家とは何か-小説道場(2009)』より「音声に慣れ親しんでいると、全ての意思伝達を音声で行おうとする傾向になる。音声は不正確であり、ワンチャンスに1対1、あるいは少数にしか伝えられない。文字として書かれると、口語よりも正確になり、忘却に伴う消滅や変形をしない。活字として不特定多数の遠距離、あるいは時間をおいて未知の人々に伝達できる」。 これは暗黙知、形式知とは異なる『仲介知』と呼べるのではないか。 野中他「形式知/暗黙知」では「知識スパイラル条件」を満たす必要がある: (1)ある個人の暗黙知が想像され蓄積される (2)個人の暗黙知が組織的に動員される などなど「一般化される」と、違う職場に適用するのにものすごくコストがかかる。 この「知識スパイラル」と提案モデルを比較すると、「感謝、共感性」が明示的であるということが大きく異なる。こういったことが社員の連帯感を醸成する。 時間との関係で言えば、形式知化するために時間がかかる。SNS上では「知識が必要なところで創造されている」といえる。Just-In-Timeで他の社員から引き出されている、ということで野中論と対比してみると、知識創造の促進という面で(ライバルではなく)「社員の絆を自立的に強化」していることになる。また知識が文語化する。 ハワード・オルドリッチ『組織進化論』を参考に企業内SNSにおける組織の進化プロセスを分析すると「変異」新組織リスペクターズの創設、「選択」OnとOffの情報をあえて混ぜる「保持」「闘争」などそれぞれにおいて、特徴があった。 企業内SNSと協調学習の3条件として (1)条件依存:社員が置かれた固有の状況の中で発生sたもんだいに基づいて、協調の場としての企業内SNSを用いてQ&Aに質問する。質問した社員は断片的な回答を参考にして問題を社員が解決する。 (2)外化:協調の場としてSNSを見ている他の社員が外化する。 (3)アブダクション:回答する社員は自分の経験からの結果として問題を導いた原因をアブダクションを用いて推論することで回答を得る。 企業内SNSを導入する上での留意点。経営者はSNSについての経営資源の判断、活動支援条件の明確化。情報システム部門は、情報システムとしてのSNSの位置づけ、運用体制の明確化。KM部門は既存のKM試作と連携。運営部門は企業利連の中での位置づけ協調。社員はどのように利用するか、運用規則の遵守、が重要であるとまとめた。 14:00~14:20 ◆講演 「SNSで縦横無尽なコミュニケーションを実現!」 青木 聖子 (株)損害保険ジャパン (損保ジャパンは)合併後、非常にギスギスしていた。損保ジャパン業務停止命令以後、再生プランに「職場いきいき」という計画のなかで盛り込まれた。管理職を除いた全職員が参加任命型「職場の互選で選ばれる」もしくは自由参加型(紹介性)。完全匿名コミュニティもある。 「お客様からカレンダーを要望された、どこかに1部でも余っていないか?」といった例で始まり「(システムの)契約紹介で全枝番を見る方法は?」といった質問にみんなで答えて共有した例を紹介。社長の年頭挨拶のビデオやそれに対する匿名のコメントなどもあり社員と社長のコミュニケーションに非常に役立っている(社長が楽しみにしている)。 当初はそれほどうまくいっていたわけではなかった。特に個人情報を扱う企業という意味で、会社から貸与されているパソコンでインターネットに接続することを禁止されていた。日記を書くことを支援するよう、いつでもファシリテーターが参加して、すぐにコメントを入れるようにした。誰かが見ていてくれる、という感覚を全員に徹底。どんな批判的な意見でも受け止める、改善してSNSで報告する、このループを繰り返すと、否定的な社員からも信頼感が生まれてきて「許し合う文化」「安全の欲求」が出てきた。それが「信じ合い、助け合う文化」社会的欲求を満たすようになってきた。保険契約の際、書類の不備があったときに「不備返送用」というクリアファイルの版をつくった、という報告共有が行われたが、反響が大きくなり、全社的に採用された。今までであれば全社的に採用するには1ヶ月以上かかっていたが、非常にすばやくうごけた。 