去年のMNRV(VR専門修士)学生だったDidierからメールが来た。 Skypeメッセージもきた。 本当だったらIVRCで日本にいけていた(飛行機の確保までしていた!)学生だった。 そこそこに優秀で親日家。合気道とかもやってた。 彼は西インド諸島のハイチからきていた留学生の一人だった。 一般の日本人からすると西インド諸島?どこそれ、アジア?という感じだと思い ますが、アメリカ南東にある島です(コロンブスらが新大陸を発見した時にここ が「目指していたインド」だと思われていたため)。ニューオリンズから南東に いくとキューバ、カリブ海を隔ててそのちょっと南東に位置してます。 Wikipediaとかで調べると「世界で2番目に貧しい国」とか書かれていますね。 外務省からは内乱のため渡航危険地域に指定されているようです。 過去にスペインとフランスの植民地であり、それからアメリカに占領されていま す。島民のほとんどは西アフリカなどから連れてこられた黒人奴隷です。クレオ ル語(クリオール語)を話す人がほとんどで、若い人はフランス語英語ともに堪能 です(米国文化もかなり浸透している)。ドミニカ共和国と同じ島なので過去に日 本人入植者と接触する機会も多かったのではないでしょうか。 まあ実際に国費で留学してきた彼らと接していて感じたことは、こういったマク ロの概要ではわからない部分ですね。 基本的に性格は明るいです。 日本人から見ると過ぎるぐらい楽天的で能天気かも。 一般的に「発展途上国」というと「なんだか非文化的な生活をしていそう」とい うのが日本人の抱いているイメージだと思いますが、そんなことはない、という のが重要な点だと思います。 ちょっと話は飛びますが、地球環境の悪化を考える上で、先進国の人々だけが、 文化的・科学技術を使った消費大国であると考えるのは間違っています。グロー バル化、植民化、発展途上国における開発、生産などにより、発展途上国の人々 も多く、最先端の技術や娯楽、消費文化を身につけています。しかも教育が不徹 底なところもあるので、考え方によっては先進国の人々よりも地球環境に負荷の ある生活をしているかもしれません(人口が違いますので同レベルでは計れませ んが)。 例えば、ハイチでは通年40度を超える常夏が続くのですが、彼らは室内でエアコ ンをガンガンに使います。しかもドアや窓も全開にして「あつー」とか言ってま す。ある夏場の日、彼らの部屋に入ると冷蔵庫のように寒い。ドアや窓を閉めて あるのもありますが、エアコンの設定温度を見ると16度になっている。これでも 彼らは「暑い、これぐらいじゃないと冷房した感じがしない」と言っています。 アメリカで学会などに参加するとホテルや会議場は冷蔵庫のような寒さになって いることがあります。人種か地域によって冷房と体感温度に差があるのかもしれ ませんが、アメリカ地域ではどうも日本人やフランス人からでは「寒すぎる」と 感じる冷房が「快適」のようなのです。おそらく湿度と送風の関係なのでしょう が…ダイキンなどの世界的エアコンメーカーはぜひこの「体感温度」に注目して 地球環境の保護に一役買っていただきたい! 話を戻すと、発展途上国だからって、先進国のインテリがやってるような環境負 荷の低いローテク生活を行ってるだろうと考えてはいけない、ということです。 技術、特にITやハイテクに対する需要と市場は明らかにわれわれと異なります。 例えば衛星インターネットやWiMAXはハイチではすでに実用され、一般家庭に浸 透しているようです。そうでなければインターネットカフェに高い代金を払う か、高い電話代をつかってモデム接続となってしまいます。内戦の多い島国では 有線接続は非常に不安定で、さらにいうと郵便事情は最悪で、全ての郵便が開封 され事故にあうようです(実際に被害に会いました。重要書類が3ヶ月遅れで届い た…)。 まあ普通の日本人の感覚では3日と生きられなさそうなハイチですが(日本から飛 行機で行っても片道3日かかりますが…)、能天気さとソフトウェアなどに対する 細やかさは必ずしも一致しないので、プログラミング関係では将来があるかも知 れませんね。色彩感覚はやっぱり派手な気がします。 私の教え子だった彼らは、現在、修士学位取得後、IT、VR系の大学教員や開発会 社のディレクターなどになっています。ハイチの明日は彼らの双肩にかかってい るということですね。 http://www.esih.edu/virtua/
クレオル語は植民地時代にアフリカから連れて行かれた黒人奴隷を元に広がった 言語で、ラテン系言語の文法や単語を多く吸収した多国籍言語です。さらにフラ ンス語と英語も流暢となると、地政学的なリスクさえなければ西インド諸島の対 外貿易ITは「まじめでありさえすれば」明るいようにも見えます。実際にはどう だかわかりませんけど、接していた学生を通した感じでは、比較的なじめる人物 ではありました。 しかしまあ、日本人が「極東の島国」であっても、ハイチのようにならなかった のは、地理的な運もありますが、ほんの百年ほど前に、生真面目に働き、海外を 学び、国防を強化したおかげだったんだな、とふと感じてしまったりもします。 とりとめがありませんが、片手に赤ん坊を抱いているので、このへんで。