「Nintendo Labo」公開によせて

2018年1月18日、任天堂の新製品「Nintendo Labo」が発表されました。あまりに興奮してしまい、Twitter連投してしまったのと、前回のSwitchの時みたいに「こんなの全然売れない!」という世間の評価に対して、ちゃんと論評して未来を描いてみたところ、しっかり売れました。そういう未来が来てしまうと、あとで振り返るのはなかなか難しいので、回想録としてまとめておきたいと思います。

Switchはもはやゲーム機ではない、材料だ。

すっごい良くできた映像。どんな国の人にでも、段階を追って理解を積み上げながらわくわくできるようになっている。Switchはもはやゲーム機ではない、材料だ。
書籍「WiiRemoteプログラミング」の続きを書くときがきたかも?

Nintendo Labo(ニンテンドーラボ) 初公開映像

儲かるとか儲からないとかいう視点で見ている大人がいるけど、それは関係ない。京都任天堂とMAKE文化は正直とても遠いのに「子供の遊び文化への大いなる挑戦!」と評価したい。原価はとても低いし、消耗品、というか材料しか提供しないのだから安全基準、製造体制なども含めて。株価も上がっている。

「Switch」という名前は、遊びの文化へのスイッチONなのかもしれないし、もしかしたらこのプロダクトにおける電子部品としての「SW」という意味があるのかもしれない。

 

予測を上回る未来

個人的には寄稿「Switch、みんなが気付いてない10の未来」(2017/03/01)の予言が当たっていてうれしい。日経テクノロジーオンライン寄稿「Switch、みんなが気付いてない10の未来」(2017/03/01)の予言が当たっていてうれしい。 http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/022100062/022100001/
(有料サイトですみません)

自サイトにてインデックスと無料版を公開しております
http://aki.shirai.as/2017/03/nintendo-switch-20170301/

「Nintendo Switch、みんなが気がついていない10の未来」
http://aki.shirai.as/2018/01/nintendo-switch-unknown-future/

関係ありそうなのは
1.Switchは「テレビゲームの歴史にトドメを刺す」
4.「何かゲームがしたい人」は結局なにも買わない
6.玩具の歴史であってゲーム機の歴史ではない
9.「Joy-Con」がひらく日本がアップルを超える未来
“Switch”という名前の本当の意味 などなど。
http://aki.shirai.as/2017/03/nintendo-switch-20170301/

リクエスト多かったので再編集しておきましたが長いので以下おもしろいところだけ抜粋。

一番手が抜けない場所がユーザー任せ

Switchが新たな将棋盤となり、触覚を主導にした触覚VRエンタテイメントが玩具の未来にあるとすれば、その開発をまず任天堂が最初に行ってユーザーやサードパーティに示すべきです。HD振動だけでなく、分離合体が可能なゲームコントローラー「Joy-Con(ジョイコン)」は、コントローラーをどう持つか、Joy-Conと組み合わせて使うガンやハンドルなどのオプション機器をどう組み合わせるか、画面とどう対峙するかまでをユーザに任せています。
ゲーム開発者の視点から見ると、「エクスペリエンスを作る際に一番手が抜けない場所」をユーザーに任せているわけで、開発者としては戸惑いもあると思います。簡単に表現すれば「カードゲームと同じ、トランプの持ち方まで設計しない」ということでもありますが、そのトランプで大貧民やブラックジャックといった「ゲームの遊び方」を示していく必要があるということです。ミニゲーム集「1-2 Switch」がまさにその具現化でしょう。

そんなわけで、Nintendo Laboは新たな遊びを開拓するために、ユーザにクラフトを預けることで、想像力のバトンをユーザに戻すのですね!

ちなみに、昨日、VR関係の桜花一門さんとこの手の話をしていたのですが、「ユーザに任せる」って発想がゲーム開発者側から出てくるにはとても勇気がいると思います。とても大事なことです。

STEAM教育とメディアアートと研究とLaboの関係

STEM教育、もしくはSTEAM教育について「チームラボの高須さんからシンガポールのSTEM教育について学ぶ」というエントリーを書いたことがあるのですが、STEM教育つまり”Science, Technology, Engineering and Mathematics” すなわち科学・技術・工学・数学の教育分野にアートを加えたSTEAM、でもやっぱりここには「遊び」が足りない。プレイフルであることを(日本の)教育の現場が供しないのもありがち。でも研究者はこの分野に果敢に取り組んできたのです。

例えば、神奈川工科大学 情報学部 情報メディア学科の鈴木浩 准教授(つまり同僚ですが)が中心に開発してきたプロジェクト「たたかえ!!僕らのシャドウロボ」はまさにNintendo Laboにインスパイアを与えたと見ます。
http://www.hsuzuki-lab.info/?page_id=87

SIGGRAPH Studio2013での発表
https://dl.acm.org/citation.cfm?id=2503673.2503688

LABO、MAKEやCAMPといった名前からも、これまでのモノづくりコミュニティへのリスペクトと、その先を提案する気持ちを感じます。

今後に期待!

この狙ったかのようなタイミングで、ニンテンドースイッチ向け「KORG Gadget」というゲーム感覚で音楽が制作できるアプリも発表されています。なんだか対戦ゲームっぽいこともできる様子。

 

日本のゲーム、デジタルモノづくり、メディアアートやSTEAM教育はNintendo Laboを刺激し、Laboはそれらを刺激して新しい才能を育てるものと考えます。素晴らしいです。

タイムラインでいろんな方々のご意見や興奮を収集しておきました。

http://aki.shirai.as/2018/01/o_ob-at-2018-01-18/

今後も何かあれば追記していきたいと思います。

追記

■「Nintendo LABOの熱狂がマジでわからない」と人はいふ

TVゲームの概念と市場をTVゲームから連続的にTVの前から引きはがすのがどんなに大変なのか?って話はTVゲーム開発者やVR開発者なら絶対わかる。

でも熱狂的なビデオゲーム信者にはわからない、枠の外が見えてないし、子供も見えてないからこれはしょうがない。LABOはそれを破壊しにかかっているわけじゃないから安心しよう。純粋に「インターフェイスを自作できる”だけ”」と考えていただいてもよい。HORIの仕事を自分でやれる、それだけでも「与えられたものしか遊べない支配」から子供たちは抜け出せるんだよ。

あと「クソ高いダンボール」という意見はわかる。
正直なところ、利益率90%の製品が飛ぶように売れてしまうぐらいでないと、30年成長しそびれたビデオゲームの負の思考をひっくり返すことは難しいと思う。
逆言えば、この価格でクリスマス商戦までもつなら、地殻変動が起きると思います。

この30年、ゲーム産業はソフトウェア産業としては成長し続けたのだけど、
でも玩具産業としては、新しいものはすべてゲームソフトがが潰してきた。
玩具とゲームが融合した形でソフト化した例はamiboだけど、これも他者が真似て失敗している。
LABOはKANOやlittlebitsの追従として見ても異様さはないですよね。

ユーザの自由なクリエイションや現実世界の物理を生かしながら、既存IPを生かす方法や、上手な箱庭を作る方法は、現在のビデオゲーム開発の現場においてとても重要、マリオメーカーしかり、マイクラしかり、VRなんてまさにそれ。

根拠もなく「売れないでしょ」って言っている御仁は、未来の「LABOを楽しむ子供の想像力」すらないオジサンだってことを認めるべき。
例えばamiboが「パイルダーオン」するようなゲームが出てきてやっとその価値や意味が分かるぐらいの想像力のなさ。一方で「ダンボールが邪魔」とかリアリストなんだ。

想像力がない人は「LABO」を買わないし、彼らが現在考えている遊びに想像力は必要がない。任天度としてもキャズム超えるまでは市場に寄与しないから特に気にする必要はない。

そしてクリエイションはエネルギーが必要。継続的に遊ばせる必要すらあるのかどうかも模索する必要がある。きっかけで十分。

まずは「ファミリーベーシック」や「ロボット」、「バーチャルボーイ」は「高嶺の花」でいいんだ。
でも、一生に一度でも触れておいてほしい。
そんな玩具を友人の家で遊んだことはないか?
月刊誌の雑誌の付録を一気に作り上げてしまった記憶はないか?

まずは、それでいいんじゃないかい?

値段の高さは気になるけど「買いたいけど買えない」それでいい。今の任天堂の社長がこの価格を判断したんだ、何か考えがあるんだろう。初期の極度な品薄とかね。

ちなみに任天堂の株価はこの2日で5%以上、100株でも持っていたら30万円は上げた計算。いいものをつくれば市場は評価するし、資本は動く。

「Nintendo Switch、みんなが気がついていない10の未来」

日経テクノロジーオンライン「任天堂Switch、私はここに期待する」に寄稿した記事が2017年3月1日に公開されました。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/022100062/022100001/

以下、Web公開バージョンで紹介します。

なお、当時は「こんなハード絶対売れない!」という下馬評でした。ホントですよ!

1.Switchは「テレビゲームの歴史にトドメを刺す」
2.グラフィックス性能の向上で見えなくなる「何か」が明らかに
グラフィックス性能を上げたら売れるとは限らない
3.テレビの奪い合い戦争が終焉する
遊びを遊びとして保つためには「やめる自由」が大事
4.「何かゲームがしたい人」は結局なにも買わない
ゲームを買うのはソーシャルな理由
5.でもスプラファンは「スプラ2」さえ出れば満足
任天堂ハードで「○○専用機」は珍しくない
6.玩具の歴史であってゲーム機の歴史ではない
7.「1-2 Switch」こそが最注目タイトル
8.「VRエンタメ」の未来に「触覚VRエンタメ」あり
一番手が抜けない場所がユーザー任せ
9.「Joy-Con」がひらく日本がアップルを超える未来<
“Switch”という名前の本当の意味
10.やはりSwitchは「テレビゲームの歴史にトドメを刺す」

 

「Nintendo Switch、みんなが気がついていない10の未来」

 

「Nintendo SwitchにはXXがない!だからダメだ」という噂をよく耳にします。

そうですよね。後方互換性もないし、今流行りのVRサポートもないし。

でも本当にダメなのでしょうか。

 

発売前のゲーム機ですから、開発者は「守秘義務」があり、知っていても何もいえません。本稿を真剣に読んでくれている読者さんに予め宣言しておきます、以下のお話は筆者の憶測です。しかしただの憶測ではありません。ちょっとした未来予測を込めたSFとして書いています。筆者がかつて2006年にWiiリモコンと出会い、2009年に「WiiRemoteプログラミング」という書籍を執筆させていただいたとき、Wiiに対する世間の当初の印象と、そのプロダクトが本当に持っていた価値とはずいぶん違う、ということに多く気付かされました。今回はそのようなハッカー・開発者・教育者・エンタテイメントVRの研究者としての視点から、未来予測フィクションを書きます。​題して「みんなが気がついていない10の未来」、です。

 

1.  Nintendo Switchは「TVゲームの歴史にトドメを刺す」

TVゲームの歴史を終焉させる、つまりゲーム的に言えば「トドメを刺す!」ということです。物騒な書き方かもしれませんが、いわゆる「TVゲームのマーケットが縮小して…」という市場の話ではありません。俯瞰的にゲーム機の歴史を見ると、現在のTVゲーム据え置き機は「第8世代」、携帯機は「第7世代」ハードと呼ばれています(Wikipedia「ゲーム機」)。Nintendo Switchはこの歴史の中では「据え置き機の第9世代」かつ「携帯機の第8世代」というべきタイミングで登場することになるのですが、もしかするとこの年表はNintendo Switchの登場によって終焉を迎えるのかもしれない。その1つが「携帯機と据え置き機の融合」というちょうどネアンデルタール人とホモ・サピエンスのように「進化的吸収説」で歴史に終止符を打つのかもしれません。他にも様々な理由を挙げていきます。

 

2. グラフィックス性能が向上すると見えなくなる「何か」が明らかに

 

少なくとも、Nintendo Switchは「最新のゲーム機」ではありますが、「最高スペックのゲーム機」ではありません。CPUやメモリ、グラフィックスのスペックで最高を手に入れたいのであれば現在は間違いなくPCベースのVR Readyなハードウェアが最上位機種になります。ムーアの法則で語れるような半導体の世代交代モデルは既に様々な分野で特異点を迎えています。

ところでゲームハードはこの20年、リアルタイムグラフィックス産業において、世界で最も先進的なハードウェアの一翼を担っていました。例えば現在では一般的になっている「GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)」という名称ですら、ゲーム機のグラフィックス戦争により生み出された語なのです。

1996年当時、世界で最も高速な3Dグラフィックスといえば、産業用グラフィックスワークステーション(GWS)を開発するシリコングラフィックス社(SGI)一強でした。当時の3Dグラフィックス、立体視やVRといった映像環境は、最低限の体験をするだけでも3000万円の予算が必要だったのです。その当時の任天堂はSGIのGWSと同等の能力を持つ第5世代ハード「NINTENDO64」を希望小売価格25,000円で販売しました。SGIと提携してRISCベースで開発したカスタムCPUをもち、当時に存在していた他のゲーム機をはるかに大幅に上回る高性能であり、競合機種の一つである初代PlayStationの搭載するCPUの約4倍の処理能力を持っていました。しかしゲームハードとしては大成功とは言いがたい印象がありました。CDROMが主流となるメディアが、ROMカートリッジである点もよく指摘されました(そういえばNintendo SwitchもROMメディアです!)。

