近年に国立大学にかかわったことがある人であれば「TLO」など大学発ベンチャー、大学発特許申請などの話題に触れることも多かったと思う。
国立大学は先生とはいえ公務員なので副業は禁止されている。
しかし、この日本式プロパテント政策のおかげで大学の教授と助教授はベンチャービジネスの立ち上げに関与できるということだ。
これは結構恐ろしいことで、
簡単に言えば、いままで大学教授しかしたことがない先生が、名刺2枚持って、下々の民が理解できないような高尚な研究を市場に売り込める、ということだ。
しかもその研究費はもとはといえば税金。大学も法人化されるけど、国立大学というのはやはりもとは税金でできた環境なのだ。
もちろん企業づとめしたり、ビジネスを学んでから教職についている人もいないわけではないから一概に否定できたものではないけれど、いくら研究成果を世に広めるためとはいえ、安定して高い給与と地位がある大学教授にそんなベンチャーなんて務まるんだろうか?
これも一概には言えたことではないんだが、多くの大学発ベンチャー支援の仕組みというのは、博士学生などを「開発代表者」つまり、実際の推進力と想定している場合が多い。博士学生が企画を書き、プログラムを書き、プレゼンし、営業し、利益を得る。…でその上がりを経営者である大学教授とTLOが掠め取る。
たとえばJST(科学技術振興機構)の大学発ベンチャー創出推進プログラムはこんなかんじ。
http://www.jst.go.jp/giten/saiteki/uventure/
もしかして大学法人化のその先を見据えた「天下りシステム」なんじゃないかと思えるふしもないことはない。
もちろんバイオを中心に成果が出てなくもない大学発ベンチャーもあるんだが、情報、ロボティクスなどの分野では、あまりいい話を聞かない(小規模にはあるけれど)。
いろんな先生の自慢話を今まで聞いてきたが、たぶん、原因はそれ自身にあるんじゃないかな、と最近は思う。つまり、先生方は本気でベンチャー起こす必要なんかないし、本気にそんなことを考えているなら、二足のわらじはいている場合じゃないし、そもそも、他人に頭下げてでも分かってもらおうとか、買ってもらおうとかそういう感覚が全然足らない。そのくせ、一般市民には社長面、学生には先生面する。
まあそんなふうに志は低いのに頭は高い先生方の下で、黙々と開発したり営業したり、場合によっては借金までかぶったりする博士の学生は、正直可哀想だと思う。まあ大体の場合、その辺も全部織り込み済みな同じ狢なんだろうけど。
なお、フランスの国立大学の先生方も似たような感じ。
彼らも特別法で企業体をつくれる。
でも儲かってるという話は聞いたことがない。
ただフランスの場合は、国からの研究費はほとんど期待できないので、原資は税金ではないのと、企業からの研究費をとってプロジェクト単位で仕事をするので、社会的に浸透しているという点は違うと思う。
自分もどちらかというと喰わせてもらっている立場なので、
一概に否定できたものではないんだが、でもやっぱり上手くいっても行かなくても、この話題については一般市民の納得がいかない仕組みが多いと思う。
ぜひ、大学発、特に国立大学発のベンチャーを起こす人は、オープンソースとか人類の共有知に寄与しながら、かつ、市場を創出するような革新的挑戦をして欲しいと思う。
少なくとも単に税金使って、現市場を荒らすようなベンチャーはやめていただきたいのだ。
★この話題はTBステーションから頂きました。
http://ameblo.jp/trackback-entrepreneur/entry-10002769014.html