展開の方法としては「メンバーを段階的に増やしていく」という方法をとった。営業とサービスセンターの横と横を結びつける、ファシリテーターが注力し、その後本社、その後支店長などどんな人ものびのびと活動できるようにした。 社員満足度向上とコミュニケーション段階として「安全欲求→社会的欲求→承認欲求→自己実現欲求」という段階をとった。 当面は一部の利用者に絞っていくが、感動とドラマと共にナレッジ・ノウハウが共有されるようにしていきたい。 14:20~14:40 ◆講演 「富士通グループでのSNS活用状況紹介」 神部 知明 (㈱富士通ソフトウエアテクノロジーズ) グループウェア開発の経験から、その先にあるであろう製品「知創空間」のβ公開をしたかった。富士通の営業さんの目にも触れて欲しかった。2005年から。 12,000人、富士通グループ(国内)7日間に1度以上ログインするアクティブユーザーは2500名、コミュニティ1200人、招待制(自分でも入れる)、実名+ハンドル制。ONのコミュニティが75%最初は遊びのコミュニティlのほうが多かった。「プロジェクト」日報、プロジェクトの連絡、商談状況。「WG」改善など、他に「コミュニティ」「技術情報」など。アクティブコミュニティは9%。実際にはアーカイブとして残っている時限コミュニティ、休眠、不定期発行コラム、企画倒れコミュニティ(6割、推進者不在)。個人のブログはOff系が6割(目視で測定)。上位5%の「トップユーザ」が書いている。一日平均4件。全体の記事の56%のエントリー。平均50のネットワークを保持している非常に社交的なユーザー。 彼らはオフラインでも活発。SNSがなくても積極的。これを見えるようにした。従来(SNS初期)Blogでネタを合わせてコミュニティ形成→OFF、という流れであったが、現在はブログでネタ合わせ→Face to Faceの打合せ→ON、そこで2-3度会っていけそうならコミュ作成、というようにすぐにビジネスにつながっている。 「暗黙知を表出」 つぶやき系Blogが人気。トップアクセスのタイトルから…「言語/非言語の境目」、「つぶやいてみる」、「マネしてみる」、「山本ナウ」、「想念の墓場」。そこで表出化した暗黙知をKnowWhoに利用。キーワードを入れるとお勧め記事と検索結果が療法表示される。 具体的にどうやって仕事で使っているか。受託プロジェクトでの利用例。 「リーダーの報告」にプロジェクトのメンバーがBlogとして自由で個性的な報告を書く(トラックバック)、メンバー同士、お互いの理解・刺激につながるプロジェクトの触媒に。 『会社が好きになった!』という意見、企業風土の醸成。会社や組織を他の社員が働く職場と認識。立場や職種で異なる価値観を理解、様々な気づき。「ワンクリックで応援する機能」などで他の社員からの応援がモチベーション向上に役に立っている。 課題は山のようにある。ユーザーによってSNSの見え方が大きく異なる。非アクティブなユーザーにとっては、趣味系のBlogばかり見えてしまい、遊んでいるようにしか見えない。必要としている情報・人・コミュニティにナビゲートできない、教育系コンテンツなどの充実が必要だろう。 企業内SNSは業務でも有効に機能。組織を超えた人脈形成維持に有効。価値観の共有として会社や組織を他の社員が働く職場として見つめ直す、これが会社の力になる。 14:40~15:00 ◆講演 「情報共有ポータルCollaboの利用状況の質的調査」 宮内 興治(日本ヒューレットパッカード(株)) 日本HPの社内技術情報共有システム。技術コミュニティ、コンテンツセンター、個人洋裁と、検索、ブックマーク、フィードバックで構成されている。日本HPの社員であれば誰でも参加できる。実名制、匿名投稿はなし、コミュの作成は申請制。情報の公開範囲は全社に公開。 ユーザースタディ9名(男性6女性3)、Collaboを有用だと感じた人が「ない」という人も含めて個別インタビュー調査。