しかしNINTENDO64は失敗だったのでしょうか。

ゲーム機はこの20年、グラフィックス市場を一変させ、NVIDIAとATI(現・AMD)を大きく成長させました。「GPU」という単語はPlayStation初代からPlayStation2の登場、DirectXによるゲーム機のグラフィックス戦争のさなかにあったNVIDIA「GeForce 256」(1999年)により生み出された語です。ゲーム機によって世界中で数千万、数億という単位で消費されるプロセッサ「GPU」は、グラフィックコントローラとしてPCパーツの一部として産まれ、3万円前後のゲーム機という畑で育ったのです。

その後のハードソフトを合わせた「ゲーム市場」は拡大し続けています。ゲームソフト市場は変わらず成長し続け、モバイル、特にスマホを舞台とするオンラインゲームサービスを含めた市場はこの10年間で高成長を続けています。その一方で相対的にTVゲーム、特にゲームハードの市場は微減し続けています。ここで、CPUやGPUといった「ハード性能が向上することによって市場が拡大する」という考えかたが幻想であることを見つめ直さなければなりません。シンプルに表現すれば「ゲームプレイヤーはグラフィックスを気にするが、グラフィックスが性能が上がってもゲームハードが売れるわけではない」ということを、任天堂ハードは20年かけて証明し続けてkているのです。一方でそれは「グラフィックスが汚くてもゲームが売れる」という話ではありません。「ゲームと映像の間にある重要な何か」への挑戦が重要なのです。Nintendo Switchによって、リアルタイムグラフィックスとGPUの歴史における「大切な機能」がまた一つ明らかになるかもしれません。

 

3. テレビの奪い合い戦争が終焉する

 

Nintendo Switchは家庭でのテレビの奪い合いを終焉させます。家族間のチャンネル争いだけでなく、拡大多様化する映像コンテンツ視聴の奪い合いも終焉させる技術が搭載されています。そもそも「テレビのチャンネル戦争」以前に、そもそも地デジ化・デジタル多チャンネル化以降、チャンネルは争うどころか物理的な視聴時間自体が足りなくなり、YouTube以降、非インタラクティブな映像コンテンツの視聴携帯は大きく変わりました。大学生と日々触れ合っていると「若者がTVという据え置き型ディスプレイデバイスを所有していない」という状況は否定しようがありません。今の若者にとっては「テレビのお笑い芸人」よりも「人気ユーチューバー」の方が影響力をもっていたりするのです。

さてこのような背景で任天堂ハードは「TVに繋いで遊ぶTVゲーム」というハードウェアを連続的に変質させるような根本的な変革を起こす必要があります。どうやってそんな変革を起こせるのか!多くの電機メーカーは「機器を買う人」のペルソナを中心に市場を分析しがちですが、任天堂ハードの特性として「自分で買わない人が主ユーザー」、つまり子供達であることに注目しましょう。今後のゲーム市場、ゲーム文化の支え役になるであろう若年齢プレイヤーのゲーム・プレイスタイルを設計することは今後の十数年に渡って影響があります。そこを設計しなければ、PlayStation PortableやPS Vitaのようにスマホと融合し「進化的吸収」の道を歩んでしまいます。それも仕方ないのかもしれませんが、「コアなゲームプレイヤー」が、PlayStationやアニメ視聴のためのハードディスクレコーダーと取り合いしている場合ではないのです。ゲームプレイヤーはゲームがしたいのです、テレビやスマホのUIに拘束されるべきではないのです。ここはゲームプレイヤーに向けて「あえて”TVゲーム”にトドメを刺す!」ということで様々な垣根も壊して新しいID(工業デザインとアイデンティティ)を示していかなければ、という気概も感じて欲しいと思います。

技術的にはNintendo Switchの「TVを前にプレイしている最中に、モバイルとしてゲームが続けられる」という点は大きな特徴です。ディスプレイデバイスをいつでも切り替えられるということは、サスペンド機能、つまり「いつでもやめられる」という機能を持っているということです。この「やめる自由を持つ・いつでも再開できる」という技術は、遊びを遊びとして保つための重要な要素であり、Nintendo DSをはじめとする携帯ゲーム機とスマホゲームが据え置き機を凌駕するきっかけとなったという見方もできます。PlayStationもOSの改善により、いつでもやめられるソフトウェア技術が成長していますが、Nintendo Switchでは、解像度ごと変えられるという大胆な設計です。ゲーム開発者は根底からそれを考慮して開発する必要があります。ハード的にはNVIDIA Tegra X1カスタマイズ版によって、ドックモードと携帯モードでディスプレイ描画解像度が代わり、携帯モードではGPU最大性能の半分程度しか出さない、という大胆な設計です。これはGPUの後の歴史から振り返ると、大きな転換点になるかもしれません。

 

4. 「何かゲームがしたい」という人は結局何も買いたくない

筆者は大学生などを中心に長年「ゲームをはじめてプレイした理由」を調査しています。それによると、現在の20代が初めてプレイしたゲームは圧倒的に「ポケモンシリーズ」が優勢です。「Pokemon GO」の爆発的な人気を見てもそれは納得ができますが、筆者の興味はタイトルだけではなく「いつ、なぜそのゲームをプレイしたか?」という理由です。

大学や保育園・幼稚園等、様々な教育環境で調査したところ「ゲームをはじめてプレイした年齢」つまり、ゲームとのファートエンカウントは「4歳」が最も多く、その理由は「兄弟や友人などの話題についていきたい」というものでした。ゲームを開発する側の視点で考察すると、具体的に「ポケモンが面白いからプレイした」という記憶をもっている人はほとんどいない、という点は注目すべきで、ゲームデザインの良し悪しはファーストエンカウントにあまり影響を及ぼさない可能性が示唆できます。

実践教育学的に見ると4歳児はちょうど、自分と社会との関係を理解する年齢です。つまり非常にソーシャルな理由でゲームとのファーストエンカウントを達成するということで、現代のゲーム市場が”ソーシャル”ゲームであることを考えると今後もその傾向は続くでしょう。

さて4歳で友人や年上のきょうだいでゲームを知った子供たちはその後、親やサンタクロースにお願いするという方法で「話題についていきたいからポケモンがやれるゲーム機が欲しい」と明確に希望するようになります。「自分で財布を開き、購入する」という段階にはさらに遠く、中高生になっても「無料だからスマホゲームをやっている」という理由が明確に残ります。

つまり「何か(something)ゲームがしたい」と漠然と考えている子供達は、結局のところ「何かゲームを買いたい」という衝動には中々繋がりません。むしろ「無料で遊ぶというゲーム」を楽しんでいるプレイスタイルすらあります。「ゲーム機を買いたい」という気持ちを刺激するには、良いゲームが出ることが大事ですが、その次の決め手はソーシャルな理由であることをよく見極めておく必要があるでしょう。そういった意味で、Nintendo Switchのパーティプレイに適した設計と価格帯は大変よく狙った設計であると評価できます。

 

5. でもスプラファンは「スプラ2」さえ出れば良い

センセーショナルなNintendo Switch発表以降、Google TrendsやTwitterなどの反応を見ていると、驚くほど「Nintendo Switch」に対する言及は少ないです。加えて「1-2 Switch」についての言及も探すことは難しいです。名前が一般名称すぎるという理由もありますが、むしろゲーム機本体よりも「スプラトゥーン2」、「ゼルダ」のほうが「Switch」よりも期待されていることを肌で感じます。

しかしこれは正しい任天堂ハードウェアの進化ではないかと考えます。WiiUを初めて店頭で見た時の子供達の反応は「デカっ!」でした。しかし「スプラトゥーン」が大流行してからの子供達の反応は全く異なるものでした。

Nintendo WiiUの代表作となりシューティングゲームの歴史も塗り替えた「スプラトゥーン」、2016年5月28のリリースから2年近くの人気が続いています。「スプラトゥーン2(以下スプラ2)」をWiiUで発売しないことは、狂気にも似た感想をスプラファンに与えています。振り返ると、現在のWiiUは「スプラトゥーン専用機」です。これではまるでファミコン登場以前のカセットを交換できずに単一ゲームしか遊べない「第1世代ハードウェア」のようではありませんか。しかし「カセットを交換できない」のではありません。交換したくない。「WiiUは最高のスプラトゥーンのためのハードウェア」で良いのです。

スプラファンにといってNintendo Switchは「スプラ2さえ出れば良い」、「トルネードをどうやって打つのか!だけが興味ある」という反応です。真のスプラファンにとって「スプラ2専用、3万円のハード」は高くはないはずです。なんせ現行の「WiiU+スプラトゥーンセット」はAmazonで45,540円しますから、おそらく比べても安くなります。なお筆者はユルめのスプラファンですが、現行WiiU本体とスプラトゥーンを合計3セット所有、イベントにも家族総出で参加します。唯一残念なのが、P2Pネットワークの設計です。大変高速で高度なネットワーク実装なのですが、同一LAN環境では快適な対戦ができないのです。快適な「スプラトゥーン2によるLANパーティ」が開催できるのであれば歓迎です。

さらに思い起こせばWiiの時代は市場においても「WiiはWii Fit専用機」でした。なかなか下がっていかない超ロングテールな「Wii Fit」人気は、一方では健康管理アプリの分野を刺激しましたが、一方ではサードパーティで参加しているゲーム開発者のため息を呼びました。新作ゲームを発売しても、Wii Fitの週間売り上げランキングを超えられないのですから!

このようなサードパーティに冷たい状況を任天堂の開発環境を整備する側は意識しており、WiiUではUnityやHTML5による開発環境が整備されました。しかし任天堂文化の最大の問題は「開発者ライセンスの硬さ」とも言われています。それも体制が変わったのはつい最近のことですから、今後は期待できるかもしれません。

これまで述べてきた通り、発売前は色々と噂になりますが、きっちりとした品質の製品を提供していれば、ハードウェアの第一印象は普及後にはあまり意味を持たないのです(また今回も第一印象は「デカっ!」かもしれませんが…)。

 

6. これは玩具の歴史。ゲーム機の歴史ではなく。

 

さてここまで予測してきた通り、Nintendo Switchはゲーム機ではありません。今一度、Nintendo Switchの定義を「最新のTVゲーム」から「最新の玩具」に置き直してみましょう。だんだん未来が見えてきます。え?見えてこないって?

多くの一般の方にとって、玩具の技術は枯れた技術であり最新の技術ではないと考えるかもしれません。それは多くの玩具が「飽きられる、子供向け」という性質上、品質、バリエーションと利益を維持するために低価格の原価で抑えられているためでもあります。しかし「ゲーム機という玩具」は価格帯が異なります。高級かつ高品質、ソフトウェアとサービスが詰まっています。そして「高機能である必要」はないのです。例えば、過去の任天堂ハードにはブラウザもDVD再生機能も標準搭載されませんでした。今回もブラウザは搭載されないようです。PS VitaにはWifiに加えて3Gモデルが発売されましたが、Nintendo SwitchにはWifiしか搭載されないようです。これは任天堂ハードが「なんでもできる家電の中心」ではなく、純粋な遊びのための装置であろうとする意思を持っていると感じます。遊びのために余計な機能を追加することで、遊びを阻害します。そして全てがスマホに吸収されていってしまうのです。

任天堂はカルタや将棋の会社です。ファミコンカセットやポケモンカードはその遺伝子を引き継いでいます。Nintendo Switchは「TVゲームの呪縛」から解き放たれ、再度、ゲームを玩具という装置にもどし、新しい将棋盤を作っているものと考えましょう。

 

7. 「1-2 Switch」こそが最注目タイトル

もしここまで読んで、Nintendo Switchを入手する気持ちがムクムクしてきたのでしたら、ぜひ「1-2 Switch」を一緒に購入しましょう。ゼルダとスプラ2も大期待ですが、筆者は「1-2 Switch」こそがSwitchの本質を占う最注目タイトルであると考えます。もうディスプレイすら不要。HD振動も思う存分味わえます。任天堂も本気です。2月中旬から大泉洋さんを起用したCMでプロモーションを開始しています(動画)。

 

「1-2 Switch」公式ホームページ

https://www.nintendo.co.jp/switch/aacca/

 

これまでも任天堂は新ハードにおいて「メイドインワリオ」、「リズム天国」のようにシンプルかつ限られた機能でジョイフルなゲームタイトルを発売してきました。今回は全28種類のミニゲームが用意されています。

 

8. 「VRエンタテイメント」の未来に「触覚VRエンタテイメント」あり

 

Nintendo Switchがまだ「NX」と呼ばれていた頃、世間は「VR元年」となりHMDベースのVRエンタテイメントが大流行しました。当然Nintendo Switchにも「VRサポートはあるんだろうな」という憶測があり、それを否定された報道や発表があるたびに、Nintendo Switchへの残念だという意見が飛び交うようになりました。仮想的なライバル「PlayStation VR」だって20年来のグラストロンの経験を超えて実現した製品であり、そもそも任天堂自体「Virtual Boy」を1995年に15,000円で発売しています。

そもそもNintendo Switchの設計であれば、HMD対応は可能です。現状のWiiUだって、ヘッドトラッキングさえ実装すれば、HMDとしての利用は可能であり、非常に性能の良いワイヤレス画像伝送を実現しています。Nintendo Switchにおいては、子供達への安全と、それを実現するヘッドマウント部さえ設計できれば、製品や体験は実現可能でしょう。むしろ、ゲーム開発者やユーザ側に任されていると理解した方が良いと思います。

