新生銀行といえば旧長銀が外資に買われて大変貌を遂げた銀行です。 ATM使用料は無料だし、国内振込手数料も(最近では制限がありますが)無料になります。 オンラインシステムはシティバンクに良く似ており、比較的使いやすいシステムです。 旧来の長期債に加えて、外貨預金や投資信託、株式も扱えて、ネット銀行のよさと貯蓄銀行のよさを兼ね備えた銀行といえます。 ★どことなくシティバンクに似ているのは、立ち上げ時に多くのリソースがシティバンク系から移動したものと思われます(推測)。 しかし、新生銀行は「ちょっと気の置けない銀行」です。 例の株式公開騒動も記憶に新しいところです。税金で処理した不良資産をもとに、IPO利益を得るなんて美味しすぎます(その利益が日本国民に返ってくるなら、うれしい話なんですが)。 シティバンクも先日、深刻な不祥事や監督庁の大鉈をふるわれたところですし、もとから格付けが高い銀行ではありません。そもそも盲目的に信用してはいけないのです。

新生銀行も、財務体質、保有口座数は優良ですが、一般投資家からみれば、以下のような資金流動性における不利益があるのでまとめてみました。 まず、新生銀行での預金における方針は以下のようであると思われます。 ・流動性資産はネット銀行とATM無料で回転性を高める ・口座開設も店舗不要、振込みで可能 ・定期預金、などの貯蓄についてはオンラインで開設可能、解約は電話のみ 簡単に言えば「預けるは易し、解約は難し」です。 流動性資産については、特にコメントはありません。便利です。 給与の受け取り口座などにしておくと便利かもしれないですね。 しかし、貯蓄に関しては、大変です。 仮に1000円の定期預金など作ったとしましょう。 電話して解約しない限り、利息は何年経ってもゼロ円です。しかも自動継続です。 他の長期債のような商品も同様です。 つまり、流動性資産でない貯蓄に関しては相変わらず長銀スタイルなのです(買いやすいだけ)。 さらに、外貨預金については疑問が多いです。 新生銀行で外貨預金を作るということは、コンピュータ上で見えない債権を買っているのと代わりません。 特に他銀行に比べて利息やレートが良いわけではありませんし、なんといっても(シティバンク等と比べると)以下のようなデメリットがあります。 ・外貨で出金できない  現金、トラベラーズチェックとも、窓口であっても外貨で出金できません。  シティバンクでは外貨預金に失敗した場合、無理に円転(円に買い戻して損を確定させること)しなくても、海外旅行などの資金に当てることが出来ます。これによって、海外旅行でのクレジットカードなどの高い為替レートを使う必要がなく、間接的にコスト縮小に寄与できます。  しかし、これが出来ないということは、結局のところ、円に換算するしかない、ということです。  もっと突っ込んで言えば、為替手数料は行きも帰りも、新生銀行の懐ということです。 ・送金は窓口のみ  これは日本だけに銀行口座をもっている人には関係ない話題ですが、現地通貨建てで海外の銀行口座に送金することで、上記のような為替変動リスクを軽減することが出来ます。手数料が4000円でできる、と書いてありますが、送金は窓口でしか出来ません。 ・現地通貨引き出しの罠  これはシティバンクなどのCIRRUS、PLUSなどのATMを使った現地通貨引き出しで共通して言えることですが、実際に海外のATMを使って現地の通貨を引き出すことは出来ますが、これは「VISAの指定したレートに+4%の手数料を上乗せ」したレートになります。つまりT/Cなどに比べて割高になる可能性が高いのです。VISAを使って海外でショッピングした経験がある人なら分かると思いますが「買い物した瞬間」でもなく「月末レート」でもなく、「指定したレート」です。つまりとっても不利。そもそも外貨があっても、円預金から引き出されるので、円高でも円安でも損なレートで外貨を買っていることになります。 ・解約できない  基本的に外貨建て定期預金は解約できません。 ・預金を担保にした借り入れが出来ない  シティバンクには「マルチマネークレジット」という預金を担保にした借り入れが出来ます(預金高の80%程度まで借り入れできる)。このような仕組み郵便貯金や都市銀にもあり、金利も2-3%と安いので、定期預金を切り崩さずに流動性を維持できるので重要です。しかし新生銀行にはそのような仕組みはありません。いったん定期を作ったら、金利がゼロだろうとなんだろうと「自動継続をやめます」と電話で言わない限り、ずっと預金は新生銀行のものです。 まとめて言えば、新生銀行で外貨預金しても、外国の通貨としては全く「流通性がない通貨」なので、ただその名前がついているだけの解約しづらい長期定期預金、もしくは外国債の一種、と考えた方がいいでしょう。

ちなみにこの手の「仕様」は公式HPにはほとんど書いてありません。FAQに少しありますが、基本的には約款を読むか、口座作成後にカスタマーサポートに聞くしかないのです。

そのほうが資産形成上は良いこともあります。流動性が高いということは、簡単に使ってしまうことができるということでもありますので。 ちなみに、ちょっと電卓を叩いてみれば分かりますが、100万円程度の資産では、新生銀行で外貨預金しても行き帰りの為替手数料で、預金利息は消えてしまいます(シティバンク等でも同様)。ほとんどの通貨において、2%以上の利息をつけなければ円転すると元本が割れる仕組みです。レアケースとしては為替相場が大きく変動して、プラスになるというケースですが、円ドルで4円以上の動きを見切るのは、素人では、なかなかできることではありません。 しかし、これから夏、海外バカンスに出かけるために新生銀行でボーナスを運用しようとしているひとは要注意です。まだ、安いユーロや円ドルなどをシティバンク等で買ってT/Cに交換しているほうが、いいかもしれません。 今回は、特に人気の在る「新生銀行」を例にとって紹介してみましたが、都市銀行や地方銀行の「外貨建て預金」も似たような「縛り」があると思われます。もし外貨預金に興味がある人は、ぜひ上記のような「仕様」を窓口やフリーダイヤルであらかじめ聞いてみると良いでしょう。

また上記のような縛りも、顧客が全体的に賢くなることで、将来の「銀行の売り」として改善されるかもしれませんので、期待してみたいところです。