さっき、フルペーパー・カメラレディのプレッシャーにおされて「天才科学者になるためには?」なんてエントリーを書いたばっかりですが、偶然、参考文献を 探している最中に、手書き3Dエンジン「Teddy」で有名、SIGGRAPH2006 Significant New Researcher Awardも受賞している東大・五十嵐先生の興味深い文章を発見しました。
How to have a paper get into SIGGRAPH?
http://www-ui.is.s.u-tokyo.ac.jp/~takeo/writings/siggraph.html
日本語版は無いみたいなので、訳してみます。
SIGGRAPHに論文通すにはどうしたらいいか?
How to have a paper get into SIGGRAPH?
by Takeo Igarashi, The University of Tokyo
April 2007
- You must be very competent and dedicated: The smartest researchers around the world are competing each other to get papers into SIGGRAPH. If you think you are not competent or dedicated, forget about SIGGRAPH. It is not a place for you. If you think you are less smart, work even harder to fill the gap.
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非常に有能かつひたむきでなければならない。SIGGRAPH に論文を通さんと、世界中のもっとも賢い(smartest)研究者たちが鎬を削っている。もし、君が有能でないとか熱心でないなら、SIGGRAPHに ついては忘れろ。そこは君のいる場所じゃない。もし、君が自分がそれほどsmartじゃないなら、その差を埋めるために頑張って働け。
- You must forget about everything else and focus on SIGGRAPH: If you pay attention to your personal life or other jobs (classes, management, daily job, etc.), you must understand that SIGGRAPH is far away. You must give abolute proiroty to SIGGRAPH. Devote all of your time to polish your paper and demo to the limit.
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SIGGRAPHに焦点をあわせる事以外全て忘れろ。もし、君が個人的な生活とか他の仕事(授業とか、管理とか、日常業務とか)に注意を払うなら、君は、 SIGGRAPHは遠ざかってると知るべきだ。SIGGRAPHに絶対的なプライオリティをあたえなければならない。心から全ての時間を、限界まで論文と デモを研くために捧げろ。
- Pick the most promising research topic: It is crutial to find a good research theme. If you find a good goal, your work is mostly done. If a wrong goal is set, you are destined to fail. The best way is to come up with many possiblities, examine them carefully, and pick the best one. You must list 100 possible research ideas first, carefully investigate the possiblity of 30 of them, implement 10 of them and see how it goes, and pick the most successful one in the end. You must understand that 100 good ideas are discarded in the porcess of producing one SIGGRAPH paper.
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もっとも有望な研究トピックを選べ。よいリサーチテーマを見つけるということはclutial(訳注:crucial?=決定的)。もしよいゴールを見つ ければ、君の仕事は終わったようなものだ。もし誤ったゴールがセットされているなら、君は失敗する運命にある。最高の方法は、多くの可能性から、それらを 精査して、最高のものを選択することだ。まずは100のリサーチアイディアをリストしなければならない、その中から30を注意深く、可能性を徹底的に研究 し、そのうち10を実装して、どうやって動いているのか見る、そしてもっとも成功する1つを最後に選ぶんだ。100の良いアイディアは、1回の SIGGRAPH提出porcess(プロセス?)のなかで捨てられるものと理解せよ。
- Show your work to experts and discuss before submission:You will never win if you work alone and do not get any feedback from anybody.Afterall, people (reviewers) decide the fate of your paper andyou must understand what they want and what they dislike.You will never get that critical information if you do not talk to them.You must go to conferences and show your ongoing work to experts.You must visit people, show your work, and have a discussion.
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投稿する前にエキスパートに君の仕事を見せてディスカッションしろ。もし独りで仕事するなら、君は永遠に勝てない。そして誰からも、いかなるフィードバッ クも得られない。最後には、人々(査読者)は君の論文の最終結果を決定する。君は彼らが何をして欲しいのか、そして何を好まないのかを理解しなければなら ない。もし君が彼らに喋ることをしなければ、君は批判的な情報を得ることは無いだろう。君は学会にいって、君のやりかけの仕事をエキスパートに見せなけれ ばならない。人を尋ね、仕事を見せ、そしてディスカッションを得なければならない。
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Start early and revise your implementation and writing many times.The only way to create a good system and good writing is to repeat and polish.It is OK to start with a crappy one. It will eventually transform intoa good one throught iterative refinement. On the other hand,if you start late, you will never deliver a perfect one in time.