このようなVR研究を大学等の研究機関で経験したスペシャリストも任天堂の開発者にはいらっしゃいます。当然、様々な可能性を検討した上で、この設計なのでしょう。リアルタイムグラフィックスやHMD、没入映像環境などはVRの研究者としては当然の技術です。TVゲームからの脱却、映像が綺麗になっても面白くはならない、いっそのこと画面見なくても遊べるゲームつくったら?という意思で「VRでゲームを面白くするには」、それはまさに筆者が博士論文でテーマとした「触覚VRエンタテイメントシステム」です。そしてそれを実現する挑戦が、Nintendo Switchの「HD振動」です。

さてNintendo Switchが新たな将棋盤となり、触覚を主導にした触覚VRエンタテイメントが玩具の未来にあるとすれば、その開発をまず任天堂が最初に行ってユーザやサードパーティに示すべきです。合体可能なゲームインタフェース「Joy-Con」は、HD振動だけでなく、UI(ユーザインタフェース)の持ち方、樹脂等で作られるペリフェラル、ユーザがディスプレイをどう構えるか?までをユーザに任せていることになります。これらはゲームのソフトウェア開発者としての視点では「エクスペリエンスを作る上では一番手が抜けない場所」をユーザに任せているということで、開発者としては戸惑いもあると思います。簡単に表現すれば「カードゲームと同じ、トランプの持ち方まで設計しない」ということでもありますが、そのトランプで大貧民やブラックジャックといった「ゲームの遊び方」を示していく必要があるということです。「1-2 Switch」がまさにその具現化と考えます。特徴的な2作を紹介します。

 

ライアーダイス

 

 

 

金庫破り

 

非常に繊細な触覚をゲームに組み込んでいます。「HD振動」がどのようなハードウェアで実現されているのか、購入して分解するまでは謎ですが、技術的にいくつか想像できることがあります。まず、コントローラと本体の通信速度が非常に高い可能性があります。この辺りは実現しているゲームの速度や、触覚からも想像つきます。1秒間に60〜100回の更新で実現できる映像信号のレンダリングに対し、触覚レンダリングは1秒間に1000回以上の更新が必要です。HD振動がどこまで触覚レンダリングを実現しているのかは発売後でないと検証しづらいですが、合体分離可能なハードウェアであり、特許や前情報を拝見すると、電気や無線通信といった旧来の接続方式ではなく、光を使った通信で、NFCや無線給電を採用しているようです。少なくとも長時間遊ぶ人は「Joy-Con充電グリップ」は入手しておいた方が良さそうです。またゲーム機本体よりもJoy-ConのほうがamiboやNFCで培った任天堂のゲームハードのビジネスとして明確な感じがします。

 

9. 「Joy-Con」が拓く、日本がAppleを超える未来。

 

上記のようにJoy-Conは現在公開されている情報としての合体分離や「IRカメラ」だけでなく、反応速度、電源、接続性、タフネス…と驚くべきポテンシャルを秘めています。スポーツゲーム、釣りゲーム、いや「スポーツや釣りのVRエンタテイメント」を待ち構えている人々は期待して良いのではないでしょうか。

そしてこのJoy-Conをコアとしたテクノロジは、日本発のエンタテイメント・ペリフェラルの基幹産業を刺激する可能性があります。それは例えるならAppleがiPhoneで切り拓いた「スマートフォン」という市場を凌駕するようなインパクトがあります。たとえばAppleの

 

Apple Watchで触感フィードバックを実現するモーター装置「Taptic Engine」を製造する2つサプライヤのうちひとつは日本電産(Nidec)と言われています。アルプス電子も自動車用の触覚フォースフィードバック技術をゲーム用途に検討しているようです。先に紹介した「バランスWiiボード」のキーパーツであるフォースセンサはミネベアミツミによる製品で1台あたり4個使用されています。経済効果は当時の株主総会でも話題になっていたようで開示はされていませんが数十億円規模と推測できます。
ゲーム開発者やゲームプレイヤー向けにもうちょっと「わかりやすい昔話」をします。筆者がiOS用の新しいゲーム「王様スロット」を学生とともに開発していた2013年頃の話です。そのゲームは研究として「ディスプレイの外側で起きるエンタテイメント」を設計したものでした。簡単に言えば「王様ゲーム」のためのスマホアプリです。これを子供でもプレイできるかどうかを実験した動画が残っていましたので紹介します。

 

「王様スロットを5歳児で試す」

 

 

このアプリは結局リリースされませんでした。当時のAppleの審査において「スマートフォンの画面内ではなく外部で起きるインタラクションを検証できない」という品質保証上の問題で懸念でAppleにリジェクトされたのです。IngressやPokemon GOが実現している現在では昔話でしかありませんが、日本のハードウェア製造業がこのような挑戦を許すでしょうか?最終製品を提供するメーカーが考える「品質」の中に「画面の外側まで設計、品質維持する!」という意思がなければ不可能です。そのような意思があるプラットフォームとハードウェアメーカーとの協業やその経験は今後、明確な違いが出てくると考えます。具体的にはミドルウェアやOS、APIの設計がその基盤技術になります。CRI・ミドルウェアはゲーム開発者向けに20年近くの歴史があるソフトウェア企業ですが、東大卒の博士所有VR研究開発者を数多く擁しており、触覚ミドルウェア「CRI HAPTIX」として、まるで音響ファイルを扱うようにインタラクティブな触覚を発生させられるミドルウェア製品を発表しています。

このような、コンテンツ開発を支える知見や経験がミドルウェアとして水平展開し、ゲーム業界が爆発的なエネルギーを持つ例は近年の「VR元年」におけるUnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンにおいてすでに実証されています。

ゲームコンテンツ開発者はApple、ソニーやマイクロソフトといった競業他社のプラットフォームともマーケットを棲み分けつつ共存し、特殊なハードウェアをミドルウェアがつなぐ、そして生まれたハードウェアが、スマホやVRの未来を刺激する。任天堂が「Switch」という電子部品のような名前をつけた、もう一つの理由がここにあるようにも感じます。少なくとも、PlayStation VRを産み出したソニーと、Nintendo Switchを産み出した任天堂がどちらも日本の会社であることに誇りと興奮を覚えませんか?

 

 

10. 最後に、 Nintendo Switchは「TVゲームの歴史にトドメを刺す」

Appleですら設計できなかった「画面の外のインタラクション」とその後のハードウェア産業の刺激も予言したところで、さいごに大事な未来を予測しておきます。それは「Nintendo Switchには最強のコピープロテクトがかかっている」という点です。

かつて任天堂はDSの違法複製ソフトウェアに悩まされました。Wii以降では「バーチャルコンソール」として公式エミュレータが提供されており、1980年代の懐かしいゲームがプレイできますが、おそらく「Nintendo Switchのゲームはコピーできないどころか、エミュレータも出せない」という表現が正しいと思います。NFCがついたゲームコントローラはamibo付きでゲームを売っているようなもので、任天堂とそれを流通させる店舗には確実な利益が保証されます。店舗は頑張って面白いゲーム体験をプロモーションして、コミュニティを醸成し、販売促進につとめることができます。つまりこれは「玩具」なのです。そして体験はコピー出来ないということを忘れてはいけません。

これまで「TVゲームの歴史を終焉させる」という、若干悲観的な話で未来予測を書きましたが、ひとえに「Nintendo Switchは良い方向にTVゲームの歴史にトドメを刺す!」ということです。旧人類と現生人類、ネアンデルタール人は身体能力では現生人類を上回っていたのに、長い年月を経て、現生人類に遺伝子的に取り込まれてしまったという説が有力です。スマホとゲーム機、玩具と映像、どちらがどちらの遺伝子を取り込むのか、短い時間では説明できませんが、そのどちらも「人類の歴史において最先端の楽しむための技術」であることは間違いありません。

いろんな意見、多様性があって良いと思います。まずは買ってみてから文句言ってみようぜ!

 

略歴

白井暁彦(神奈川工科大学 准教授、VRエンタテイメントシステム研究者)
1992年 東京工芸大学 写真工学科卒業、1996年 同大学院画像工学専攻卒業。某大手ゲーム開発企業の企画に内定するが教授推薦でキヤノン(株)に就職、福島工場で生産管理を学ぶ。縁あってキヤノングループの英国ゲーム関連企業Criterionを経て2001年、東京工業大学総合理工学研究科博士後期課程に復学、2004年に『床面提示型触覚エンタテイメントシステムの提案と開発』で博士(工学)取得。(財)NHK‐ES、フランスLavalでのVRによる地域振興、日本科学未来館科学コミュニケーターを経て、現在、神奈川工科大学情報学部情報メディア学科准教授、国際基督教大学 非常勤。専門はエンタテイメントシステム、メディアアートの工学教育。国際学生VRコンテスト実行委員、Laval Virtual ReVolutionチェアマン、他。著書に『WiiRemoteプログラミング』,『白井博士の未来のゲームデザイン ―エンターテインメントシステムの科学―』など。

#VRZONE 初日オープニングレポート(詳細版:その1)

お忙しい人はこちら(Twitterモーメント)。いくちょんさん、すてきなカバー写真、ありがとうございます。

VRの歴史の転換点,見学に行こうぞ!

2017年7月15日に初日を迎えたバンダイナムコグループによる「超現実エンターテイメントEXPO ”VRZONE SHINJUKU”」に行ってまいりました.

なお今回の取材は完全な”自腹”です.もちろん内覧会のお誘いもいただいておりましたが,AnimeExpo2017の移動日に当たっておりましたのと,VRの歴史の転換点ともいえる常設施設のオープニングをこの目で,自分の財布を開いて体験することに意味があると思ったのです.主催者に奢られるのではなく,一般のお客さんとしてのエクスペリエンスを得ることが大事です.予約公開初日に最大限となる8枚の「1day4チケットセット 4,400円(税込)」を入手し,学生さんを誘ってみました.KaitVRの学生は飛びつきましたね,さすがVR作りたくてウチの大学に来ているだけのことはあります.3年セミナー生も一部飛びつきました.4年生はちょい忙しいこともあり,遠慮気味でした.大学生を見ていると4,400円という金額は若干足が遠のくのでしょう.「スプラトゥーン2のために買い控えが起きている」とも言えます.

そんなわけで2名分ほど売れ残ってしまったチケットですが,一方では入手したい人もいる開店初日の10時からのある意味プレミアムチケットです.ヤフオクなどで転売するのは趣味ではありませんので,ちょうどよいタイミングで公開されたVALUの上位支援者さんを連れて楽しむことにしました(ちなみにこのVALU優待も大変な人気でした,VR関連VAはとても人気なのですが,この「VRZONE一緒に行く優待」はとても楽しいので真似する人が出るような気がします).

入場前から「さあ、取り乱そう」

お台場で2016年,実験として運営されたVRZONE「project i can」から,コンセプトは「さあ、取り乱せ。」でした。長年バンダイナムコのゲーム企画に関わってこられたコヤ所長のお人柄が感じられるキャッチコピーですが、かつて1990年代のVRエンタテイメント施設のフラッグシップであったセガJOYPOLISのコンセプト「it’s a love story」ともずいぶん違うアプローチであると思います.ジョイポリスは当時の技術力を結集して「何が何でもカップルで体験できるように!」という力が感じられたものです.例えばCAVE(複数プロジェクターによる立体視没入環境)も二人同時に体験させるために当時の業務用筐体を使った並列レンダリングシステムなどが開発されていました.

VRZONEはデートコースには使えたとしても,必ずしも二人で体験できるわけではない感じ,2013年以降のOculusが火をつけたHMDベースのVRエンタテイメントシステムはネットワーク接続しない限りは二人同時に体験しようがありません.というかソロでも十分楽しい,カップルやグループでも楽しい,13歳以下のお子様もそれなりに楽しい,という設計でしょうか.

さて,Google Mapsで「VRZONE」を検索すると,開店初日なのにちゃんと登録されていますね,アルファベットなので海外からのお客様にも良い感じですね。

住所は 〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町1丁目29−1

新宿歌舞伎町というロケーションはファミリー&子供向きとは言いづらいですが,近所には東宝やロボットレストランなどもあり,世界に発信していくためのピーキーなフラッグシップ店としては良い判断と思います.イオンリテールの運営するVRCENTERはショッピングモール内のゲームセンターの拡張というポジションですので今後もうまく棲み分け,共存していくことを祈ります.

なお,JR新宿駅中央東口からすでにポスターなどがしっかり張られており,VR業界外へのアプローチを力いっぱい行っております.

外も暑いのにプロモーションお疲れ様です.新宿歌舞伎町は世界で最も刺激的な街なので,館外で予約を取るような地道なプロモーション活動はとても大事だと思います.

建物と融合するプロジェクターが入る前からすごい

プロジェクション・マッピングを担当したネイキッド社のHPより http://naked-inc.com/news/1726

外観写真で建物にプロジェクション・マッピングが施されていましたが,実はプロジェクション・マッピングって公道ではできない法律があるらしく(専門家談),特に輝度の強い光源を運転者に向けて打つような照明は作ってはいけないそうです.歌舞伎町とはいえ,どこからどうやって投影しているのか!地味に気になっておりました.

建築と融合して、公道を打たなけえれば良い!さすが常設施設だけの事はあります。素晴らしい解です。

こちらのモニュメントもネイキッドさんのお仕事です。真下につき下ろすプロジェクターの釣り方が斬新。

さて見学開始。体験者の絶叫がヤバい。

「マリオカートVR」プレイヤーさんの絶叫がヤバい!!

