世界のスタートアップコンテストに挑戦するときのメモ

フランス・パリで開催されているワールドワイド・スタートアップコンテスト”Hello Tomorrow Global Summit”に参加しております。

World Augmented Displayが世界Top500に選ばれたので参加権を得たのですが、なんだか悔しい思いもありますので、学んだことを以下まとめておきます。イベントの様子はこちらの#HTSummit でどうぞ。

  1. 「目立とう精神」の連中しかいないことを忘れない
  2. デモは禁止だと言われても持っていくべき
  3. 情報がないことに腹を立てない
  4. できるだけ握手しよう
  5. 楽しもう

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「目立とう精神」の連中しかいないことを忘れない

言い換えれば、「日本は目立とう精神なんてもっていると危険人物と思われる社会」であると認識すべきです。欧米のスタートアップの世界は、普通の人よりもさらに目立とう精神が強い人々です。しかも日本の「目立とう精神」の人は実力が伴っていないことが多いので、日本では聞いていると「こんなオレオレプレゼンをしているけれど、実は中身なんてないんだろう?」って気持ちが芽生えてくるプレゼンも多いのですが、それは世界のステージにおいては間違いですね。ここで出会う人々は確率的に、人間的にもイイやつで、実力が伴っていることが多いです。そりゃそうですね、「目立とう精神の平均値が高い文化圏」において、アントレプレナーをするということは「ちょっとぐらい目立とう」という実力のない小兵では成立しないのですね。実力が伴っていて、かつイイやつである必要がある。

一方で、日本社会の中ではちょっと目立つと叩かれますし、「自分は目立とう精神なんて持ってませんよアハハハハハ」ぐらいの安全性を開示しなければ、コミュニティから攻撃されるという自己免疫性を持っています。「そんなの大丈夫さ、おれは自己プロデュース能力が高い!」と思っている人もいると思いますが、そう考えることがそもそも自意識の相対的なフィルタにごまかされていることの証拠です。

もっと具体的な話をすれば、英語力です。ほとんどの日本人が「人々に信頼される英語プレゼン能力」を持っていません。もちろん北米で育ち、北米英語の世界で能力を持っている人はいると思いますが、ヨーロッパのカンファレンスでは北米英語は必ずしもメイン言語ではありません。世界各国の人々に聞きやすい発音、スピード、単語、コンテクストを選び、国際スタンダードレベルのプレゼンテーションのストラテジーとデリバリー、ロジックを意識する必要があります。それはTEDのような場所でのPitchにおいて、近年急速に高度化しています。

誤解を恐れず真逆の例を挙げると、「オレオレ俺だよ!」という日本語が怪しいと感じるか、信頼されるか?が、日本語の中でも高度に発達して、日々お年寄りを窮地に陥れていることと同じです。保守的で、疑い深いお年寄りを完全に虜にして、納得してお金を出させるような日本語が「高度な日本語」であれば、「国際プレゼン」での英語も、そのように高度に進化している、ということです。

デモは禁止だと言われても持っていくべき

事務局からの連絡には「デモをする場所はありません、持ってこないでください」と明確に書かれていますが、それを素直に聞いて持ってこないのが日本人ではないかなと思います。そのような環境であればなおさら、ハンズオンのデモの効果は大きいのです。電源もネットも場所も要らないデモを用意しましょう。「そんなの無理だ!」というプロダクトの場合はフライヤーやビデオぐらいは用意しましょう。なお、ネットもなければYouTubeも見せられません。携帯にVLCをインストールして、ビデオをコピーしていくぐらいの準備は欲しいと思います。

もしそんなデモもビデオも用意できないとしても、プロダクトや会社のTシャツぐらいは作って着ていくべきだと思います。物言わず座っていても宣伝になりますし、有名な講演者の聴講者として映り込めばラッキーではないでしょうか。ちょっと面白い格好をしていれば、声をかけてくれる人も確率的に増えます。日本人のちょっと面白いガジェット、たとえばnecomimiなどはその一つです。なに?「necomimiは自分のプロダクトじゃない?」そんなの関係ないじゃないですか、たかがファッションですよね。頑張って空気になる必要はないのですよ、その場は。

大事なのは「自分が発信したい、知られたい」と思っているかどうかをファッションに発露させるかどうかの問題だと思います。「スーツを着ていくことが信頼されるためには大事」と考えるかもしれませんが、それは100年ぐらい前の話であって、むしろ民族衣装である和服を着た方がアイデンティティが発揮されます。アフリカやイスラムのスタートアップは必ずしもスーツを着ていますか?

