E3でインタフェース合戦になった任天堂vsSCEですが,今度は法廷での争いになってきたかもしれないですね.
任天堂、ソニーがモーションセンサーを盗用と主張 http://blog.japan.cnet.com/staff/archives/002844.html
まあ発売されてないものですから,ばらして中身を見ないと,盗用とまでは言えないように思いますけどね,それにWiiconは1年近く前から公開されていたわけで,私だって真似しようと思えば作れますって(過去記事:任天堂の革命コントローラを自前で作るには).
トラックバックしておいてあれなんですが,CNETのこの記事はGameDailyが「任天堂英国のがDavid YarntonがPhil Harrisonとソニーのコピー体質をSlamした」という話を紹介しただけで,訴訟までは言ってないですよね.日本語解説がこちらにありましたので引用.
ってゆか,この際だからちゃんと訳すよ,CNETの(恣意的な?)誤訳を指摘するためにも!
Sony Copied Us, says Nintendo U.K. Boss ソニーは我々をコピーした,と、任天堂U.K.のボス It was only a matter of time before Nintendo directly accused Sony of stealing their idea. Across the pond, David Yarnton (right), who heads up Nintendo U.K., slammed Sony's Phil Harrison and the company for "copying" Nintendo. 任天堂が,ソニーがアイディアを盗んだとして直接ソニーを訴えるより前に,それは時間の問題でしかありませんでした.池の全域で,David Yarnton(右記),任天堂U.K.の頭は,ソニーのPhil Harrisonと会社を任天堂を「コピーだ」として酷評しました.
Ever since Sony announced at its media briefing that the PS3 controller would incorporate motion-sensing technology, people have speculated that Sony stole the idea from Nintendo. After all, Nintendo has been responsible for most of the major controller innovations of the last 20 years—D-pad, analog stick, etc. ソニーがメディアブリーフィングで,PS3コントローラがモーションセンシング技術を取り入れると発表して以来ずっと,人々はソニーがアイディアを任天堂から盗んだんだと推測していました.結局,任天堂は過去20年のD-パッド,アナログスティック,その他の重要なコントローラ革新に対する責任者でした. It's easy to point out that the "Wiimote" and PS3 controller are entirely different, that the Nintendo system is built entirely around a motion tracking freehand controller, but that doesn't seem to matter to some. Speaking with trade publication MCV, Nintendo U.K. boss David Yarnton had some choice words for Sony and their new controller. He even called out SCE Worldwide president Phil Harrison. 「Wiimote」とPS3コントローラは,まったく異なる,と指摘することは簡単です.任天堂のシステムは,完全に,モーショントラッキング・フリーハンドコントローラのまわりで構築されているので.しかし,それは一部の人々にとって重要ではないようです.任天堂U.K.ボスのDavid Yarntonは,ソニーとその新しいコントローラに対し,選んだ言葉(choice words)で業界紙MCVに語りました.彼は,「SCE WorldwideプレジデントPhil Harrison」とまで呼んで. "I'd love to dig up some old Phil Harrison comments and say 'hang on a second - six months ago when we launched our controller you said one thing, and now why are you doing this?'" said Yarnton. "I don't know what their decision making process is but I think if you look back, any innovation that has come in gameplay has come from us." 「私はいくつかの古いPhil Harrisonのコメントを掘り起こすのが好きで,『ちょっと待ってください. 6ヵ月前,我々が我々のコントローラを発表したとき,あなたはひとこと言いました.そして、現在なぜ,あなたはそれをするの?』」と,Yarnton.「私は彼らの意思決定プロセスがどうなっているかについては知りませんが,しかし思うに,振りかえると,ゲームプレイのいかなるイノベーションも我々からきた.」 Yarnton continued by intimating that Sony not only copied Nintendo, but that they also copied the force feedback functionality from Immersion Corp. Yarntonはソニーは任天堂をコピーしただけではなく,Immersion社のフォースフィードバック機能もコピーした,とほのめかして続けました. "Historically we're always developing new things. We know Sony have had a lot of issues with their rumble feature and they've had to withdraw it - because they didn't innovate, they copied," he said. "With Nintendo, I'm trying to think of anything we've copied... but I can't." 「歴史的に,我々は新しいものを常に開発しています.我々は、ソニーが彼らのRumble機能に伴う多くの問題を抱えており,そして,彼らがそれを撤退(withdraw)させなければならなかったということを知っています. - 彼らが革新(innovate)せず,コピーしたので」と言い,「任天堂について,私は我々がコピーした何かについて考えようと試してみますが...できませんね」 by James Brightmanたとえば十字キーの意匠は任天堂横井軍平さんが考案したものだけれども,普通にSCEやサードパーティは似たようなジョイパッド出してるしね. それよりもWiicon(Wiimote)の場合は標準コントローラを上手く応用したコンテンツを作らないと,というわけでSCEを訴求してる場合じゃないよ(新しいインタフェースを使った新しいエンタテイメントの難しさについては,いつもBlogで書いている研究開発の内容なので今日は述べませんが).