自分はアーケード版のプレイが祟ったのか、あっさり1位でした。なんであんなに叫んでいるんだろう?序盤の落ちるシーンかな?
普段クルマやバイクでヤンチャな走りをしているヒトはそこまで叫んだりはしないかもしれない。
でもマリオカートいろんなレースシーンを短時間で凝縮体験できてオモシロイ。個人的には右手だけじゃなくて左手でプレイできたのは良かった。

ところでシート位置が悪くて搭乗時にヒザぶつけた(調整可能だけど狭いままだった)。結構痛い。そんな時でもカワイイ笑顔で写真撮られているあたり芸能人時代のプロ根性なのか。

筐体はアーケード版を転用しているという噂。なのでステアリング中央にボタン穴があるそうな。

筐体そのものにインパクトショックがあると、より絶叫できたのかも?ムチウチするかもしれないけど。
よく考えたら、酔わないようにものすごーく苦労していると思います。

「釣りVR GIJIESTA」

このウッドラック、便利ですよね!うちのラボでも使ってます。

MoguraVRさんによると、栗本鐵工所の磁気粘性流体(SoftMRF)なんだそうです。
ナノサイズ微粒子なのか。 砂鉄で作っても追いつきそうにないな!全然違和感がない触覚で、ホントに触覚出てるのか?ってぐらいでした(リールの触感のほうがしっかり)。でもプロポ(無線操縦機)にも使われているそうなので、やっぱりソフトな触感が売りなのですね。

HMDして必死でプレイしている最中なので、触覚デバイスがどんな作用をしているのか全くよくわからなかったので、今度行ったときに調べよう…と思っていたら、中の人の分解写真がちらり。ものすごーく精密なロッドですね!これを一般に触らせているのがすごい。あと青く光る床も気になる。足の位置をLRFで取っているのかな。

その後のコヤ所長(作り込んだ本人)のTweetを見ていると、本作、「管理釣り場」での釣りを大変よく研究しているのだけど、さらによく考えると、釣り堀や管理釣り場ってVRなんだなあ、って感慨深いです。

 

「かめはめ波」と「ガンダム台場強襲」はやりたかった。次回必ずやる。

IP関係が同じチケットになっているのは何の踏み絵なんだろう!

「エヴァンゲリオンVR the 魂の座」で全力取り乱す

「エヴァンゲリオンVR the魂の座」は、今回の同行者ではメイン・ディッシュとなりました。

どれに乗る?から始まり、「第10使徒ってどんなんだっけ?」で予習しつつも、シンクロ率10%からお約束のどったんばったんおおさわぎ!
N2ミサイル使いつつも全く勝てる気がしない圧倒的…終焉。ああ取り乱しすぎてノドが痛い。

↑取り乱す前/取り乱し中↓

第10使途 ゼルエルですよ。いきなりラスボス対戦じゃないですか!逃げちゃダメだとか言ってる場合すら無い。

以下、中の人やクリアしたお方からの情報。

・実はグリップのボタンを押すとカニ歩き以外の移動ができる
・弾切れしなくてもビルさえ探せば武器手に入る(ガチャ)
・N2ミサイル3発ぶち込んでください

ぜったい今度あったらぶち込んでやる。

見どころはLCLに満たされてひーんやりして、神経回路に繋がって…ってあたりです。アニメで描くよりVRで描くほうがいいシーンってあるのですね。

<以下パート2に続く!> 本業が忙しいのです…

おしらせ:

「任天堂Switch、みんな気付いてない10の未来」を読みやすくするハック

日経テクノロジーオンラインに寄稿したNintendo Switch発売記念カウントダウン記事「任天堂Switch、私はここに期待する」が本日公開されました。

「任天堂Switch、みんな気付いてない10の未来」

白井 暁彦=神奈川工科大学 准教授

全11ページあるうえに、毎ページのようにログイン要求されるので、著者ですら読みづらいと思いました。以下インデックスしておきます。

 

1.Switchは「テレビゲームの歴史にトドメを刺す」
2.グラフィックス性能の向上で見えなくなる「何か」が明らかに
グラフィックス性能を上げたら売れるとは限らない
3.テレビの奪い合い戦争が終焉する
遊びを遊びとして保つためには「やめる自由」が大事
4.「何かゲームがしたい人」は結局なにも買わない
ゲームを買うのはソーシャルな理由
5.でもスプラファンは「スプラ2」さえ出れば満足
任天堂ハードで「○○専用機」は珍しくない
6.玩具の歴史であってゲーム機の歴史ではない
7.「1-2 Switch」こそが最注目タイトル
8.「VRエンタメ」の未来に「触覚VRエンタメ」あり
一番手が抜けない場所がユーザー任せ
9.「Joy-Con」がひらく日本がアップルを超える未来
“Switch”という名前の本当の意味
10.やはりSwitchは「テレビゲームの歴史にトドメを刺す」

最初は「10のヒミツ」として書き出したら10どころか20ぐらいあったので、だいぶ圧縮しております。全部で11,000字ぐらいあります。

基本はエンタテイメントシステム、プラットフォーム設計の歴史と変遷の話なのですが、任天堂の中の人さま、一部憶測で書いてゴメンナサイ!
今度機会があったら試遊会に呼んでください、もっとちゃんと書きますから!

でも「テレビゲームの歴史にトドメを刺す」は本気と思いました。

ご感想は日経テクノロジーオンラインのほうにお寄せ下さいませ。

追記:無料版を公開しております。

Nintendo Switch、みんなが気がついていない10の未来
http://aki.shirai.as/2018/01/nintendo-switch-unknown-future/

 

横須賀で #ポケモンGO の遊びかたを再考した – #ポケクリGO その1

相変わらず超長いBlogエントリーを書いてしまいましたが、ポケモンGOをもう一度ちゃんと楽しむノウハウ集になっている感じです。続きもありますが皆さんの反響次第。

横須賀から学ぶPokemonGO再考

まず今日は、横須賀市さんの企画

▼リアルワールドゲームを楽しもう!~安心・安全に「Ingress」や「Pokémon GO!」で遊ぶために~
http://www.cocoyoko.net/event/literacy.html

の打ち合わせで横須賀遠征だったのです。

ポケモンGOを3次元的に楽しむ&位置情報ゲーム世界で町おこしノウハウや、社会問題になりつつあるプレイヤー文化どうにかせねばと日々研究している事もあって協力させていただいております。ちなみにNIANTICさんも協力で入っています(詳細はまだ語れませんが)、ありがたい。

 

横須賀すげえ。覆されまくる横須賀への偏見

さて恥ずかしながら横須賀市って(横浜生まれにとっては)近くて遠いし、JRと京急でも駅違うし、あんまりしっかり観光した記憶がなかったのです。三浦半島・三崎口まで行く途中って感じで。

研究クラスタとしてはNTT光の丘に用事あったり、JAMSTECとかは行くけど。
海軍カレーとかは聞くけど、ミリタリー属性も高くはないし。

でも行ってみると横須賀って微オタからオタク研究者から艦これ厨からB級グルメぐらいまで含めてかなり楽しめる街だったのですよ。

艦これコラボカフェ「酒保伊良湖」が市役所すぐそばにオープンしてました。

▼横須賀にオープンした常設型「艦これ」コラボカフェ「酒保伊良湖」をレポート。にじみ出るこだわりが強すぎて,ご満悦度は高い(4gamer)
http://www.4gamer.net/games/205/G020591/20160728093/

バンダイとナムコと、それからシダックスさんがやっているので、食事もちゃんとしていて、各艦娘が「沈んだ月」がテーマになってて、「7月は島風」って、オープンしてから3日ぐらいしかないのに ぜかまし愛を表現していたりするんですって(市役所の人談・ほぼそのまま)。なんだかすごい。

IngressとポケモンGOと電池とケーブルを持って出かけたい街

横須賀中央駅から見たポケモンGO世界
横須賀中央駅から見たポケモンGO世界
横須賀市役所近辺のIntelmap
横須賀市役所近辺のIntelmap

まず平日昼間の横須賀中央駅前からの眺めがこの賑わい(ポケモンGO世界)。ちょっとした中規模都市の風景ですよ。とても海の近くとは思えない。

街の至る所からひしひしXMを感じるのです。

銅像とかアートとか、街を特徴づけるようなXM資源がとても多い上に、ローカル色の強い飲食店なども多い。もちろん景色も綺麗だし。更に言うと米兵さんとその家族も多いので、Ingress好きそう。

街の至る所からひしひしXMを感じるのです。

さすが市役所が支援するだけのことはある。

知らない人のために、横須賀のIngress観光資源化を紹介しておきます。

もちろんそんなシンプルな話ではなく、はたから見ていると「横須賀に昔から幅を利かせていた青と、それに喧嘩を仕掛けた緑のヤクザの抗争を、一人の女エージェント(市役所職員)が仲裁に入って一山当てた」という話でしょうか。うーんどうだろ。そんな血なまぐさい話ではなく、ちゃんとIngressを使って観光開発しています。少なくとのその時の経験や人脈は大変生かされている。

▼STRATEGY BASE FOR INGRESS IN YOKOSUKA

http://www.cocoyoko.net/ingress/

▼Mission Day Yokosuka

http://ingressyokosuka.blogspot.jp/

▼1人1人が作り上げた「Ingress Mission Day」、横須賀に2000人集まった日 (2015/11/2)

http://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/728611.html

追記:そしてもちろん ポケモンGO も。

▼無人島なのにポケストップ充実!ポケモンGOが楽しめる島(しらべぇ・2016/8/3)

http://sirabee.com/2016/08/03/148150/

 

 

横須賀の町を歩きながらポケモンGO総括

忘れもしない2016/7/22の10時頃リリースから、日本中が大騒ぎになりました。あの日からいろんなものが破壊され、変わって変わって変わり続けています。創造主John Hankeにありがとうを言いたい。

横須賀の町を歩きながらいろんなことを考えていました。

ポケストップ削除の前にちょっとストップ

ポケモンGOリリース以降の日本列島は大フィーバー、社会現象な1週間でしたが、こんなこと、「ゲームが社会を動かす」って私の記憶にある限りでは、インベーダーとパックマン以来の出来事です。ドラクエII・IIIの時もすごかったけど世界同時的な動きではなかったし、せいぜいカツアゲと徹夜ぐらいです(それのおかげで高校受験を棒に振りましたが)。

「ポケモンのIP」のおかげ、っていう人もいますが、どうでしょうか。

ポケモンに興味がない人にとっても面白そう!って思うことはこのスマホの時代にはめったに起きていなかった、ってことかもしれないですよね。おじいちゃん・おばあちゃんで携帯電話持つ人が、否応なしにスマホに置き換わっている時代というのも背景にはあると思います。

ポケモンGOのグラフィックスやモデリングなども地味によくできている、育成大好き、収集大好きな人にとっても面白いと思う。でも、ポケモンGOの「歩いて収集」を成立させるインフラであるポケストップやジムを作った人は誰かというと、Ingressの時にものすごい熱心なエージェントさんたちがいたおかげです。

いや過去形にしてはいけない。

bengaruSukare

カレーの町よこすか・カレー専門店「ベンガル」と「スカレーさん」です。
カレーだけじゃなくて蕎麦屋とかもありました。

横須賀の街並みにはこの手の店舗ポータル/ポケストップがとても多い。

Ingress時代でも「ひとの集まる場所&ローカルビジネス」で商店は申請可能だったけれど、中々採用されないのです。気合(解説)と人x件数と気長に待つ必要があった。天の恵みです。

しかも、NIANTICの源泉であったはずの集合知・ポータル申請も現在では機能が停止している状態です。

参考:Ingress これからのポータル申請・審査を考える。

ingress これからのポータル申請・審査を考える。

この原稿を書いているその瞬間にも、ポケストップ削除が本格的に動き出しているようで、シドニーからもこんなニュースが舞い込んできました。

IngressからポケモンGOに全てのポータルが転生したわけではないので、いま「店や家の近所にポケストップできた」と言っている人は、先ずは2-3年前に熱心だったプレイヤーがそこにいたという「彼の記憶」であって、まずはその行為に感謝した方が良いと思います。

まあ見た目はどう見ても不審者でしょうけど…。

ポケストップ・ジム削除は集合知による刈り込み?