通貨的に貧乏な国、インフラが安定していない国のスタートアップの方がその辺は、サバイバル力がよく鍛えられています。また先進国、ユーロ圏、インフラが整っている国は、真逆のサバイバル力が進んでいます。例えば名刺を配っても「要らない。写真で撮ります」といって目の前で写真を撮ります。「そんなの失礼じゃないか!」と思うのが日本人で、名刺を整理するサービスなんかを開発しちゃうのが日本人ですが、(そういうことも大事ですが)何が大事なのか見失ってはいけない。

情報がないことに腹を立てない

十分な事前アナウンスがされて、十分なナビゲーションがされることはイベントの品質上、重要と思いますが、スタートアップコンテストは一般向けのコンサートなどのイベントではありません。プログラムの変更や出演者のキャンセルなどは当たり前ですし、Pitch Talkが当日に決まることもあります。そもそもそこでPitch Talkが行われるかどうかをアナウンスする必要があるのかどうか?というレベルまで情報がないこともあると思いますが、日本人はそこで「おら金払ってんだぞ、情報ないのか」的な腹を立ててしまうようにも思います。特に企業の渡航者は会社がチケットからホテルから渡航準備情報まで全て用意してくれたりしますので、そういう「情報の完備」に慣れてしまっているのかもしれませんが、スタートアップの世界では「情報があることがおかしい」という感覚に慣れるべきと思います。

「情報がある、その通りに進めば失敗がない」、という感覚・精神そのものがスタートアップの生き方、アントレプレナーシップに反しているということかもしれません。むしろ荒野のように情報がなく、砂漠のようにインフラがなく、土台もなく、リソースもない、という場所において「ゼロから水を生み出す」ような発想が求められています。マイノリティかどうか、は関係がないのです。「メジャーな相手に信頼されているかどうか?」は関係があると思いますが、あなたが日本人という少数民族であることは関係がないのです。もちろん「日本人だから」というリスペクトもこの分野にはまずないです。日本や韓国よりも小国で貧乏で努力家で勉強熱心な国は他にもたくさんありますし、むしろ普通の国際会議よりも小国出身のスタートアップに出くわす確率は高いです。

できるだけ握手しよう

どうでもよさそうな分野、関係なさそうな分野、ライバルになりそうなスタートアップと出会い、握手をすることが重要と思います。

私は初日に隣り合わせたルーマニアのスタートアップに助けられました。彼はバッジが登録されていなくて困っていたのですが、その後会場で会う度に挨拶したり握手したり、情報交換したり、Pitch Talkの際に写真を撮ってあげたり、逆に私が困っている時に情報をくれたりしました。

お金のやり取りなんてなくていいのです、まずは握手できる距離感、助け合える距離感があって、そこではじめて一緒に物事を考えたり、一緒に問題を解決したり、作り出したりすることができると思います。逆を言えばそういった肌感覚がわからない人とビジネスをするのは危険、という野生の勘すらあります。

楽しもう

ここには会議を聞きながら日本のメールや科研費の申請書を一生懸命書いている人はいません。もちろんものすごく疲れている人や寝心地のいいソファでぐったりとダメ人間になっているスタートアップもたくさんいます。「オレオレ、俺だよ俺!」って言い続けることは、日本ではものすごく疲れることかもしれないけれど、楽しむしかない。お祭りともまた違う、発露することを楽しむしかない。

特に女性がハキハキしている。彼女らは肉体的には女性かもしれないけど、生き物としては「スタートアップ」という生き物で、野生動物。小娘でもオバサンでもなく、スタートアップという生き物。「女性としてキラキラしている」とかは大嘘で、性別関係なく、キラキラしていて。

テクノロジーとかエンジニアリング、というスキルじゃないのですよね。

時には鷹のように、時には先生のように
「世の中を変えることを楽しんでいる」という一点につきます。

 

Pitchが終わった後、審査員の激しい質問を受けるわけです。

「それ何が新しいの?」

「どうやって利益を得るの?」

「過去にも失敗している例がいっぱいある」

「科学的な細かい情報はともかく、実現できるの?」

そういった質問に対して、「教授に諭される女子学生」みたいな顔をしているプレゼンは、だいたい次のステージでは消えている。

勝ち残っているのは、まっすぐ一点を見ていて、メインストリームのコンテストとは別に、「その他大勢のOpen Pitch」にまで自分の名前を書いて乗り込んでくるような生き物。どこからそんなエネルギーと時間が出てくるのか!と思います。

そもそも「プレゼンの練習」とか「質疑応答」とか「英語の発音」じゃないのですよ、何を見ているか?のほうがはるかに重要なのではないかなと。

以上、まとめますと

  1. 「目立とう精神」の連中しかいないことを忘れない
  2. デモは禁止だと言われても持っていくべき
  3. 情報がないことに腹を立てない
  4. できるだけ握手しよう
  5. 楽しもう

最終日、残りの時間(23時から朝まで後夜祭…)を頑張りたいと思います!