アニー賞「ウォレスとグルミット」

アニメーションのアカデミー賞「アニー賞」が発表になりましたね。 http://www.annieawards.org/

http://annieawards.com/33rdannieawardwinners.htm

「ウォレスとグルミット」が、チキンリトル、コープスブライド、ハウル、マダガスカルを抜いて大賞を受賞しました。

日本語の関連記事はこちら。 http://chuspo.chunichi.co.jp/00/hou/20060206/spon__hou___005.shtml

いや、たしかにいい映画でしたよ「ウォレスとグルミット」。 ヨーロッパに住んでいると余計に、風景などに親しみがわくからかもしれませんが…。 CG的には激しく高度なものが使われているわけではありません。 たしかにブラーとかはすごいのですが…。 小憎らしくも可愛らしいウサギたちが宙を舞うシーンは、エンディングロールで再度見れますので、CG関係者は最後まで見ましょう。

というかまるでSIGGRAPHでスタンフォードウサギのデモを見ているような感じですが。

日本では「野菜畑で大ピンチ」という副題で3/18から公開です。

http://www.wandg.jp/teaser/index.html

英仏版のように、中の新聞や看板まで言語を書きかえるわけではないでしょうから、 いささか遅すぎる日本語版の公開のような気もしないでもないですが、 アニー賞の結果がこれですから、興行収入的には大成功の戦略ですね。

補足返信

ウォレスとグルミットのアードマンスタジオは30年来のコマ撮り人形アニメの英国スタジオですが、いわゆる3DCG技術は「並みの」ものです。 撮影した人形を後処理するポストプロダクション処理については、かなりの技術があります。最近ではフルデジタル化が進んでおり、最新作「野菜畑で大ピンチ」(…違和感あるなこの邦題…)は、フィルムを全く使っていないそうです。なおつい最近の話ですが、過去のアードマンのオリジナルフィルムは火災があり一部消失してしまいました。

アードマンがCG技術をポストエフェクトに使い始めたのは「チキンラン」あたりで、具体的には最後のシーンのブランコが「止め絵で見てもブラーしている」というところが挙げられます。 これは、もちろんフルアナログでも力技で出来ないことはないのですが、再現性に乏しく、連続したアニメーションとしても、ブラー量の制御としても非常に難しいのです。この技術に関してはSIGGRAPHにショートペーパーが採用されていたと思います。

ナイトメアについてはそこまで詳しくはありませんが、ハリウッドはデジタル化の真っ最中でしたので、全くデジタル技術が使われていないということはないと思います(エンディングスタッフロールを確認するといいと思います)。 ナイトメアのアニメーションでは、キャラクターはもちろん、煙の表現やゼロ(犬)のアニメーションが個人的には好きです。ウジ虫のアニメーションはすごいですが、これは力技ですね。

ウォレスとグルミット、アードマンに感じる個人的な「すごいところ」はマテリアルなのではないかと思います。 例えばこの壁紙に使われているシーンですが、乾杯をしてこぼれるカフェオレの液体感、つや具合に戦慄すら覚えます。

「VMware GSX Server」無料化?

世の中には「役に立ってるバーチャル技術」と「役に立たないバーチャル技術」というものがあるのだが、今日は前者のほうの話。

「VMWare」というソフトウェアをご存知だろうか?

バーチャルマシン技術といわれる種類のもので、コンピュータの中に、ソフトウェア的にエミュレートしたハードウェア、簡単に言えばPCが丸ごと1台構築できてしまう。 LinuxやWindowsのOSのCDROMを入れてあげれば、あたらしいOSの環境もインストールできるし、ソフトウェア上でできているので、新しく筐体を買ってきたり、ハードディスクを詰め替えたり…というようなことも必要ない。また親PCが故障しない限り、故障とも縁がない。

最初はCPUとメモリとハードディスクとネットワークぐらいしか機能がなかったのだが、4.x以降はサウンドやUSBなども全く問題なく利用できるようになっている。

さらに、ソフトウェアだからこそできる機能としては、ハードディスクを終了時に、電源投入前や、スナップショットという「ある段階」に戻したりする機能がある。 これは、ソフトウェア開発&テストの人々には非常にためになる機能である。VMWareに出会う前は、たとえばインストーラーの挙動を確認するために、何度もOSを入れ替えたりしていた。昔、某ゲーム企業に勤めていたときは、毎月のようにテスト用PCを購入していた時期もあったので、その労力と、コストパフォーマンスたるや驚異的だ。