情報共有の観点から、主な利用コンテクストは「検索」と「技術コミュニティのブラウズ」、特徴としては「読みが多い、検索は使い方が簡単、技術情報を検索することは業務として当然、事例紹介/手順書/製品利用実例/セミナー資料などを共有」メリットとして創造的な情報共有ができるようになったという。 文書共有重視型のユーザは、意識が文書の共有にかたよっている。Collaboでの情報共有の需要が少ないユーザーは、職務(情報流通の上流)/共有できる情報が少ない(セキュリティ・アクセス権限視点)/既存手段で十分/機能の習得に時間がかかる、などCollabo以外の情報共有手段を利用(たとえばサーバーとか)。 間接情報利用型のユーザ、情報に付随する情報(特にKnow-Who情報)の活用。社内の専門家、経験者を知る。情報の裏付けをとる、個人の社内ネットワーク拡張、Collabo以外による情報共有の出発点、社員の人柄などを推測。「個人的なネットワークは、専門知識を教えてもらい、問題を解決するための重要な資源である。」(Davenport, 2006) 課題として、「情報共有の促進」特に情報提供の動機付け、ユーザーの啓発、システムによる支援、企業経営からの理解/支援。「情報の活用支援」検索、ブラウズの公立か、情報内容の概要提示、情報の存在の通知(アウェアネス)。 その他課題としてKnow-Who情報の収集支援、情報発信者の専門経験分野の水食、社内の専門家、経験者の発見支援、社内コミュニケーションの活性化、社内ネットワークの拡張を支援、情報虚うっゆうしすてむでの体験の向上、業務以外の情報共有は有効か?など。 ★「質的評価」という報告であったが、SNSなのにコミュニケーションらしい話が全く出てきていない、KM的な印象を受けた。HP社の社風も手伝っている感じはあるが、これでは研究/発表にならないのでは。 (15:00~15:10 休 憩 ) 15:10~15:30 ◆講演 「共通プロジェクトA「企業内SNS」の調査結果報告」 太田 敏澄 諏訪 博彦 (電気通信大学大学院情報システム学研究科) 「どんなことに利用されているのか」仮説:企業内SNSは正解なしの問題に対して有効である→結果:正解あるなしにかかわらず、活用されていた。個人レベル6件、業務レベル21件、組織レベル3件。「どんな機能が使われているのか。などなど。 ★母集団の少ないデータなのであまり新しい知見が見られなかった。 <後でディスカッションしてみたら、いろいろ聞くことができたので今度研究室見学してみたいところ> 15:30~16:30 ◆パネル討論と総合質疑 太田 敏澄(コーディネーター) 山本 修一郎、青木 聖子、神部 知明、宮内 興治 <ディスカッションより> 損保ジャパンの例、ファシリテーターは2名。 富士通の例、正確度のような物は計っているのか? NTTの例では参加していない残りの2割はどうしている?→参加していない。情報から取り残される疎外感などは、ないのだろう。どういう人が2割なのかは調べられていない。 損保ジャパンの例は匿名性、「荒らし」が起きる心配はないのか?→手がつけられないぐらい荒れることもあるかと想定したが、同じ社員なのでそこまでは荒れない。確かに長々と書き続けることもあるのだが、言いたいところまで言い終わると「そうはいっても会社だからさあ」と自然と話の切り替えが起きる。そのあたりが2chとは違う、とやってみてわかった。 富士通(神部氏)より、上の人(事業部長など)は本当に理解して推進してくれているのか?私の会社の場合は(社長は)「そんな物を信じない、俺は絶対買わない」というスタンス。 (HP)Collaboの場合では「部署によって違う」という状況。 損保ジャパンの場合は、上の方が理解があった。「娘がオレンジ色のページ(mixiのこと)を開けているのを見たことがある」といったところから理解されたようだ。遊びとか普段の話をしているところから、経営側が聞きたい情報が出てくるのではないか、と考えた。管理職、30代後半から50代ぐらいまでのネットリテラシーが低いのでそこを高めていかねばならないと感じている。 NTT-D山本:SNSの価値を見いだすのか見いださないのか、というのはそれぞれの社員によって異なる、ということが大事。