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早く始めろ、そして君の実装を改定し、たくさんの回数書け。よいシステム、そしてよい書き物を創り出すたったひとつの方法は、繰り返して磨くことだ。質の 悪いもので始めるのはOKだ。それは反復精製を通して、いつかは良いものに変換される。一方では、もし君が遅く始めるなら、時間内に完璧なものは絶対にで きあがらないということだ。
- Do not give up and try multiple times.SIGGRAPH is so competitive that even very good papers fail each year(almost randomly, depending on the reviewers you get).Even if you submit 10 perfect papers to siggraph,only 5 will probably get in.So it is important to submit a couple of (very good)papers to siggraph and continue to do so for multiple years.Single shot is like betting. No one knows whether you win or not.However, if you continuously submit good papers to siggraph,you will eventually win.
- ギブアップするな、多数回試せ。とてもよいペーパーが毎年落ちるということは、SIGGRAPHはそれほど競争的だということだ(ほとんどランダム、君が 掴んだ査読者に依存する)。もしSIGGRAPHに完璧な論文を10回投稿しても、たぶん5篇しか通らない。つながった(とてもよい)論文を SIGGRAPHに投稿し、複数年にわたってそれを続けるという行為は重要である。シングルショットはいわゆる賭けだ。君が勝つかどうかは誰もわからな い。しかしながら、もし君が継続してよい論文をSIGGRAPHに出しつづけるなら、いつかは勝てるだろう。
Sounds too harsh? Maybe.But the result is rewarding.You will present your work in front of hundreds of audience(largest room has over 3000 seats).Proceedings will go to labs and libraries all over the world.Your work will be introduecd and discussed at seminors and classes.Some company might buy your technology and make a product out of it.Chances are high that you will get a nice job offer.Most importantly, you will become a part of the history of computer graphics.
厳しすぎるって?たぶんね、でも、結果は報いる。君は君の仕事を数百人の聴衆(もっとも広い部屋は3000人越)の前で話すんだ。プロシーディングは世界中の研究室やら図書館に行く。もっとも重要なことは、君はコンピュータグラフィックスの歴史の一部になるだろうって事。
Additional Resouces:”How to get your paper rejected from SIGGRAPH”,”Good writing”
p.s. I do exaggerate things here. I myself do not do all of these things perfectly.However, if you need some clue,this list might give you some insight.Good luck.
追伸:私はここで誇張表現をしています。わたし自身これら全ての事を完全にこなしているわけではありません。もし糸口が必要なら、このリストは君にいくらかの見識をあたえるかもしれない。グッドラック。
確かに厳しすぎるー。でも真実かもしれない。
1年の全てのサイクルがSIGGRAPH中心だもんな…。
生の五十嵐先生の英語が読めて楽しかったです。
(ちなみに英語のスペルミスは直接関係ないのかも、と少し安心した私)
わたし自身が参考になったことは・・・
・独りで働かない
これは今後、改善していこうと思います!
予算が無い→会議にいかない→論文に出てこない世間の常識を見落とす。・・・という悪循環にもなりますし。
そういえばSIGGRAPH’98の某レセプション会場(Disney Sports)で、我々発表グループの横でノートPC片手にTeddyのプロトタイプ(らしきもの)を持って誰かにデモをしていたのは後から思えば五十嵐先生でした。
ちなみにオンラインで公開することと、”専門家/エキスパート”のディスカッションを得ることはまた別なんですよねえ。
・100→10→1
今の環境は100思いついたら50実装することになっていて、1は確実に売りに出されて、残りの49はどこかにこっそり実装されてるか、ハードディスク の肥しになって忘れられる・・・という環境なので、なかなかハードではあります。最初に90捨てるのが重要かも知れないです、自分にとっては。
・個人的な時間、雑用を捨てる
さすがに眠ったり家族のための時間を捨てるわけにもいかんでしょう、とは思いますが、今自分がやってることは、登校拒否の息子を臨月の嫁に送り迎えさせて、論文書いているという状況ですから、似たようなもんです。非道極まりない。
まあともかく、こんな素敵な文章が読めて勢いが付きましたよ。
執筆に戻ります。
Akihiko Shirai, Ph.D
Invited Researcher
Presence & Innovation Laboratory ENSAM France
http://akihiko.shirai.as/