【このBlogは訳あって人名をカタカナで書きます、おして知るべし】
ちょっと前の土曜日の話になるんだが、上司のシモンの息子、ユーゴ(8歳)を1日預かることになった。
9月から職場が変わるので引越しして新しいうちを探すためなのであるが。
なおユーゴは既に5月にシモンの家で会っており、息子と一緒に遊んでもらったのであるが、そこでの印象は、まあ日本語で言うと
「ひょうきんな少年」
とでも言ったところ。
とにかく落ち着きがないのである。
ちなみに日本の子供だったらいくらひょうきんでも、フランス語しか使えないおっさんの世話になるとなったら、ちょっと気ぐらい使うだろう。
しかしそういうところはまったくない。
あとはとってもゲーム好き。
こんな職業柄、フランスでは珍しく親もゲーム許可なのであるが、親いわく「ゲームと同じだけ外で遊ぶ」というルールがあるらしい。
でも「剣神ドラゴンクエスト」は見事にはまっていた。
彼の要らないおもちゃを代わりに息子に貸して、数週間借りていったぐらいである。
それはそうと、息子とユーゴのツーショット。
息子は携帯に夢中だな。
シモンが不動産探しに出かけて10分もしないころ、ユーゴが親に借りた携帯をもってやってきた。
「シモンが話あるって」というので聞いてみると、
『akihiko、ユーゴが帰りたいと泣いているんだ、TVゲーム出してやってくれないか?』
…うーむ、さっきまでいい顔で遊んでたのは親へのカモフラージュか!?
ってゆーか息子の教育上、家にはTVゲーム置いてないんだよね。
ドラえもんじゃあるまいし。PS2とかは日本においてきたし、
給料そんなにもらってないからDSやPSPも買えないし。
研究費で資料として買えればいいんだが、それもないしな。
(あんたの親父にお願いしたいよ、と心の中でつぶやきつつ)
とっておきの実験用で私費購入したメガドライブのライセンス版を引っ張り出してみる。
電池を入れてTVにつなぐだけ。ぽちっとな。
ユーゴ「メガドライブ!メガドライブ!」
akihiko「そーか、フランスはGENESISじゃないんだな…」
とかマニアックトークしている間にも、勝手にコントローラを奪い「戦斧 GOLDENAXE」をはじめる。
お、わかってるのか、ユーゴよ、若いのにいいゲームを選ぶなあ。
…と思ってたらよりによって一番使いづらい男戦士を選択。
メッセージ(英語)なんて例によって読んでない。
いきなり魔法使いきり、最初のザコ2名にボコボコにやられる。
ゲームオーバーか、とおもいきや
ユーゴ「akihiko、他のゲームないの!?」
…早!もう飽きた…!?
akihiko「いや、これはね、こうやるんだよ」
…と初心者でも使いやすく奥深いキャラ「爺」でサクサク進めてみる。
ボスも数人、軽く倒して見所満載。
おっとっと、これ以上解いたら、面白くなくなるかな、
というところでさっさと終わらせ、
akihiko「やってみな」 (キラーン*)
ユーゴ「わかった!」
爺で始めるユーゴ…が…
「akihiko、他のゲームないの!?」
どうやら、自分がうまくいかないと、飽きるらしい。
ってゆーか、学んでないだろう、きみ。
しかたないので、同梱されている「獣王記」をやらせてみる。
これまた微妙なタイトルなのであまりお勧めしないんだが、
やはり2面あたりで飽きる。
つづいて、フリッキーも、ソニックも、1面で飽きる。
さらに「ぷよぷよ」にいたっては、頭使う(ってほど使わないけど)とわかった瞬間に飽きる。
まさに「ゲーム脳」である。
学習障害まで確認できるこんなに顕著な例は
なかなか日本でもお目にかかれない。
いやいや、上司の息子にそんなLDだなんて。
とりあえず昼食にしてみる。
ユーゴ「パスタだ!わーい、akihiko!ソースは抜きにしてね!」
akihiko「はあ?」
嫁さんせっかくパスタソースから作ってるんですけど。
ユーゴ「ソースなしで食べたい…」
ああもう、勝手にしなさい。
塩がほしいというので塩でパスタを食べているんだが、1/3も食べたころだろうか。
ユーゴ「akihiko、もう食べなくてもいい?」
ほら飽きた。…てゆーか、塩で食べてたら飽きるのも早かろう。
この前家にいったときは、もうちょっといい子で食べてたがなあ。さらに…
ユーゴ「akihiko!patが食べたい!」
akihiko「pat?いまパスタくってんじゃん」(フランス語でパスタ=pates)
ユーゴ「えーと、pat!pat!」といっているので紙に書かせてみるが、
どうやら、自分がほしいもののスペルがわからんらしい。
辞書で引いたが出てこない。
