国際間のゲームデザイン方法論の違い….
英国のゲーム会社の日本事務所で働いていたときに,毎日味わっていたギャップです.
いままさに「AceSpeeder2」の開発が山場を迎えており, いろいろ大変なところなのですが(特にナカタニさん), 私の昔の経験が生かされる部分でもあります.
GDCなどでよく日本のゲームプロデューサが講演していたりするわけですが, 結果論だけ見ると, 本質的なゲームデザインにおける重要なこと, …というのは国によっては代わらないはずなのですが, そこに至る方法論が全く違います. これは実は国際間というより,同じ会社,別のチームでもあったりすることなのですが.
だから人気の講演にもなるわけです, でも「方法」と「方法論(methodology)」は全く違っていて, 簡単にコピーできるものではありません.
開発の詳細はあまりに生々しくてBlogでも書けたものではないのですが, 例としては以下のようなものがあります.
【山場と締め切り】 日本人の仕事の仕方だと「山場」は締め切り直前です. ものにもよりますが,2週間前,2日前,2時間前…といったところでしょう. また締め切り後に休日などを入れて,1日ぐらい余裕を見ておくのが普通ですよね(つまり土曜日とか). あとは日本人の場合は「徹夜が計算のうち」に入ってたりします. 会社に住民票を移したら?という仕事振りの人がいたりしますが,実は平均値が低かったり….
でも欧州,少なくとも英国とフランスでは「締め切り過ぎてから」がんばります. (正確には締め切り直前~過ぎて数時間ぐらい) …なのでディレクターや企画さんはそのあたりを予測して締め切りを設定します. 仮に,本当の締め切りが週末だとすると水曜とか木曜とかになります. なお,徹夜や日曜労働は数に入れてはいけません. 組合がどうとか,という理由ではなく,普段から徹夜をしないので, 働かせても平均以上の働きができません.逆にストレスを抱えます. ただし,コツコツやるのは得意な人が多いです.日本人の接し方だと, 「正しい日程を伝えて,そっとしておく」というのが一番パフォーマンスがよいと思います.
もちろん,日々の作業や,終盤では的確に指示を出していくのがディレクターの仕事です. 逆に最初からビシビシと横に立って作業しようとすると,あまりうまくいかないことが多いです. (でもこれは最近の日本の若者にも多いかも…)
【個性と特徴】 国別で言うとステレオタイプを強化することになりますので特に限定したくはないのですが, たとえばイギリス,フランス,ドイツ,アメリカなどで言うと, 技術的合理性,一転豪華主義,機能的合理性,派手で判りやすい…などが デザインにおける個性や特徴のコンセプトになることが多いです. (特にエンタテイメントだと誤魔化せない特徴として表れます) 日本は「ある規格」にストイックなまでに則すことが前提で,その中で奇抜さを求めます. これは工業製品などでもよく見られる特徴ですね. コンシューマゲーム機などは制約が多いプラットフォームで, 奇抜な作品を作る必要があるので,典型的な例かもしれません. しかしこれは他の国のクリエイションの現場ではなかなか理解できません. ちょうどそうですね,「高校生の制服カスタマイズ」などを理解させるのに似ています.
まあこういったことが,インタラクションデザインや, アートワーク,プログラミングなどそれぞれの分野で山ほどあります. 例えばツールを作るのに必死になるタイプ, 技術的美しさをつい優先して,見た目がダサいものを許容してしまうタイプ,etc….
国際間の共同制作など,その違いにおいて, 「違う」ということにストレスを感じ始めるとお互いに辛くなります. お互いの違い,具体的にはそれを「方法論」として理解して, その特性を信頼・尊敬しつつ,要所要所で忌憚なきディスカッションをして 重要なポイントを共有していくのが大事だと思います.
まあ実際の修羅場に突入すると「方法論もなにもあったものじゃない」という状態になってしまうわけですが,こういうときに役に立つのが方法論の方法論たるところで.
まあがんばります.