もちろん親になるコンピュータの性能がよければ複数台のバーチャルマシンを管理することが出来る。これが「VMware GSX Server」。まるでバイクのような名前だが、2-3台のPCしか同時に稼動できない、小規模利用の「VMWare Workstation」が3万程度であり、「GSX Server」は30万ちかくする非常に高額なソフトウェアであったため(といってもPCハードを何台も買うことを考えれば安いのだが)、「無料化」なんて話が出てくると、本当にびっくりする。

CNETのニュースより http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000047623,20095776,00.htm VMWare本家には2/6現在まだ情報はない。 http://www.vmware.com/

まあ解釈としては、VMWareは既に大手業務用ストレージメーカーのEMCに買収されているので、基本となる製品のビジネスはほぼ収束し始めてきているのではないだろうか。 VMWareは使えば使うほど巨大なハードディスクを必要とするので、EMCのビジネスとしては、VMWareで稼がなくてもストレージで儲かればそれでいい、という考え方もできる(EMCのストレージなんてプロ用機材は買ったことないが)。

それに、高くて試しようがなかった「GSX Server」に対して「Workstation」はこれからも需要はあると思う。 日本の代理店も複数あるし、無料の試用ライセンスやアカデミックライセンスもあるので、興味のある人はぜひお試しあれ。


「滑り台の順番」は守る必要があるのかどうか-社会性の獲得過程における父親の役割に関する考察と補足

元ネタはmixiコミュのこちら。

お父さんの子育てコミュ - 横ハイリされたときに何と言っていいか...

だいぶ話的に収束してきてはいると思うのですが、 獅子王さんのコメントに若干同意するところがあるので補足します。

沖縄からですが… 当地では並ぶという習慣があまりないので、横ハイリされちゃう場合はしばしばありますよ。

私自身はフランスに住んでいて、そこで日本人の息子を育てているわけなのですが、フランスの教育にはここ十数年「戦わない・争わない・比較しない」という習慣が身についているようで、幼稚園に試験もありませんし、かけっこや競争のようなものもありません。

先を争って滑り台をすべるとか、整列しないほうが悪い、というのはかなり土地に依存した状況なのではないかと感じます。 先日、息子と日本に帰った際、都会のデパートの玩具店にある滑り台であそばせてみましたが、日本の子供の遊ぶペースは明らかにフランスの子供よりも高速です。急ぎすぎな気がします。 あまりに周囲が急ぎすぎるので、階段を上る過程を楽しんだり、という状況ではなくなってしまいます。

冷静に見ると、一つの滑り台に対する子供の数が違いすぎるようにも思います。安全に快適に遊ぶためには、1つの滑り台に対して、大きさと年齢にもよりますがせいぜい、2-3組の子供が適正なのではないかと思います。

さて規則についてですが、フランスの教育環境にも規則はたくさんあります。親がわたされる連絡ノートには、それこそ日本の幼稚園よりも細かい規則がたくさん書かれています。またそれを必ずしも厳密に守らない親もたくさんいます。

たとえば、幼稚園の前の道路は「そもそも車両進入禁止なので事故があっても保険は適用されない」という記述があります。 しかし、便宜上、多くの親御さんが学校の前まで車で乗り付けてきます。朝の忙しい時期で、その後会社に行く人も多いわけですから、かなりあわてていて危険です。うちは車がないので歩いて通わせているわけですが、息子は友達の姿など見えると駆け出しますので、ちょっと緊張感があります。

だからといって守らない親を指差して「あいつは悪いやつだ」と教えてもしょうがないです。 クラスに入ればそれは息子の友達の親ですし、運転者からすれば、自己責任においてルールを犯しているので、逆に安全性については気を使っているという主張です。またそもそも細かい規則をキリキリ守るというストレスを指摘されます。似たようなことは「歩行者が信号を守るか」ということにも挙げられます。歩行者が赤信号でも普通に道路を横断する国では、車は「あの歩行者は渡るかもしれない」とおもって運転するわけです。