役に立たないのか、たつのか、という単純な2元論ではない。ツールを使う人間サイドの考え方、行動様式による。自分自身の行動設定ができているか。やらずに成果を出す人がいてもそれで良いし、SNSをつかって成果を出す人が出てくれば、それはそれでよい。SNSに対する距離感、であると考える。SNSよりも直接お客にいって仕事とってくる人もいるが、使っている人にとやかく言う筋合いはない。 損保J-青木:匿名性について。匿名であって良かった、匿名じゃないと書けない、仕事の話は匿名じゃないと書けない、という意見がある。HPの場合は? HP-宮内:ウチの社だと匿名には理解がないと思う。あっても良いという意見はあったが、出されている情報に対して確認とりたいので。むしろいまのところは匿名はやめて欲しいという意見が大半である。 富士通S-神部:匿名を許しているが、実名でお願いします、という運用にしている。私自身は「実名でやって欲しい」と思っている。社内での人脈をつくって欲しい。匿名のコミュニティがあると、我々が扱えなくなる、サービス止めろ、ということになってしまうだろう。 NTT-D山本:うちは実名制、管理者も入っている。幹部ブログもあるがそれよりは親しみやすいという意味で良いと考えている。実名と匿名があったら混乱すると思う。人格の切り替えに、うまくいかなくなったときにジキルとハイドみたいなことになってしまう。私などは文章の書き方でばれてしまうだろうし(笑)。なかなか語り口を切り換えるのは人間には難しいと考える。 NTT-D山本:その社員が発言した全情報が記録される、という事に対する可能性を各位に聞きたい。ちょっと抽象的かもしれないが。 HP-宮内:我々の使い方だとBlogをちょろちょろ、掲示板をちょろちょろ、というレベルなので成長度合いが見えるかなあ、となると難しいかもしれない。しかしある技術コミュニティにおける情報がどう変わっていくか、という視点で見ると、どのような技術がホットであったのか、など後で見れるのではないか。あまり言い答えじゃないかもしれないけど。 富士通S-神部:知創空間では話題などを見せる、検索できる。自分のプロフィールの下に検索で自分が引っかかるようにしたり使っている人もいる。しかしあまり古いデータは使わない。全文検索はあまり使われていない。どちらかというとコミュニケーションにつかわれている。在席管理とか、他のシステムとの融合してリアルタイムのことを加速させた方がSNSにあっていると思う。 損保J-青木:個人が「去年の今頃何を考えていたのだろう?」という読み返しに使っていたというコメントをもらった。見える場所に残しておけば使えるな、という話は「残しておくコミュ」に残している。この程度であるので、富士通の「その人のキーワードが残る」仕組みが加わると良いな、と思った。 NTT-D山本:使い方として現在どうなのか、というのをとらえきるのが精一杯であるが、今後ライフサイクルとしてどうなのか、をかんがえることもできるだろう。後でどう使うかも考えなければならない。富士通の「プロジェクト」の例はよかった、どう乗り越えたのか、が記録されている。しかし「どうそれをとってくるのか」を考えることで、価値が引き出せるのか、がわかるのだろう。 電通大-太田:日記、Q&Aとか機能としてどういうものが必要なのか質問はないか。 電通大-諏訪:Blogと何が違うのか、という議論があるが、実際に使用されている方にどういうメリットがあるか聞きたい。 HP-宮内:BlogがあるBBSがある、それが独立していた場合には情報を探すのが大変になるだろう。私はWordではなくLaTeXをよく使うのだが、どんなスタイルファイルがあればいいか?ということを何処に聞いていいのかわからない。検索を使えば掲示板に書かれていてもBlogに書かれていても見つけることができる。まとめることに意味があるのではと感じている。 富士通S-神部:BlogとWikiと、というあたりですが「簡単になる・毎日アクセスできる」ということが大事、日常に加えられる。「応援」とか「アンケート」とか、意思表示で遊びができる、グループウェアとは違う。 