確かに高速道路上とかはそもそも危険を増長してますし、TPOを考えれば平和記念公園も避けられるべきかもしれない。そもそもIngressでは神社仏閣はポータルとして推奨されているスポットのように見えていましたが、プレイヤーが多いとその感覚も自由ではなくなるようです。

ポケストップやジムの削除はNIANTICの公式ホームページから削除申請できます。
どう見ても人力ですが、人間によるプライオリティが設定されているだけ、削除希望派には配慮ある設計と考えたほうがいいように思います。増えすぎたポータルを集合知によって刈り込みするという設計なのかもしれませんが、どうなんでしょうね。

うちの近所にはIngressがだいぶ流行り終わった後に、小中学校の通学路にポータルが生えました。危険という理由で削除申請しましたが、未だに生えていますし、ポケストップにもなっています。

削除は申請できても実際に削除されるには時間がかかると思いますし、逆に生やすのはとても難です。不可能と言ってもいい状況です。

まずは削除申請したい人は、流行りが去った後まで待ったらいいと思いますよ。落ち着いて。

根本にある問題は「人が多すぎる」ということでしかないのですから。

生えるならジムよりポケストップがいい

かくいう私も「相模Ingress部」なる活動をしておりましたので、近所の集落や職場の周りにはたくさんポータルを生やしました。ごめんなさい。今は昼間でも夜中でもいろんなトレーナーが徘徊していて微笑ましく眺めているのですが、正直”人多すぎ”です。ごめんなさい。閑静な住宅街に、女子の一人歩きとか、酔っ払いとか、車運転したままプレイとかごめんなさい。

特に「ジムは邪魔くさいので御愁傷様」と思います。

エージェント(=日本語で言うところのスパイ)がコソコソ活動しているIngressと違って、ポケモンGOに一生懸命になっているゾンビ達は、パチンコ屋から出てくる射幸心煽られまくりで疲れた人たちと同じ目をしています。

ジムと違ってポケストップは商店にとっては良いです。ルアー入れれば確実に客寄せになるし、客が来たら赤提灯的にルアー入れても良い。桜吹雪で花見風なのもいいし30分ぐらいの有効期限&他プレイヤーへの付加価値提供は意味ある。

でも、ジムは喧嘩の種になるから今のところ様子見したいです。

ちなみに今日はジムでこんな感じでピッピの支援技?のようなものを発見。なんか応援している。

謎が多いジム戦ですが、結局は力の誇示と課金アイテム”ポケコイン”が入手できるという設計なので、ゲーム設計上の諸刃の剣です。数十円でもお金の価値があるものが設定されると人間は頑張ります。

ジム戦全てが否定されるべきではないけれど、これは公園のような「人が多すぎる」という問題とは少し違います。深夜の女性ひとり歩きや馴染みの商店・飲食店、”家の前”など身バレや声かけなど個人特定されると困る要素のほとんどはジム戦を中心に発展する「力こそが正義」の世界観が問題です。数は多くても少なくても、相対的な力の誇示が。

Ingressでは慣れている感覚なのですが「相手が反抗したいと思わなくなるまで叩き潰す」がPvPの真の勝敗ではないかなと。要はデビューしたり力を誇示するなら勇気いるって事。さらにゲームの中だけでなく、脇や背後にも注意ですよ。

ソロプレイ女子など”声かけられたくない人”にわかりやすい印が必要と思います。

もしくはジム戦しない。所有や縄張りの意識を捨てる。その勇気も重要。

 

もしあなたの家の前にジムができたら?

レベル上げたい、強いポケモンを育成したい、お前も同じ陣営だろ参加しろ、「五重塔のようになった我がジムは眺めが良いなあ!」とかいう気持ちはやっている方は楽しいかもしれませんが、そんなもん家の前に作られたら、家の前にヤクザの事務所ができたような気持ちになりますよ。年がら年中、”鉄砲玉”がスマホ持って家の前でウロウロしているのですから!

少なくとも自分はまともにプレイできなくなりますよ。

もう一度書いておきます、ジムの削除申請はこちらです。

 

そんなわけで横須賀はすごい

Ingress&PokemonGOガチ勢の皆さんはここまで読んで「そんなん当たり前だろ!!」って言ってそうですが、横須賀はすごいと思います。岩手も神戸も、それから鳥取も。Ingressでの経験が見事に生きているわけです。鳥取は「現代版・木を植えた人」に相乗りした形ですが、それでもフットワーク軽い自治体はそれだけで素晴らしいと思います。

横須賀の街中でプレイする人たちをウォッチしていますと。買い物帰りのおばちゃんや、中高生、米兵さんやその家族・・・たくさんの人々が市民権を得ている感じがします。

自治体の仕事というのは税金です。公(おおやけ)の仕事にするということは、数々の問題に取り組まねばならないわけです。いろんな視点がある人の意見を聞いて、それでも新しい取り組みに挑戦して、新しい価値を認めつつ、街を時代に合わせて変化させていかなければ、その先は「ゆっくりとした死」しかないのです。

深夜女子の一人歩きの問題も、「歩きスマホ危ない」、「ゲームは個人の楽しみだろ!」という考え方の人々も、結局は都市という人々が集まる集積地に暮らす問題を明らかにしてくれています。たくさんの人々がいるから問題になるのです。

そしてこの手の自治体は、異なる考え方の人々が同時に住むホームタウンが成立するように、常にアンテナを伸ばして頑張っているのが素晴らしいと思います。

私も行動力の割に影響力が全然ない、いちプレイヤーです。

だからこそこうやって筆をとって書き残しています。

ポケモンGOのおかげで、世の中の変化スピードが加速しています。

続きます。

あっ、冒頭に書いたイベントは8月21日に本当に開催しますよ。
一般の人は予約制なのでお早めに。
メディアの方も是非是非。

▼リアルワールドゲームを楽しもう!~安心・安全に「Ingress」や「Pokémon GO!」で遊ぶために~
http://www.cocoyoko.net/event/literacy.html

<関連投稿>

『Pokémon GO』に学ぶ商標問題と、VRを面白くするために「もっと大事なこと」。

『Pokémon GO』に学ぶ商標問題と、VRを面白くするために「もっと大事なこと」。

★文中、ポケモンGO、PokemonGoなど表記が揺らいでいまが、日本語表記については微妙な状況にあるようですので、本稿ではNiantic公式に従い可能なかぎり『Pokémon GO』と表記します。

ことの発端はこれ。本稿公開時で3,000RT(個人RTレコード更新)。

★ちなみに、最終的な拒絶査定でもないですし、商標ゴロに訴えられているわけでもないですし、今後日本で発売できないわけでもないですよ。RTする前に、このエントリーを中盤まで読んでくださいね。

手っ取り早く、くだんの発言の知財処理上の詳細を理解したい人はこちらの方のエントリーを読んでいただくのが良いと思います。

 

世間は Pokémon GO で大騒ぎです

 

この原稿はとあるWebメディアに向けて執筆していた原稿の成れの果てなのですが、技術だけでなく、社会的インパクトが大きすぎる上に、書いているそばから新しい話が出てきてしまい、もう個人Blogぐらいか書きようがない話になってしまいました。

まず『Pokémon GO』は大ヒットした位置情報ゲーム『Ingress』を作った Googleから独立したAlphabetグループ企業 Niantic Labs社 が開発した最新の位置情報ゲームです。

 

<動画:Ingress – It’s time to Move. (2012/11/15)>

 

IngressがSF風の雰囲気で演出されているのに対し、『Pokémon GO』はポケモンの世界感を大事に、その育ったポケモン世代にアピールしています。

<動画:UK: Pokémon GO – Get Up and Go!>

 

★ゲームの中身についての解説は、まだ日本でリリースしていませんのでまたの機会にいたします!

近日中に日本でもプレイできるようになるそうですので、ゲームのリリースについての情報はこまめにNiantic公式Blogと、公式Twitter、ストアを確認することをお勧めします(Android, iPhone)。

 

なお、本稿では分かりやすさのために、前作である『Ingress』の用語に訳せるところは可能な限りIngress用語で解説しています。Pokémon GO のゲームの詳細について予習したい人は公式のこちらの情報用語集を読むと良いと思います。

株価への影響

▼任天堂株が1年4カ月ぶりの日中上昇率、ポケモンが米首位(Bloomberg・2016年7月8日)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-08/O9Z08F6KLVS201

この記事の時点で「前日比11%高の1万6560円まで買われた」、とありますが、この記事の執筆時点(7/16)の10日間でも、オーストラリアやUKはじめとするヨーロッパの各国でリリース直後から話題となり連騰し、初週7月15日の終値で 2万7780円まで上がっています。長く低迷していた頃に任天堂株を最低購入価格である150万円で買った人は、 Pokémon GO リリース後に倍近い額になっている計算です。なお、任天堂は Niantic Labs社に3000万ドル(当時 約36億円)の出資をしていますが。直接の開発元であるNiantic Labs社や株式会社ポケモンは上場公開しておらず直接投資できない点と、ゲームと連携して遊ぶIoTデバイス「Pokémon GO PLUS」を近日中に発売する予定の任天堂株が買われているという情報です。

経済インパクト大、そして社会問題にも…

さて問題は株価だけではありません。その異常なまでのプレイヤーの熱狂ぶりが報道されています。

運転中の Pokémon GO 禁止、警察署やミュージアムでの Pokémon GO での進入禁止などはニュースが多すぎて把握できませんが、特徴的なニュースを引用しておきます。

 

▼アメリカ人、ついにメートル法を学習 「ポケモンGO」のキロメートル表記が分からず検索急上昇BIGLOBEニュース・2016/7/12)
http://www.excite.co.jp/News/it_g/20160712/Biglobe_7672285195.html

▼「ポケモンGO」公開4日で売上14億円突破、米調査会社データ(フォーブス・2016/07/12)
http://forbesjapan.com/articles/detail/12822

株価上昇だけでなく売り上げも大変な規模です。「公開4日で14億円」がどれぐらいすごいかというと、Niantic社の前作 Ingressでは「立ち上げから現在までの総売上が110万ドル(約1億1300万円)」(同記事, SuperData社の元記事)ですので、そのインパクトの大きさが売り上げ規模から想像できます。

一方で、同じSuperDataの調査によると、2016年にVR業界全体での売上は29億ドル(約3190億円)という予測。2020年には10倍以上の403億ドルに伸びるとして予測していますので、単純な掛け算・割り算では最初のインパクトが続くなら、VR業界全体の年間売り上げの1/3程度の規模となります。

経済だけではなく社会問題にもなりつつあります。

▼Teen playing new Pokémon game on phone discovers body in Wind River
(19歳が新しい携帯ポケモンゲームをプレイ中に水死体を発見, county10, 2016/7/8)
http://county10.com/201021174044426240

朝早起きしてポケモン探していたら、白骨死体とかじゃなくてけっこうナマ温かい死体を発見してしまったようです。ただ、このようなプレイヤーが増えることで犯罪抑止力の目にはなるかと思います。

▼Pokemon GO が、米国の夕方の公園の風景を一変させていた(Yahooニュース・松村太郎・2016/7/14)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/taromatsumura/20160714-00059978/

犯罪が多く、お世辞にも治安が良いとは言えない日没のアメリカの公園の景色が、Pokémon GO用語の「トレーナー/Trainers」、Ingressスラングでいう所の「不審者」がたくさんいて、大人も子供も皆何かに夢中になっているような写真が撮影されています。それを裏付けるかのようにこんなニュースも。

▼「ポケモンGO」に便乗? ヒラリー陣営、ストップで集会(日本経済新聞・2016/7/15)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN15H1I_V10C16A7000000/

日本では選挙権が18歳まで引き下げられましたが、アメリカではそれを笑うかのように Pokémon GO を選挙運動に取り入れているようです。日経新聞で「ストップ」と言えば株価の「ストップ高」なのかと思いきや「ポケストップ」、Ingressにおける「ポータル」、つまりゲーム上の「いかねばならない重要地点」で集会を開いているそうです。日経新聞の記事をそのまま引用しますが、

“ヒラリー陣営は集会にあわせ、ポケストップにモンスターを一定時間おびき寄せられるアイテムを使用する計画だ。陣営のサイトでは「無料でポケモンを捕まえ、戦わせよう。選挙人登録を行い、ヒラリー・クリントンについてもっとよく知ろう。子どもたち歓迎」として、家族連れの参加を呼びかけている”

候補陣営→エサ撒く→ポケモンやってくる→Pokémon GO ユーザ寄ってくる→話聞いてくれるかも?……それってつまり「ポケモンの力を借りて選挙に勝つ」という新モデルで、もはや「選挙にポケモンを召喚しているような状態」ではないでしょうか。日本の公職選挙法もこれぐらい斬新な方法を想定して整備してほしいものですね。

 

そして悲しい事件も起きています。

 

▼「ポケモンGO」に夢中の少女、車に跳ねられる(BIGLOBEニュース・2016/7/15)

http://www.excite.co.jp/News/it_g/20160715/Biglobe_3370741731.html

命に別状はなかったのですが、「ラッシュアワーで混雑している交通量の多い4車線の道路を横断」して事故に遭っています。事故後はアプリをアンインストールし他のプレイヤーに対して、「周りをよく見て気を付けて」と語っているそうですが、そのメッセージはアプリ起動時にも表示されています。

特にジム戦が白熱して盛り上がっているようで、動画を探すとポケモンを追いかけて人々が衝突しているような危なげな動画もあります。

以上のようなニュースは憶測やデマのような未確認情報まで含めるとたくさんあり、まさにとんでもない熱狂ぶりです。
Ingress or Pokemon GO

日本ではいつリリースされるのか?

日本ではいつ、Pokemon Go がプレイできるようになるのでしょうか?