というより、家ではこの通称PATで通じてしまっているらしい。
8歳から9歳になろうとしているのに、恐ろしい教育だ。大学教授なのに。
ところでその間、息子はお気に入りのボールは蹴って遊ばれるし、
一つ一つ丁寧に遊ぶのが信条なおもちゃたちを、とっては飽きとっては飽きされたうえに、
全力で走り回るユーゴを笑いながら追いかけて、追いつかず、果てて…
…床で泣いていた。
かわいそうな息子よ。
そういや、うちの兄もひどかったが、ここまでひどくなかったな。
さて、午後はCLEPというLudotheque(ルドテック)に連れて行くことにした。
ルドテックとは、簡単に言えば「おもちゃの図書館」であり、フランス特有の施設でもある。
この街はフランスでも歴史上3番目にできたルドテックがあり、私が何でこんな辺鄙なフランスの都市で新しいエンタテイメントを研究しているかというと、こういう地味でそれでいて大事な遊びがこの街には溢れているからなのだ。
…という話はさておいて…
ここには一般のご家庭ではとてもおけないような巨大なおもちゃなどもある。
全力で遊んでいるの図。
ちなみにユーゴは見事にここに携帯なくしおった。
で、息子が2歳半らしく「体を使って遊ぶ」に興じているころ、
ユーゴはさっさと飽きてTVゲームコーナーに行く。
ゲームキューブとドリームキャストが大型TVで30分まで連続で遊べる。
ソフトも無料で借りれる。
以前のCLEPにインタビュー調査したこともあるが、基本的にスポーツゲームが人気。「マリオパーティ5」、「マリオカートDoubleDash」あとは「Waverace」など。リアルすぎるものは親たちの社会的同意が得られないことが多いという。
たとえば「TonnyHalk」のスケボーものなど、リアルな街中でスケボー使って飛びまくるゲームであるが、どうも子供は現実とゲームの境目がついてないらしく、ゲームが終わると、そこらで危険なジャンプをしまくって非常に危険らしい。
考えるまでもなく、当たり前のことなんだが、それを当たり前に問題としているCLEPはえらい。
あとは音の出る電子おもちゃなども、子供はクラシックなものと同じように遊ぶんだが、大人たちには不評。音が鳴り続けて、ストレスに感じる親が多いらしい。これは身近にも電池抜いたり改造してスイッチ切ったりしている例を見ているので、頷ける。…が問題なのは、「電子おもちゃじゃないものが買えないこと」。
FisherPriceなどがいい例なのだが、ママゴト玩具も電子式でないものは既に製品でなくなってしまっている。CLEPにおいて、価格は問題ではない。CLEPは利用している親からの年会費で共同購入しているような形をとっているので、価格については問題ではなく、実際には耐久性や親の理解が得られるかどうか、がもっとも大事なのだ。
なお、マニア垂涎なのであるが、ボードゲームコーナーは充実している。
新旧含めて3-400はあるだろう。日本ではボードゲームなんて輸入品か人生ゲームしか売ってないが、ヨーロッパにはモナコやフランスを中心に根強い人気であり、JEUX(game)といえばボードゲームである。カンヌ映画祭のようにゲームのアカデミー賞もある。
CLEPのディレクトレス(管理職の女性)に教えてもらいながら、新しいパーティパズルゲームを学んでみる。
美しくて、頭を使う。その辺の親子と対戦したが、強い!お互い初挑戦でも、ゲーム(ストラテジー)脳が鍛えられていると、こうも違う。美しい笑顔で、プレイヤー同士感謝を述べて終わり。
そのころ、ユーゴはどうしていたかというと。
ボードゲームは頭を使うのがわかった瞬間に「ダメ」。
ゲームキューブでマリオパーティをやるというので、つきあってみたが、説明はフランス語で出ていても読まないし、ただAボタンを連打して映像と音を見ているだけ。ミニゲームではワラワラ動いているだけ。
なんとなくパートナーである私が手伝っているのでゲームは進行するが、うまく行っていても3ターンぐらいで飽きる。
なんだろうな、もうちょっと集中して遊べば面白いんだがな。
おじさんなんて「フリッキー」だけで1時間は遊べるぞ。
(このスピード感と得点のバブル具合がたまらない)
おじさんなんて「戦斧」だけで3週は遊べるぞ。
(各キャラ1週は解く訳ね)
おじさんなんて「ぷよぷよ」解く為に1時間半は遊べるぞ。
(13連鎖とまではいかないけど、ちゃんと連鎖も組めるぞ!)
まあそれぐらいの集中力がないとですね、
まずは何やってもうまくいかないわけですよ。
ゲーム脳はゲームに問題があるんじゃなくて「ゲームのさせ方」に問題があるんだよなあ。