HP-宮内:BBSで書き込みをする場合、文章量が必要。Blogならつぶやきでよい。 損保J-青木:ちょっと(浮いてしまった)管理職にBlogを入れたらいいじゃないか、と考えた。リーダー職になっていない人はまず親和要求があって、そのあとに認知要求がある。そのためにSNSを取り入れている。管理職となれば「親和」ではなく「認知」だろうと考えてBlogにしたが「反応がない!」ということが逆に心理的なネックになり、廃れていってしまいました。運用の仕方が悪かったのかもしれないが「認知!」だけでは企業の中では無理なのかな、と実感として感じた。Blogは「認知欲求」、SNSは「親和欲求+認知欲求」と定義している。 NTT-D山本:簡単になるというのは大事である。誰が見てくれたかという「訪問者リスト」は大事。コメントはゼロでも訪問者が来る、ということがモチベーションになって、より心に響くような事を書こうとする。共感を醸成するような 新しいメディア、荒れると言うことではなく、同じ組織にいる助け合いは良いことだ、ということである。自然にこういう行動様式が身につくメディアをそっと入れてやることで、価値が出る。こういうことは論文には書かないが、本当はそこが大事なのであるが、まだまだ難しい。 電通大-太田:たての命令系統と横の命令/コミュニケーション系があるが、このSNSは本当に組織の風通しを良くするのか。フォーマルチャネルに対し、SNSは踏み込んでいるのか、いないのか。 HP-宮内:組織の風とおしが良くなっているかどうか…これまでも社内で言いたいことは言えてきたと考えている。SNSのおかげで、というのはちょっとよくわからない。しかしSNSで活躍する人が見えるようになってきた。会社のことが広く、よりよく知ることができるようになる、という意味でコミュニケーションがおこりやすくなるという意味で、風通しは良くなったと言えるかもしれない。 富士通S-神部:トップユーザー同士の風通しは良くなったと思う。自分の論文を掲示したり、会ったことなかったのだけど一緒に商談つきあってもらったり。そうでないユーザはあまり変わっていないだろう。「上司部下機能」というのがあり、組織上のネットワークをインポートして社長まで追いかけることができる。上司がちゃんと記事を書いてくれる組織は良いと思うが、事業部長、部長レベルではなかなか自分の意見を書いてくれない。ただ、はじめは反発があったが、いまは普通になってきている。自分のネットワークに掲示した記事が上司にみられてしまうということが気にならなくなった、という意味では風通しが良くなったのでは。 損保J-青木:顔が見えている範囲では風通しを気にしているが、横の風通し、全国津々浦々の営業所など、離島など「内地は良いよね、情報が沢山あって」等言われる。目に見えない地域や、課長に言って部長に言って、社長に言って、という普通のレポートラインがあるがそこでつぶされたり曲げられたり、という状況をどうにかしたい、という経緯でできていたので風通しは良くなっていると思う。 NTT-D山本:風通しの定義にもよりますが、今話を聞いてみると、社員が今何を考えているのか知りたいと思えば、(職場を見て回るよりも)そこを見ればよい、ということだろう。「俺は考えていること絶対誰にも」と思えば書かないわけで。その人がどう思うのか、なのでそもそも乗っからない人には風通しを良くするのは不可能。組織間でみなければ検証はできないだろう。NTTの場合は本社に近い場合でしかなかったが、(良くなったという)定性的な話を聞いて、グループ会社に展開したところ、本社と子会社のあいだの知識ギャップはものすごく大きい、ということがある。しかし情報の秘匿範囲、機密性、風通しを良くして本当に良いのか、という問題もある。グローバル企業になろうとする時点において、日本と海外、英語でしか話せない、英語でSNSするんですか?というのが課題になる。 ★会場質問(白井):コンピュータサイエンスがどこまで「取り出し方」に貢献できるか? HP-宮内:多いという人もいるし役に立ったというひともいる、定量的にはまだわからない。 