待ちきれない人々からは「某巨大企業提携説」、「流行に弱い日本人の気質」、「サーバーの増強」など様々な憶測が飛んできます。

前作 Ingress を長くプレイするエージェント(Ingress用語;プレイヤーのこと)は、より多くの視点と経験を持っています。

まず、Pokémon GO が日本市場投入される時期として、最も早いタイミングとして見られていたのが、2016/7/16以降です。前作 Ingress が、世界中のプレイヤーを巻き込んだ大会を実施しており、その“最終決戦”Aegis Novaの最終ステージが、東京で7月16日に開催される予定でした(公式イベントHP)。Ingressの世界の上でも Aegis Novaで一旦のストーリー展開上の終結を見る、という設計でした。

▼Pokémon GO、Ingressのナイアンティック川島氏に聞く 1万5000人規模のAEGIS-NOVA TOKYO開催直前、Pokémon GOの日本での提供は(ImpressケータイWatch・2016/7/13)

http://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/interview/1010228.html

“川島氏:それらの国の優先順位が高かったというわけではありません。法律的な問題や安全性への配慮、時間が必要なものなどいろいろな要素が影響しており、慎重に選んだものです。重要性で決めたわけではありません。日本でのローンチが遅れているのは、サーバー自体が予想を上回るアクセスで、きちんとしないといけないというところです。発表だけして遊べないと言うのでは困ります。エンジニアは寝る間を惜しんで増強に努めています。近いうちに、日本でも提供いたします”

筆者も実際に取材を兼ねて参加してきましたが、CEOジョン・ハンケによるスピーチではやはり Pokémon GO のリリースに関する新情報はなく、そのタイトル名もあえて伏せてスピーチが行われるほどでした。

<動画:Aegis Nova Tokyo終了後のCEOジョン・ハンケによるスピーチ>

筆者の憶測の範疇を出ませんが、川島氏さんの「法律的な問題」、John Hanke氏の「名前を言えない」という点から日本は商標登録に問題があるのかもしれません。調査してみると「ポケモンゴー」と呼べる商標は任天堂から「商願2015-086693」として出願されており、任天堂株式会社、株式会社クリーチャーズ、株式会社ゲームフリークが権利者として明記されていますが、現状は「存続-出願-審査中」になっています。「Pokémon GO PLUS」(商願2015-087286)も「存続-出願-審査中」ですが、同時期に提出された文字だけの「Pokemon GO PLUS」は2016年5月27日に登録となっています(登録5852656)。どうやら類似商標などを懸念して審査官から拒絶のお知らせが出ているようで、補正手続きも出されていますが、7/16時点で最終的な判断まではたどり着いていないようです。

これはそもそも任天堂の商標出願ですし、一方で商標登録までたどり着いていなくてもサービス開始しているポケモン関連アプリもありますので、なかなか難しい問題ですが、これが日本でリリースできない理由のひとつになっているのかもしれませんね。インタビュー記事やイベントでの発言にも納得がいきますし、実際の係争が起きているわけでないようですが、商標関連は片っ端から出願してくる会社もありますので騒いでもいいことはありません。あくまで公式には「サーバーの増強」として、憶測は憶測として応援しながら見守るしかありませんね。

Q6-PokemonIP<原稿執筆時点での「ポケモン」関連商標検索結果(一部)、(日付左)が出願日(日付右)が登録日>

 

“ポケモン”は商標問題のポケットモンスター

結構身近なところでこんな話も聞こえてきますが、

▼クライアントや上司に「ポケモンGOみたいなゲーム作って」って言われた時に投げつけるまとめhttp://togetter.com/li/999088

そもそも「ポケモン」や「ポケットモンスター」の商標って複雑なんですよね。

ポケモンだから複雑だというか、長年売れたタイトル、かつ自社発ではないIP(知的財産権)だとなおさらです。

▼ポケモンを例に出して世界一簡単に商標登録とは何かを説明するぞぉ(2016-04-18)

Pokémon GOはARではない…?

一方で、海の向こうのポケモントレーナーから「ARゲームじゃない、IPの力で成功した位置情報ゲームだ」なんて意見も出てきます。

冒頭に引用した米調査会社SuperData社も「Pokémon GO ARではない」と明言しているのも興味深いです。

我々はIP取得を忘れていないか?

たしかにIngressや Pokémon GO を支えるテクノロジーとして重要な技術は、「スマホでのAR」というよりも「大規模・多人数・同時の位置情報ゲーム」という点です。しかし「ポケモン」という長年任天堂他が培ってきたIPも上記の通り「なんとか守ってきたIP」という説明の方が正しいと思います。

任天堂のポケモン関連の商標をみると、本当にギリギリまでがんばって、登録の見通しが立った瞬間に出願をしていることが感じられます。日本の特許や商標は公開制ですので、新しい出願があったときには皆さんに異議申し立てができるように公告されます。興味がある人は特許庁の検索(無料)やTwitterの商標速報bot(@trademark_bot)などを追いかけてみると良いでしょう。

でも、任天堂がギリギリまで商標出願しない理由のひとつは、他でもないゲームファンの人々が商標出願情報から新ポケモン名を書き立てたり、商標ゴロに連想できるような類似特許を取られないため、でもありますよね。

みなさん新しいVR作品を取得する時に、IP取得していますか?

IPといってもよくいうキャラクターのことではありません、もちろんインターネットプロトコルのアドレスでもありません。Intellectual property、具体的には特許出願と商標出願をしていますか?

私は企業との共同研究や商業案件の場合は必ず特許か商標を出願しています。

単独個人のお金で出願することもありますし、共同研究先と共同出願することもあります。大学から業務特許で出願して大学の保有になっているものも多いです。

出願したものが全て権利化されるわけではありませんし、むしろ特許の場合は物言いがついて頭を悩まされることの方が多いです。

しかし他者に真似された時も悔しいですし、訴えられるのも困ります。

でも、最も辛いのは「将来自分が特許や商標を出願した時に、自分の作品のおかげでIPが成立しない」という時ではないでしょうか(まあ味わってみないとわからないでしょうけどね…)。

この先、VRやARで一山当てよう、とおもっているあなた。

作り手なら、まずはIPについて学びましょう。Pokemon GOの問題は、学ぶよい機会ではないでしょうか。

 

IngressとPokemon GOの本質を見抜け

ところで、現在のゲーム業界はインベーダーのコピー基盤の販売で拡大したという歴史を覚えている人はおりますでしょうか?

PlayStationのDUALSHOCK2に実装されていたバイブレーターの制御技術が、PlayStation2を一時発売停止に追い込み、特許問題になったことを覚えていますか?
(なお、この技術は白井の修士時代の研究に大変関係があるものです…)

今、IngressとPokemon Goの人気の本質にあるものはなんでしょうか?

ポケモン人気?位置情報ゲーム?それらの本質を見抜いておかなければ(一時は劣化コピーで儲かる瞬間もありますが)、ものづくりの原動力が見抜けていないということです。継続的にはその後の訴訟やサポートで大変な痛い目を喰らうかもしれません。

私はこう考えます。

多くの社会的影響も含めて、設計上、強く人々を惹きつけているのはGPSを用いたスマートフォンゲームであること、特にその中でも「マルチプレイヤーARであること」が最も重要ではないでしょうか。

Google MapsやGoogleが支えるサーバー技術は確かに強大なのですが、AWSやPhoton、そしてGoogleのサーバーサービスなど、本質的にはお金を出せば買えるものなのです。そもそもNiantic Labs自体、(2014年のGDCにて)Ingress APIをUnityプラットフォームに提供する準備がされており、Pokemon GO自体もこの環境において開発されているようです。

スマホARは今後、Pokemon GOを軸に大きく転換期を迎えるものと感じています。

VRエンタテイメントでは今後、実体体験型VRとマルチプレイヤー型のモバイルARにすみわけが進んでいくのではないでしょうか、その中で、既存IPとの連携、VRにおけるStory(ナラティブ)など考えることは多いのですが、それもやはり、人々が飽きればそれで終わってしまう可能性がある演出要素でしかないのではないでしょうか。驚異的な存在であることは間違いないです。

VR/ARエンタテイメントでみんなが忘れていること

このように強大な存在ではあるのですが、実は、Nianticの人々はPokemon GOを作ったのは、他でもない、Ingressのエージェントたちだ、と明言しています。これはリップサービスでしょうか?たしかにお世辞なのかもしれませんが、この22歳の青年のスピーチを聞いて何を感じますか?

Pokemon Goが出たとしても、インストールしたとしても、Ingressが生んだものは強大です。

技術やIPは大事なのですが、コミュニティを醸成していく技術は超大事です。

そして、私は「Nianticの杜撰さ」は褒められることではないけれど、その先進性と「未完成さ」は評価できると思います。

日本でのリリースはいつになるかはわかりませんが、世界各国で Pokemon GO が始まってから起きたことは、Ingressと人々を研究する側としては「想定されていること」でした。

 

相模Ingress部で学んだこと

ちょっとした余談になってしまいますが、筆者は相模原市立博物館と協働で、位置情報ゲームをつかった相模原市全体のフィールドミュージアム化についての共同研究を行っており、2013年からARやGISを使ったゲームによる人々の理解や行動がどのように変化するかについて調査しています。

その中でも、ゲームをゲームの中だけで終わらせるのではなく、積極的に経済活動につなげたり、プレイヤーへの啓蒙活動や、文化・知的探求活動につなげていくための手法や知見、データをまとめています。

▼相模Ingress部

http://ingress.sagamiharacitymuseum.jp

▼フィールドミュージアム構築における代替現実ゲーム「Ingress」の活用 (SliderShare)

▼代替現実ゲーム「Ingress」で魅力的なまちづくり ―プレーヤーも、観光客も、地域住民も喜ぶためには(観光政策フォーラム・2015/4/1)

・Part1 ゲームが観光客を連れてくる!?
  https://www.kankou-seisaku.jp/ksk/jsp/kankous/st?n=87&d=1

・Part2 ゲームを使ってフィールドミュージアムをつくる―市立博物館との市民協働プロジェクト―
 https://www.kankou-seisaku.jp/ksk/jsp/kankous/cr?n=87&d=19

・Part3 Ingressで見える、魅力的なまちとは
 https://www.kankou-seisaku.jp/ksk/jsp/kankous/cr?n=87&d=20

Fuchinobe2 FuchinobeFuchinobe3

<筆者主催のイベントでの相模原市渕野辺駅前の商店街の様子・Ingressエージェントと地元商店街の融合が見える>

 

今となっては、この規模のIngressイベントは珍しくなくなってしまいましたが、Ingress公式のXF(cross faction, 両陣営合同)イベントが発表される前から、JAXAや はやぶさ 、博物館と絡ませた初詣やら、豆まきやらを企画し、Ingressをハックして楽しんでいたのです。

クラシックなITやサービスの考え方では「ペルソナ」つまりユーザはたいてい一人として設計されています。しかしミュージアムやMMMMORPGのプレイヤーはひとりではないのです。

 

<上記SlideShareから:ミュージアム来館者は単体ではないため、複合ペルソナを考える必要がある>

Ingressガチ勢問題

一方、位置情報ゲームをあまりプレイしない人々からは、特に「Ingressは”ガチ勢”が多い」と言われ敬遠されます。

確かに、装備や行動、発言やリーダーシップにおいては「普通じゃないな」とか「XMでアタマやられているな」(訳注:XM=エキゾチックマター, Ingress世界でそこらじゅうに拡散している謎のエネルギー)という人もたくさんいらっしゃいます。

しかし、Ingressのプレイヤー全てがガチ勢というわけではなく、ゆるふわ勢も、コスプレしながら楽しむ人も、妊婦さんもいます。

Ingressというゲームの設計や戦略上、そのような行動を取る人、またうつ病や肥満、運動不足の解消を目的としてゲームを開始した人も多く、ちょっと変わった人も多いです。

ネットではガチ勢の人たちばかりが目立ちますし、ハングアウト(訳注:Google Hangouts、Ingressのエージェントが情報交流に使っていることが多い)ではものすごく高圧的な人物が、会ってみると以外と温和な人だったりして、なかなか見極めるのは難しいのですけれども。

一方で、ガチ勢の中でもこのゲームを愛する人々、ボランティア精神がある人はただゲームをプレイするのではありません。運営と連携し、陣営や自分が所有するポータルや実績を一旦忘れ、寄り添ってコミュニティ醸成活動に参加します。そうしないと、位置情報ゲームは固着しはじめると「これは俺の所有物」と考える人も多くなり、それによる力の誇示や争いが生まれ、初心者が入りづらくなり、活動範囲も狭くなり、カルト・セクト化してしまいます。これはイングレスのようなMMMMO(Map-based Mobile MMORPG,マップベースモバイ大規模多人数オンラインゲーム)だけではなく、一般のMMOでも同じ傾向があります。

クリエイティビティを発揮できるゲーム

一般のMMOと同じ要素がある一方で、Ingressの「遊び」のもう一つの重要な要素、それは「自由」です。

カイヨワをベースにした[遊びの成立]の現代語訳。遊びは「遊ぶために遊ぶ自己目的性の行為」であり、「隔離された活動」,「非生産的活動」,「虚構の活動」, 「規則のある活動」,「未確定の活動」そして最も重要なのは「自由な活動」 であること。 自由はいつでもやめられること。日常と非連続、現実世界に富を生まない、現実とは区別がつく (写実でもよい) 、遊びの世界を支配するルールがある、先が読めない、選択の自由がある、「遊び」の成立。これら全ての特徴がそろっているときに純粋な「遊び」が成立し、「遊戯状態」にあると定義できる。

上図はカイヨワをベースにした[遊びの成立]の現代語訳。遊びは「遊ぶために遊ぶ自己目的性の行為」であり、「隔離された活動」,「非生産的活動」,「虚構の活動」, 「規則のある活動」,「未確定の活動」そして最も重要なのは「自由な活動」 であること。

自由はいつでもやめられること。日常と非連続、現実世界に富を生まない、現実とは区別がつく (写実でもよい) 、遊びの世界を支配するルールがある、先が読めない、選択の自由がある、「遊び」の成立。これら全ての特徴がそろっているときに純粋な「遊び」が成立し、「遊戯状態」にあると定義できる。

