うぉわたー! 例の国際研究交流プロジェクト、投稿終わりました。 総量28ページ。 日仏研究文化の違いについて、以下幾つか気になった点を。 【日本がいいなーと思うところ】 ・研究派閥が少ない ないことは無いけど「東大限定」とか「COE・科研費採択済みのみ」なんていう予算の出し方はしないと思う。実際にそういう差別・派閥がないことは無かったとしても。フランス人の社会ではこういうところに平等意識は働かない。 ・署名が不要 電子メールで提出に加えて、紙にサイン必要、郵便局で消印押して…という署名文化がないのは、ぎりぎりまでクオリティ追求作業ができて楽(単にぎりぎり文化を助長しているという指摘も)。 ・教授の権限が強くてお金持ち フランスの研究所は基本的にお金もちではないし、お金持ち研究所に見えても管理コストが非常に高かったりする(日本でもそういうことはよくある)。また教授といっても管理側のディレクターには頭が上がらないことがある。さらに予算の計算方式も日本と違って、エフォート率の算出に加えて教授のクラスが細かく設定されているので、コストは1Euro単位で算出される。日本でもエフォート率の導入は増えてきているけど、合計すると実際の労働時間が長すぎてエフォート率120%になってしまったり、年収あたりの金額とは一致してなかったりする。そういう意味では、日本の教授は大きな権限と、自分で価値を決められる自由な時間を持っているということ(自分の給与分働いたか、働こうが働くまいが、を自分で決められる)。実際にはその所属に依存する要素も多いのだけど。 【フランスがいいなーと思うところ】 ・固い科学が評価される どういうわけか、日本で高い評価をもらうのが難しい「固めの科学」テーマが非常に高く評価される傾向がある。逆言うと、日本でよく注目されるようなインタラクティブ・ユビキタス・エンタテイメントといった課題はなかなか提案しづらい雰囲気がある。 ・やわらかい科学を開拓する可能性 その分、今回のようにコンビネーションで、固め・折衷・やわらかめの3本の軸を設定できたのは良い戦略だと我ながら思う。インタラクティブとかエンタテイメントとか言うと、「やわらか系」に聞こえるけど、実際には技術的には高度なものが必要だし、ファインサイエンスにフィードバックできる要素は多分にあることが、曇りなく説明できたし、それは私自身の研究課題ど真ん中なので。 ・学生のスタージュ先の開拓 スタージュ(インターンシップ)先の企業や海外の優秀な研究室を開拓できることは、フランスにとっての大きな貢献として評価できる。名文化はされていないが、おそらく研究者からすると、特許1本とるよりも意味があることだと思う。日本側にはただでさえ、そういったインターンシップを学位認定の必須用件にするような風習が無いし、学期も4月からで、就職活動の暗黙の縛りが強いから、インターンシップの位置づけはかなり低いものなのだけど、実際には学者の道に進む学生が、職業意識や広い世界を数ヶ月でも体験できる重要な機会だと思う。つまり、日本の研究室相手に学生交換の約束を取り付けられる研究者にはチャンスがある(米国にもインターンシップ文化はあることもあり、比例して日本のパートナーは少ない)。こういったチャンスを日仏共に開拓できるのは、単なる国際間の論文の共著よりも重要な活動だと思う。