富士通S-神部:「技術の見せ方」かなとおもう。どんなにすごい技術も「難しくては無理」、レコメンドのように欲しい情報を与える、見せ方をどうするかが本質かもしれない。 損保J-青木:アンケート答えで面白い物があった。全員が使えるイントラネットがある、社員名簿もある、調べて電話もできるが「電話番号を調べる必要も電話をかける必要もない、SNSに質問をかけばいい」という回答があった。 NTT-D山本:ほとんど機械学習的なアプローチでとりくんだことがない、ものすごい可能性を感じているが、さきほどのアブダクションの例、こういう経験をした、だからこうなった、ということがとりだせれば、ものすごく役に立つ。そういう意味で期待している。会社にいてちょこちょこと書いているだけなので、構文的にも単純だろう。意外に良い結果が出るのではと思っている。 会場質問(日立の人):社内で「こもれび」というシステムがある、職務経験がある事務職の人が多い。生産現場での展開というのは考えておられますか?いろんな経験を持っている訳で、それを何とか残せないか。そういった人々を取り込むことは考えていないか。 NTT-D山本:日立とNTT-Dのようなソフトウェアでは生産現場が意味することが違うのだが、経験のない人から経験のある人につたわるのは「問い」だと思う。問いを沢山流通することでしか、知識を伝達できないのでは。こんな当たり前の、というような質問のほうが知識を伝達できるのでは。そういうオープンな問いが流通する場をつくることが大事。経験者に「おまえの知識を全てはき出せ!」みたいなことをしても何も出ない。『だって全部解けちゃうんだから』ということになる。 富士通S-神部:ソフト開発→研究者→営業というところでまだ生産現場、本当の現場への取り組みというのは上手くできていないと思っている。工場とかは対象となってないのでは。普通のパネルなり製品だと何も書いてくれない、コストになる、という話になるのだけど、やはり座る仕事が対象になっている。 HP-宮内:製造の現場からきいたわけではないのだけど、ユーザスタディのなかで「お客様の前に立つ仕事ではないが、掲示板にはお客の声が沢山」という意見があった。工場に働いている人でも可能になれば、と思う。 電通大-太田先生:まとめ SNS研究会をやっていて、技術の話は出てこない。社会としてニーズが出て、それが試せるのか、というそういう「よい事例」ではないか。技術ドリブンはたくさんあるが、これは社会ドリブンとしてよい題材なのではないか。 16:30~16:40 閉会あいさつ 木村 英紀(横幹連合 会長) 「モノづくりからコトつくりへ」現在学会が40学会所属、6万人。兄弟団体である「協議会」の主催でサポートした。本日は数式もなく身近な題材で、たくさんの人が参加された。今後これを教訓にして今後イベントを考えていきたい。私もネットをよく使う。SNSは全然知らないが、BlogやQ&Aは読むが、評価、アンケート、Yahoo「みんなの政治」など、そういうものが統合されているのがSNS、まさに知の統合ですね。そこから何かが産まれる。いままでの価値ではない。そういうものが現れてきた。ネット情報学、ネット社会学そういう文化が産まれてくると感じている。損保ジャパンの「企業愛」がSNSで戻ってくるのかな、そういう感じがしている。今日の話でまた横の連帯感が生まれ始めている、そういう展望まで語っていただいて、期待ができた。学会ではこのような話、経験談の共有ができないのではないか。情報処理学会のテーマにはならないのではないか。横幹協議会こそ、このような話題「コトづくり」そのもののよい会であった。これからもよろしくお願いいたします。 —- よい研究会であった。 今後5年で、個人化が進む、現代の日本社会の中から、大きな研究成果や方法論が生み出されれればこれは大きな可能性があると感じた。 社会と情報技術をアタッチするところは、意外にも「見せ方」なのかもしれない、という富士通-神部氏のかなり確信を持った発言が頼もしいと思った。 企業人/企業内R&Dはもっと自社のイノベーション事例に対して論文を書くべきだと思う。