「行動の自由」や「やめる自由」もさることながら、現代ではプレイスタイルや表現、つまりファッション性や同人制作など「個々のユーザのクリエイティビティを発揮できる自由」も重要な要素です。

<写真上:様々なファッションで参加する>

<写真下:同人制作の数々>

動的ペルソナ:「白井博士の未来のゲームデザイン」より
動的ペルソナ:「白井博士の未来のゲームデザイン」より

これは「白井博士の未来のゲームデザイン」において予言していた「動的ペルソナ」が確実に進んでいるということで、Pokemon GO登場以降、2016年以降はこの図の動的ペルソナに「Pokemon GOをプレイする女子」を想定してエンタテイメントシステムを設計していかねばならないということです。

 

みんな新しい体験が欲しい

どうしてあたらしいゲームを始めるのか

筆者の調査によると、日本人が初めてゲームを開始する年齢が「4歳」で、その理由は「プレイしたいゲームがあったから」ではなく「友人や周囲の話題についていきたい」というモチベーションが切っ掛けになっています(幼稚園におけるヒアリング、大学生に対するアンケート中心の調査による。本当は大規模調査したいので誰か一緒にやりましょう)。つまり「ゲームを開始する理由はそもそもソーシャル」ということです。

また新しいゲームを開始する時、特にプレイしたことがない「新しいジャンルのゲームを開始すること」は人々によって難しく、ちょっとした挑戦になります。自分の意思ではダウンロードしないアプリをダウンロードする時は、仲の良い、信頼できる他人から誘われる時が最も有効に働きます。新しいSNSツールなどがまさにその典型で、自分が信頼しているリアル友達に誘われない限り、もしくは強い強制力がある、センスいい、出し抜かれたくない、話題についていく必要がある、といった理由がない限りは新しい価値観のゲームをプレイしたりアプリをインストールする事は、なかなか期待できないのではないでしょうか。

Pokemon GOを始める理由

その中で、Pokemon GO が持つ魅力、「Pokemon GOを開始する理由」だけでも列挙してみるとこれだけの要素があります。

・ポケモン世代

・既存スマホゲームに飽きた

・Ingressエージェント

・運動不足解消したい

・なんだか米国で話題なので

・(非ポケモン世代)子供がインストールしろというので

・(非ゲームプレイヤー)株価への影響がすごいので知っておきたい

多くのPokemon GOプレイヤーや、未リリースの日本市場が気づいていない点も指摘しておきます。

ほとんどのスマホユーザーが「友達が欲しい」と思ってゲームをダウンロードしたりはしません。

しかし Ingressは大会に出ると、ほぼ高確率で新しい友達が増えます。

 

Ingressは愛されているのです。
(時には愛憎余ってたいへんなことになりますが)

そんなこともあって、Niantic LabsはIngressエージェントを中心に、Pokemon GO の日本でのベータテストを事前に行っています。体験したIngressガチ勢は「Pokemon GO は Pokemon GO、IngressはIngressで面白い」と言っています。やっぱりIngressは愛されているのです。一目惚れがそのまま続いている感じです。

専用ハードウェアこそが頑張る場所

上記の通り、”ガチ勢”は簡単に乗り換えをするのではなく、今後、IngressとPokemon GOなどそれぞれの位置情報ゲームにあわせてスマホ2台持ちといった方法に流れていくのではないかと予測します。その中で、Pokemon GO プレイヤー専用のIoTガジェットである『Pokemon GO Plus』や任天堂が売り出すかもしれない関連商品や専用ハードウェアのような展開は、さらに新しい文化や商機を生み出すと見ています。

日本製品が世界で成功するなんて話は、本当に最近聞かなくなってきているなか、
任天堂は頑張って商品展開を進めてほしい!と思います。

 

もちろんNiantic Labsも動いています。他社の参入チャンスも大いにあると思います。

▼ポケモンGO、ARデバイスへの対応等、今後の新機能に期待(MoguraVR・2016/7/14)

http://www.moguravr.com/pokemon-go-ar-vr/

ポケモンGOを近々リリースされる可能がある新型Google Glassや、Microsoft HoloLensなどのウェアラブルARデバイスで体験可能にすることも検討中だとハンケ氏は語っています。

(関連記事)ポケモンGOがVRに対応の可能性 ライセンスが示唆か

みなさん知らない人も多いので、Niantic Labs社のCEOである、John HankeがGoogle Mapsを作るさらにはるか前に、何を作っていたか、紹介しておきます。

Windows95の時代にMMORPGを作っていた人物が「自分の子供を外に連れ出すゲーム」を作ったのがIngressです。時代を先取りしすぎです、しかも「Meridian 59」は、権利問題を解決して、いまでもプレイ可能な状態でネットに存在しています。

John Hankeの挑戦はまだまだ続くのではないでしょうか。

そして、この先進性を一緒に楽しんで、未来に進めていかければなりません。

 

IngressやPokemon GOはコンテンツなのか?

筆者が今回、Aegis Nova Tokyoで見たかったのは、Ingressの人気や人々の行動・理解がどのように変化していくのか?といった点です。課金アイテムの売れ行きとかアフターパーティーの人の集まり方とか。そもそもIngressは終了するのか、Pokemon GOは始まるのか。

そういった「IngressやPokemon GOはコンテンツなのか?」といった疑問に、Aegis Nova Tokyo終了後の私は明確にNo、だと言えます。

Ingressは世界システムです。エンタテイメントシステムです。
Pokemon GOも次なる可能性やポテンシャルを秘めています。

それは一過性の人気ではなく、人類の歴史に大きな第一歩を与えるアクションであると感じます。

 

どう控えめに見積もっても、
長年続いたJRの「ポケモンスタンプラリー」は来年夏には終了していると思います。残念ですが。

夢の世界がどこにあるのか?

ARで想像を補うのか、VRに自分を浸すのか。

ARは宇宙のリアリティです。VRは地球のリアリティです。

どっちがいいか?そんな宗教戦争は無意味だと思います。

 

夢の世界を地上に持ってくる技術は、たくさんあっていいとおもいます。

Pokémon Go の日本リリース、いろんな問題が片付かなくて、いつまでたってもラウンチしないけど、おかげで新しいARゲームやビジネスのアイディアはどんどん出てきます。

GoogleGlass今売れよ!的な。 

ちなみに、現在公開されている Pokemon GO はトレイラーで描いていた機能のほんの一部でしかない、今後もどんどん機能追加されていくはずです。負けていられません!!

 

まとめ

まったくどうにも信じられないぐらい長いエントリーになってしまいましたが、最後まで読んでくれてありがとうございました。

『Pokémon GO』に学ぶ商標問題と、VRを面白くするために「もっと大事なこと」。

・”ポケモン”は商標問題のポケットモンスター。

・VRコンテンツ作ってる人は、特許でも商標でもいい、IPとっとけ、いますぐとっとけ。

・プレイヤーも作り手であることは楽しい

・プレイヤーは複合ペルソナ、ひとりじゃつまらない。

・プレイヤーは動的ペルソナ、Pokemon GO以降を設計せねば。

・ライブ感、みんな集まるMMMOを維持する技術

・みんなに愛される必要性

・ハードウェアこそがんばれ

 

以上、テクノロジーの話ではない話ばかりで、何も前に進んだ感じがしない話になってしまいましたが、なんでこんな長い話を書いたのか、というと、私も「ひとりじゃつまらない!」のです。

ARやVRのエンタテイメントシステムのその未来を、これからもバシバシ解説していきたいと思います。

世界のエージェントやトレーナーたちと一緒に、今日も、歩きます!

 

 

 

追記

おとなり韓国も…

そういや日本のGoogle Mapsの地図著作権もいろいろ問題あるわけですが、これは Ingress で解決済み。
こうやってNianticがいろいろ風穴あけてくれているという理解もできる。

【機密文書】Ingress, Machi Café Drink Card でわかること【取扱注意】

本記事は個人の妄想とXMを含んでおります。

2015年7月7日の七夕の日から、「Ingress, Machi Café Drink Card」(以下”IMDC”)が発売になりました。

IMDC1

 

2014年11月15日にIngressとローソンが提携した日に「ローソンポータルの効果」というエントリーを書き起こさせていただきました。

その後も、私自身は博物館とのコラボレーションや地方創生のシナリオに関連した研究などを国内外で執筆させていただいておりますし、当のIngressもAXAシールド、MUFGカプセル、Softbankウルトラリンクに伊藤園の自動販売機ポータル化など、特に日本企業との提携に力が入っており、無料ベースのスマホゲームに新しい取り組みを挑戦する姿勢は、単なるメディアアート、Googleの実験的な取り組みという枠を超えて、世界のゲーム開発者が注目すべき状況になってきているといえるでしょう。

今回は、このIMDCをテーマに、エンタテイメントシステムの未来を考えてみたいと思います。

まずはIMDCを入手。

こちら、とあるエージェントさんからいただいた、IMDCです。ありがとうございます!さあコーヒー飲むぞー。

IMG_4905.JPG

 

私の周りだけでなく、FacebookのIngress関連グループなどでは、

・7/7の午前0時から並んで買った
・近所のローソンになかったので数件回った
・店員がIngressのことを知らないので説明が大変だった
・数枚買い占めた
・プレゼントすればIngress流行らせられる
・武器とか足りないときにいいねー

といったレポートがTLをにぎわせております。

6種類42個というインベントリがあふれそうなほどアイテムコードがついてくることもあり、Ingressプレイヤーであるエージェントたち(以下”Ingress民”)は、この”リアル課金”はおおむねポジティブのようです。

かくいう私も、今年の正月にこのようなリアル課金をしておりました。3000円のプレミアムつき、マチカフェドリンクカードです。

このつぶやきが1/7なので、6ヶ月でぴったり商品化されました。ただの思いつき、Twitterつぶやきが、現実の商品になるという流れは考えようによっては悪いことではないですし、この商品の実現のために何人もの関係者が開発や説得をして進めてこられたものだと推察します。ローソン明子さんに絡んでもらえたらもっと嬉しかった。同じ名字だけに。

Ingress民の多くも、Ingressのサーバーを支える技術やコストがゼロ円であるとは思っていませんし、ローソンと提携することでこの楽しいゲームが長く続くであろうという期待、そして、さらに多くの人々がIngressの魅力に気づくであろうと期待していることを感じます。

 

しかし。

Ingressを研究する身としては、いろいろ気になる点があります。

 

それは、
・Google/NIAがローソンとどのような情報、契約、ビジネスの上で、この商品が成立しているのか?という点と、
・Ingress民がこの商品に対して何をコストとして払っているのかという点。
・これによって、ARG(この手のゲーム)開発者がどのような可能性を得たのか?というビジネス以外の可能性

もちろん、私は開発者ではなく、市中の一般プレイヤーですので、推測の域を出ませんが、ITなりゲームなり、メディアアートやエンタテイメントシステムを研究する側としては見逃せない実験要素があることに気がついています。それを発売から48時間経った現在、明らかにしておきたいと思います。

(1) どこのローソンで買うか?

ローソン公式の「このカードを取り扱っている店舗はこちらから」というリンクで、取り扱い店舗を確認することができます。
これはすばらしいストアチェーンマネジメントで、公式HP上ではこちらのURLへリンクされているようです。
http://store.lawson.co.jp/lw_gadget/index.html?type=2&json=new_json/ingress1
(あたかも…つぎのキャンペーンもありそうなURLですね!)

ローソンの店舗のリストは、そのままポータルのリストでもあるわけですが、今回注目すべき点は「扱っている店舗と扱っていない店舗がある」という点です。ローソンは、フランチャイズですので、ローソンの店長さんや仕入れ担当者が「こんなわけのわからん商品は要らない」と思えば発注する必要はありません。しかし、それが店舗に並んでいる、しかもレジ前というよい場所です。ストアオーナーからすれば、腐ってロスになるわけでもない商品ですが、ほかにもWebMoneyやゲームカード、Amazon商品券、AppleやAndroidのストアプリペイドカード系を並べる場所のかわりに「マチカフェ」変り種のプリペイドカードを置くことには何かしらの利益があると考えます。大した利益がなかったとしても、コンビニ他社に後れを取りながらコーヒーマシンを設置したローソンとしては、少しでもコーヒー利用率、マシン稼働率を上げる貢献ができれば、と考えるのは普通でしょう。

しかし、「取り扱わなかった店舗」はどのような思考なのでしょうか?このようなバーチャル商品には興味がないのか、理解がないのか、それとも近所にはまったくポータルもなく(ローソン=ポータルなのでそれはありえない)、「Ingress民がいない」と認識されているのか、それともIngressが嫌いなのか、コーヒーマシンがないのか。

どうせ買うのであれば、近所のローソンではなく、ちょっと辺鄙な場所にある、お住まいや職場から遠いローソンで買ってみてはいかがでしょうか。理由は後に続きます。

(2) いつ買うか?何枚買うか?