SCE、Immersionとのフィードバックコントローラ特許訴訟で敗訴 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0503/28/news023.html
ちなみにMSは早い段階で,振動コントローラの特許を保有しているImmersionにお金を払って和解,ライセンス取得している.
任天堂は,コントローラ側ではなくCPU側で振動出力を算出する方式だったらしく,(運良く)訴求から逃れているようです.Wiiconでどう実装したかはまだ謎です.ライセンス取得したとすれば,ずいぶんと高価なコントローラになっているはずです.
ところでImmersion社ってベンチャービジネスだったときは応援していたんだけど,VTI社を買収したあたりから『VRに絡む特許は全部俺様』といわんばかりの知財戦略で,正直,応援できません,というか自分の畑も荒らされている状況ですから.
SCEがPS3に振動機能を盛り込めなかったのは,訴訟継続中でライセンス許諾にたどり着けなかったからといわれています,しかし,Immersion社のタチの悪さはいろんなところから聞こえてきます.
Immersion offers to teach Sony’s DualShake to dance http://www.joystiq.com/2006/05/19/immersion-offers-to-teach-sonys-dualshake-to-dance/ 『モーションセンサに振動をつける技術を教えてやろうか』とImmersion社
うぜえ,まじうぜえ. わかってるんだよ,Immersion!そんなもんは技術で解決できるって事は!!
98年にVTIがCyberTouchで取得した,データグローブ+バイブレータというこれまた拙作「Fantastic Phantom Slipper」のニアミス製品に関連した特許で,すでにモーションセンサとバイブレータ数個にかかわる特許は取得済みであるわけです.
当時は「えー!?それで特許とるか?」というような内容だったわけですが,弱小研究者には対抗特許や訴訟に持ち込める余裕もなく….
考えてみれば,当時のVR技術は10年かからないで収穫期に入ってるんだなあ….
■これでもか!といわんばかりのImmersion社の特許一覧 http://www.immersion.com/corporate/patents/patent_portfolio.php
ここ1年で15件ぐらい増えてる…. めちゃくちゃ威圧感あります. サウンド,フォースエフェクト,ロータリースイッチといった広範にわたって,米国,日本,カナダ,英国,豪州,フランスなどで取得しています.
ちなみに,VR・エンタテイメント業界で「これはやばい」といわれている有名な特許を2点ほど紹介しておきます.他にもたくさんありますけど.
■振動情報をネットを介して送ると特許侵害 Immersionが取得してます.Webコンテンツに埋め込むのもすでに実装済み.iFeelMouseの商品化に伴い取得された特許と思われます. 上記リストの「Method and Apparatus for Providing Force Feedback Over a Computer Network」ですね,99年取得.
■3Dで視点を切り替えるボタンを用意すると特許侵害 SEGAがバーチャレーシングで取得した特許ですね,VRボタン.97年ごろ取得.取得したのがかなり遅かったので,これについてはまだ有効ですが,SEGAは防衛特許として取得したようですね.
まあ,電器メーカのような同業界にはクロスライセンスという仕組みがありますからいいんでしょうけど,問題はImmersionが独自の製品をほとんど持っていないことですね(ハンドルコントローラはLogitech).つまりクロスライセンスしようにも,彼らの特許を相殺できるような特許網を作らない限り,年貢は収め続けなければならないわけです.で,その年貢で彼らはまた新しい特許を取得する…と.
困ったものです.
日本の場合,公開審査制度がありますから特許が成立する前の段階で食い止めなければなりません.企業の知財部の頑張りを期待します.