まあ、こういうことはお国柄とか、その土地の環境によってずいぶん違うものだということを言いたいのです。

余談ですが、日本の男の子は仮面ライダーやウルトラマンのおかげか、時に勧善懲悪の倫理観が過ぎるように感じます。だからといって悪いことをする人が減るわけでもないのがふしぎなところですが。

一生同じ土地、さらに同じような人々に囲まれて生きるのであれば、特に問題はないと思いますが、厳密なルールの尊守を前提とする社会と、そうではない社会を行き来するような家庭は日本国内でもよくあるとおもいます(例えば休暇のときは地方の実家を訪問するとか)。

社会性を身につけていく過程で、逆に「順番を守れない」など、異文化の風習を目の当たりにして「私と違う」「私の親と違う」といって、ひとりストレスをかみ締めている子供を見かけると、ちょっとかわいそうになることがあります。

真面目で素直な子供が小学校の2年生ぐらいから突然、「友達と仲良く遊ぶ」という簡単なルールだけで、親が知らないうちに、グイグイと悪いことの魅力に引き込まれていく様なども見かけることがあります。

ルールを守ることは大切ですし、家庭内でしか出来ない教育も多々あります。 しかし、「自分の与えられた常識が、すべての常識ではない」ということも、知っていなければ、効率よく快適に遊ぶことは出来ても、本当に一緒に遊ぶ友達のことを理解したことにはならないでしょう。 ちなみにこれは大人の社会でも全く同じことがいえるでしょう。社会性を身につけるとは、必ずしも、共同で軍隊のような規律正しい行動が行なえること、だけではないはずです。パパ・ママ・わたし、以外のコミュニケーションの関係が、さまざまな人やクラスに繋がっていく理解でもあるので、「滑り台で遊ぶ子供は全部自分と同じ」と思いこむのも、それに裏切られながら社会の多様性を学ぶのも、また学習の過程なのではないかと思います。

まあ特殊な例かもしれませんが、付記させていただきました。


飯ログ:コロンボ・デュ・シポラタ(colombo du chipolatas) -カレー風味肉じゃが

久々の飯ログですが、今回はル・クルーゼのココット鍋を使ったメニューを紹介しようと思います。

その名も「コロンボ」です。 コロンボとは、南仏滞在時代にBio屋(有機農法商品専門店、この店はレストランもやっていた)に教わったメニューです。

いろいろ調べてみたのですが、「コロンボ」とは南米コロンビアのことではなく、スリランカの旧セイロンのことではないかと思います。 しかし日本語で「カレー」について調べても「これぞカレー」という情報が出てこないように、調べてみても「これぞコロンボ」というレシピは中々出てきません。 土地の名前がついた料理に良くあることですが、これはおそらく「スリランカカレー風」という感じのアレンジ料理なのではないかと思います。

出来上がったものから察するにコロンボとは… ・南仏プロバンス風の煮物のカレー味アレンジ ・汁は少なめ ・ジャガイモ、サヤインゲン ・トマトやブロッコリーなどが入ることもある ・カレーライスのように御飯にかけて食べたりはしない ・肉が入る場合はかなり煮込んである …というようなものではないかと推測するわけです(間違ってたらすみません)。

肉も何肉かは決まっていないようです、例えば「鶏のコロンボ」を発見しました(英語可)。

http://www.recettes-et-terroirs.com/recette_detail-8-825.html

ここでも南仏のスパイスを使っているようですし「冷蔵庫で12時間寝かせる」なんて記述もあります。

日本の奥様の場合、まあそんなに気を張って作ることもないと思います。 おそらくイメージするといいのは「醤油とみりんを全く使わずに、少量のカレー粉とハーブで煮た肉じゃが」だと考えれば楽なのではないでしょうか。