実はこのカードには有効期限があります。上で紹介したプレミアムつきプリペイドカードは初回利用時にアクティベートされる仕組みらしいのですが、今回のIMDCは「購入時より6ヶ月」と明記されています。つまり、購入時にPOSレジ通した瞬間から、完全にトラッキングされているということです。

IMG_4918.JPG
IMDC(Ingressマチカフェドリンクカード)の裏面:Ingressのパスコードに併記され、カード番号、さらにポスレジ用のバーコード、マチカフェWebサイト上で利用できるPINコードが続きます。

コンビニで売っているIngress関連商品が完全にトラッキングされている。

=これはIngress民にとっては新しい体験です。

今までも、Ingressついでに深夜の変な時間にローソンに立ち寄り、Lチキを頬張ったり、トイレを借りたり、立ち読みしながら5分待ったり、カフェを利用したりしてきたわけですが、その行動は自由でした。しかし、今後、Ingress民はすべてこのカードで紐付けられ、記録可能になったということです。すばらしい。

これが意味することは、こういうことです。

・午前0時に並んで買ったのは誰か
・まとめて買ったのは誰か
・まとめて買って誰に配ったのか(ソーシャルグラフ)
・近隣のIMDCがないローソンではなく、そこに移動したのはなぜか?ローソン内ライバル店はどこか?
・Ingress民が現れる時間帯はいつか
・Ingress民は何を買うのか、コーヒーと連携して何を買うのか?
・Ingress民はどんなコーヒーを買うのか?(カフェラテは甘いのがお好きなのかどうか?)
・Ingress民はどの程度の頻度でローソンに来るのか?
・Ingress民はこのカードの残額をどう処分するのか?有効期限内に使いきれるのか?
・(コーヒーは同時に2個は飲めないので)、単身来店なのか?
・ついでに何か買う場合、Ingress民は現金が好きなのか?その他の支払い方法が好きなのか?
・ローソン店員がこのカードを持っている人をIngress民と認識しやすくなる

IngressのエージェントIDはわからないかもしれないけど、NIAとローソンの連携がより強固な連携でポータルハッキング状況との紐付けができると、もっといろんなことがわかります。

・このIngress民は緑か青か?レベルはいくつか?
・このIngress民はポータルオーナーか?
・このIngress民はどんなメダルを獲得しているのか(プレイヤーモデルの分類)
・過去に何回、このローソンを訪れているか?
・IMDCが有効期限後も、ハッキングついでに何か買ったりするのか?
…などなど…(ほかにもありますが)。

つまり、ローソンがIngressと提携以後6ヶ月、知りたくても知ることができなかった、「このお客さんはIngressが目的/刺激になってこの店舗に来たのだろうか?」という最大の謎が、このカードによって紐付けられるということです。これはIngress側も知りたかったことですが、NIAはポータルのハッキング状況や、個々のエージェントがどのような行動をしたかは(ゲーム内ではわかっても)購買行動までは調べられません。またローソン単体では調べようもない情報であることは間違いありません。

「Ingressをプレイする人、しない人」、という境界線のなかに、「自分の個人情報がバレるのが怖い、自宅を襲われそう」というラインがあると思います。

ガチなIngress民は、
・そんなこと気にしてたらこのゲームできない
・自宅とかバレないようにすればいい
・ストーキングされても守ればいい、失うものがない
・他人に恨みを買うようなプレイをしない
といった方法で自己解決/納得してきたとは思いますが、IMDCの購入や使用については、敵エージェントやゲーム内行為ではなく、胴元による消費+行動の分析がさらされていますので、さらに注意が必要かもしれません。あくまでビッグデータの常識から類推した可能性指摘なのですが。

 

(3) タヌキと組み合わせて買うのはきわめて危険な行為

上記(2)はGoogleのポリシーである「Don’t be Evil」(Googleは悪になってはいけない)という原則からすれば、一般消費者は「えーそんなことありえないですよね?」と思いたい、しかしながらGoogleは2013年頃から「Don’t be Evilはばかげている」との方向性を出しています。

もちろん私は開発者としてGoogleのサービスを愛していますし、2000年に初めてGoogleのクローラーボットに出会って以降、Googleのないインターネットなど考えたこともありません。GoogleMaps、IngressやNIAももっとがんばってほしいし、社会(企業ではなく一般のエンドユーザ)への理解ももっと進んでほしいと思い、この長いエントリーを書いています。

そもそもIngressは”エージェント”というスパイ的な存在で、この現実の世界にて隠密活動をしているのではなかったか?

しかし、企業の提携というものは、単体のロジックやポリシー、理念では動かないものです。

たとえば、Tポイントカード、ローソンでいうところのタヌキのロゴの入ったポイントカードについて考えると、規約上このようなことが明記されています。

http://www.ponta.jp/c/rule/

第2章 第2条(個人情報の収集、利用、提供・預託)
当社及びポイントプログラム参加企業は、本章第3条に定める利用目的のため、例えば、以下のような個人情報につき保護措置を講じた上で適法かつ公正な手段により収集・利用します
(1)属性情報 会員が所定の申込書に記載する等により申告した会員の姓名、生年月日、性別、年齢、婚姻の有無、郵便番号、現住所、電話番号、メールアドレス、職業、未成年者の場合、親権者の姓名と親権者等、会員の属性に関する情報(その他申込時、及び申込後に会員から通知を受ける等により、当社が知り得た変更情報を含みます。以下同じ。)
(2)契約情報 入会日、入会店舗、会員番号、会員証の状況等の契約内容に関する情報
(3)ポイント情報 ポイントの付与、利用、残高、利用店舗、会員証の利用履歴等のポイントに関する情報
(4)Pontaカスタマーセンター等への問い合わせに関する情報 Pontaカスタマーセンター等への問い合わせの際の音声情報やEメールの情報
(5)当社のWeb(当社のWebの広告主、広告サービス配信事業者等を含む)及びポイントプログラム参加企業のWebサービスを利用・閲覧した場合の、閲覧したページ、広告の履歴、閲覧時間、閲覧方法、端末の利用環境、クッキー情報、IPアドレス、位置情報、端末の固体識別番号等の情報
(6)モバイル端末による位置情報
第3条に定める利用目的達成のために必要な範囲で業務を当社及びポイントプログラム参加企業が他の企業に委託することがあります。その場合には、当社及びポイントプログラム参加企業は、当該委託業務の処理に必要な範囲で、個人情報の保護措置を講じた上で会員の個人情報を預託又は提供します

つまり、わかりやすいシナリオとしてはこうです。POSレジで、タヌキのロゴの入ったカードとともに、IMDCを買ったとします。そうすると、

[P]いままでの購入履歴
[P]何時にどこの店舗で、何を買ったか?
[P]住所、家族
[I]自宅から最も近いローソンはどこ?
[I]お勤め先から最も近いローソンはどこ?
[P+I]きょうもガーディアンでローソン守ってくれてありがとう、Lチキ新味はいかがですか?
[P+I+Chrome]きのうは新作アニメを検索してましたよね、レジ前サイネージで関連商品をご紹介しますよ!

[P]はタヌキのカードだけで収集できます。情報は株式会社ロイヤリティマーケティングというローソンや三菱商事、リクルートなどが出資している会社が管理収集しています。2010年時点で7000万人の会員がいるようです(Ingressのプレイヤー人口の比ではありませんね!)

しかし、オンラインショッピングをしているわけでもないユーザのデジタル+アナログ世界での行動や習慣データを収集することはなかなか難しいです。例えば、朝夕の購入データから「お勤め先や通勤路」を個々のユーザに推測することは可能かもしれませんし、朝は「コーヒー+パン」なのか「コーヒー+おにぎり」なのかは調べることは簡単ですが、このユーザが「ローソン以外のコンビニに行かない保証がない」ので、その精度は低いものになります。

しかし、Ingress民は「コンビニ?ローソンか、それ以外か」という感覚ですよね。

[I]はIngress単体でもわかる情報です。朝夕のソジャナメダルの獲得のために、多くのIngress民が自宅近隣のポータルでその日最初のハッキングを行い、職場近隣のポータルでしばしスキャナがオフラインになります。そして再度そのポータル近隣で昼休みを過ごし、ローソンや近くの飲食店に行き、帰りは最寄の駅から自宅最近隣ポータルに向かって帰宅し、最後は動かなくなります(眠っている)。

なお、地価やお勤め先の住所から、年収を推定することも不可能ではありません。むしろ、ほかのアプリやGoogleのほかのサービスより、Ingressのほうが適切にその人のアナログ世界での行動を把握しているかもしれません。

さらに[P+I]がIngressとタヌキの連携で達成できる広告・マーケティングの一例です。

[P+I+Chrome]はIngressとGoogleのサービスが結合し(技術的には何の壁もありません、現在のIngressの規約上では読み方によっては利用可能ではある)、ローソンでのターゲット広告に利用した例です。

 

じゃあどうすればいいの?

もはや、これはSFではありません。

あなたの見ている世界が、私の書いたBlogでの妄想と異なるなら、認識は変えたほうがいいかもしれません。

私たちがタヌキのカードを利用して、個人情報を数円の報酬に変換していることを知らなかったのでしたら、まずはそこは知っておいたほうがいいと思います。

無料でプレイできるゲームが、原価がゼロ円で作られているわけでもありませんし、運営にもコストがかかります。さらにいうとローソンもGoogleも私企業ですから、株主が「利益を出せ」と開発・運営側に迫れば多少のプレイヤーは減っても、規約の変更や、マーケティングへの利用やマネタイズは可能であるし、そのためのテストを行う時期に来ているという認識を持つべきであると考えます。

「これはまさにエンライテンドとレジスタンスのXMというビッグデータをめぐるゲームなんだね!!」

と開き直って遊ぶのもありだと思います。

日本のゲームプレイヤはコミュニティ温情派が多いので、「IMDC導入を機会にこのゲームから去るぜ!」という人は少ないように思います。

(それも含めて調査できてしまうのが今回のコード商品の難しいところです)

そもそもXMの正体は、Wifiや携帯電話網のパケットの残りかすだという説もあります。

Ingress民にはおなじみの「WifiをONにするとGPSなしでも位置推定ができる技術」には、WifiのMACアドレスと電波強度とGPSのヒントをひもづける必要があります。iOSでもAndroidでも同じような技術が実装されていますし、GPSはAndroid標準化では最低限実装しなければならないデバイスのひとつとなっているそうなので、腑に落ちる点が多くあります。そもそも我々はXMやポータルを追いかけて、世界中のエージェントとこの世界を旅する以上、避けて通れない問題なのかもしれません。

そういえば、日産のLEAFもシリコンバレーの研究所で、だれが、どんな走行をして、どこからどこを往復して、どこで給電して、どこが壊れそうで、これはいつものドライバーとは違って…といった情報をビックデータ化し、APIとして外部に公開するサービスに展開するという計画が発表されていました。

■ IVR展2015に行ってきた/日産とコマツの特別講演拝聴録
http://aki.shirai.as/2015/06/nissan-komatsu-ivr2015/

IoT時代はこのような非IT分野のプレイヤーが、いったんエンドユーザ、ビッグデータを経由して、IT経由で何かの利益を回収するという仕組みが一般化していくのかもしれません。
そのような時代に、
・俺の個人情報だ!
・公共のために
・悪の企業め!
なんてことを言っていると、頭がおかしいと思われるのか、それとも、みんな肯定してしまうのか。
私が2009年頃、某国の科学館で開発した展示物にはそのあたりの「情報科学技術の未来、危惧と選択」が設計として深くディスカッションされていました。
おもったより、審判の時代は早く来てしまったのかもしれません。それも空間情報科学の最先端のエンタテイメントシステムで。

はやくAPIを公開してほしい。

2014年11月ごろ、IngressのようなARGを開発する開発者(おそらくインディではなく業として開発をおこなう”社”)むけに、APIの公開がされるという話がありました。GDCでも小規模ですが発表があったようです(Unity向けのAPIなど)。個人的な要望に聞こえるかもしれませんが、IngressAPIが悪意や私企業の利益活動のためだけではなく、一般に広く公開され、「面白いゲームや体験を開発して、エンドユーザの利益につなげる」ということが重要と思います。そのループ、エコシステムがなければ、いずれ、ブームはブームで終わってしまうと思います。

私はIngress大好きだし、メディアアートの産業化については、どんどん進めていきたいし、ビッグデータの社会利用はどんどん進むべきだと考えています。
しかし、私企業(国家や行政ふくむ)が企業の利益のために、ごくごく少数の担当者の判断で設計されていく仕組みは、あまり健康ではないように思います。

私もエンタテイメントシステムの開発者ではありますが、今は何もできません。

 

いや、学者として、皆さんにこの情報科学技術と社会の科学について、新しい知や視点を提供するしかありません。

エンライテンドのみなさんや、レジスタンスのみなさんが、ただ野蛮にエネルギーを消費して陣取り合戦に勤しむのではなく、

無知のままではなく、人類を新たなステージに、鬩ぎあいながら、引きあげていくのが正しい姿とおもい、筆を執りました。

 

最後にNIAやIngress開発、運営、ローソン方面の方々、
Ingressをプレイするすべてのみなさん、
この長い妄想を最後まで読んでくれた人、
マチカフェカードを買ってプレゼントしてくれたエージェントさんに感謝の気持ちを述べて、筆をおきます。

NIAのエージェントが私や私のスキャナのアカウントを抹殺しないことを祈りつつ…。 Happy Hacking。

 

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■代替現実ゲーム「Ingress」で魅力的なまちづくり ―プレーヤーも、観光客も、地域住民も喜ぶためには Part1 ゲームが観光客を連れてくる!?(Web観光政策フォーラム)

https://www.kankou-seisaku.jp/ksk/jsp/kankous/st?n=87&d=1

■書籍企画書公開「ゲームが世界を動かす!『INGRESS』」(仮題)
http://aki.shirai.as/2015/05/ingress-a-game-which-moves-the-real-world/

■相模Ingress部

http://ingress.sagamiharacitymuseum.jp/

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