バリエーションが多すぎて「正しいレシピが判らない」のも肉じゃがと共通ですね。 なお今回も、合成調味料不使用です。

【材料】 4人前
・じゃがいも 小6個
・タマネギ 小4個
・ニンジン 小2本
・サヤインゲン 10さや程度
・肉 お好みで
 別に何でもいい、なくてもいいかも。今回はシポラタ・ソーセージ(chipolatas,イタリア風の羊の腸に豚肉を詰めたもの、ちょっとしょっぱい)を使っていますので「colombo du chipolatas」としました。鶏肉や豚肉、野菜のみ、お好みでどうぞ。
・お湯 1.2L
・オリーブオイル 少々
・塩 少々
・カレー粉 10g
・プロバンス風調味料 5g
 これは普通に手に入らないと思います。「エルブ・ド・プロバンス(プロバンス風ハーブ)」にニンニク粉が入ったものです。
 結局、他のハーブもお好みで足しますので、以下簡単に構成を説明しておきます。なお、南仏のマルシェで60gで2Euroという値段で購入しています。パリではもっと高いですね。

provancal.jpg

【プロバンス風調味料(Assaisonnement Provencal)】
以下の乾燥ハーブを粉砕して混ぜ合わせます。
・ローズマリー(romarin)
・バジル(basilic)
・タイム(thym)
・マジョーラム/マヨラナ(marjolaine)
 シソ科の多年草。地中海原産、肉料理向け。 
・トウバナ(sarriette)
 塔花。シソ科の多年草。
・ニンニク(ail)
 これはスーパーの調味料売り場で手に入るはず

…まあ厳密にプロバンスにする必要はないです。 ローズマリーと、バジルを多めに用意すればいいでしょう。

【作り方】

1.野菜を準備。

 タマネギを薄切りに。ジャガイモとニンジンは大きめに切ったほうがいいでしょう。サヤインゲンはへたをとって、3-4cm程度に切ります。 

2.ココット鍋にオリーブオイルを引いて、熱する。その後タマネギを炒る。

 牛肉などを使う場合はここで入れるべきでしょう。

3.まだ青いタマネギの上に、ジャガイモとニンジンを入れて蓋をする。

 焦げないか心配になるがすぐにはフタをあけない。重いココット鍋のふたが、野菜から出る水蒸気と香りとうまみを閉じ込めてくれます。

4.タマネギの香りがしたころ(フタをして5分ぐらい)にふたを開け、インゲン、ハーブとカレー粉を振り入れて、お湯を注ぎます!  じゅわーっ!!と大きな泡を立てて、タマネギのスープが全体にしみわたっていきます。

5.しばらくフタを空けたまま、中火で煮込みます。

 今回使った肉はソーセージなので、このタイミングで入れます。

6.肉に火が通ったら、火を止めて、フタをして半日置きます。

 試していないのでなんともいえませんが、この工程は少量のカレー粉と野菜で、うまみを引き出しているのではないかと考えます。必須ではないのですが、途中で味見したところ「1日目のカレー」の味がしました。

7.浮いているハーブ、油などをとります

8.最後に、ジャガイモの頭が出るぐらいまでスープを煮詰めます

 ココット鍋を使うテクニックとして「フタを開けて煮込む」という技があると思います。厚手のホーロー鍋なので、あっという間に熟成されたスープが煮込まれていきます。ただし焦げ付き注意。

colombo0.jpg

colombo.jpg

【食べ方】

 正しい食べ方は良くわかりませんが、ナイフとフォークで食べます。パンにスープをつけて食べると旨いです。なお、世の中にはこの行為をシチューでやって離婚騒ぎになってる人もいるみたいですが、フランス料理的にもマナー違反ではないです。

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/reader/200412/2004120800174.htm

 カレーライスのように御飯にかけたりするのも旨いと思います。フランス人はあまりやらないとおもいますが…。  今回はシポラタソーセージを使っていますが、別に切ってダシをとったわけではないので、普通のソーセージや牛肉でも旨いと思います。イスラムの人には悪いんですが、個人的には豚肉が旨いと思います。

【補足】 ハーブたっぷり料理について

私も昔はハーブたっぷりが苦手だったんですが,いちど南仏味に慣れてしまうと 「ハーブが入ってないと料理にならない」という感じですね。 化学味にたよってしまうと蕁麻疹が出るし…。 (南仏人はそれこそもう、ものすごい勢いで入れる)

でも人によってちゃんとハーブをすくったり、袋に入れ使うので私のようにはならなかったりもしますね。 これは「ポプリ(pot-pourri)」という料理で、もちろん香水のポプリとおなじポプリの意味です。

ちなみにハーブやカレー粉の入れず、牛肉で作るこの手の煮物のことを「ポトフ(pot-au-feu)」、

つまり『かまどの中の鍋』というわけです。

これも今度挑戦してみようかしら。