新しいGoogle翻訳とスプレッドシートを使って国際会議への執筆をスマートにするついでに英作文力を高速に身につけるハック

CG,VR業界の研究者はこの時期、Laval VirtualやSIGGRAPHといった国際投稿のピークにあります。

白井研究室は規模の割には国際投稿が多いです。

blog.shirai.la/publications/

また数だけでなく内容も学部生でACMの学生研究コンテストで世界3位を受賞したりと、大学の入試難度の割には世界トップクラスの評価を受けることもあったりします(ちなみにACM SRCは書き物だけでなくファイナルはプレゼン審査込みです)。

本人の頑張りや先生の頑張り、研究の難度やインパクトはあるにせよ、一般的には日本語の論文を「ただ翻訳」したからといって別のアーティクルになったとみなすことはできません。しかし卒業論文や日本VR学会、インタラクションといった、日本語だったら構造的もクオリティ的にもしっかり書けるし、新規性もディスカッションもしっかりしている、さらにそのadvancementも加えられるような投稿もあるけれど、いざその学生に『英語投稿しようぜ!』と提案すると、もうその瞬間にグッチャグチャになる…といった経験はよくあります。

そもそも先生方も英語科学論文執筆のスキルや経験が十分にある方であれば指導もできるかとは思いますが、書き方のトレンドも分野によってはずいぶん違いますし、普段「日本語どっぷり業務」で押しつぶされている大学教員様が英語論文を査読等で読むのに精一杯なのに、ただ書くだけならともかく、「日本語の勢いを保ったまま翻訳する」というスキルを維持するのはなかなか難しいです。

そもそも日本語だって研究の先進性を求められるのに!英語まで書かねばならんのか!
これはハンデだ!俺は英語圏に生まれればよかった!うわーん!!
と嘆くのは簡単ですが、私はそうは思いません。
日本語に加えて英語もフランス語も、中国語も少しはわかりますが、英語単一文化圏に生まれていたら、それ以外の言語に目を向ける機会もなかったでしょうし、日本語が高度だからこそ、詩や短歌、冗談やマンガ・アニメやTwitterのような楽しいことも沢山あります。

また論文を書くことによって高度な日本語を身につける機会にもなります。いい勉強です。

さて、Google翻訳です。これは英語学習には不向きな面もあります。Google翻訳を英作文の一部にでも使おうものなら「どう見ても機械翻訳」という作文になり、あらゆる先生方から否定されたものです。しかし最近のアップデートにより「より自然な翻訳結果」が取得できるようになりました。

 

ではGoogle翻訳を科学論文の執筆に使えるか?というと、Noです。

少なくともそのままでは使える品質にはありません。理由はいくつかあります。

  • 「自然な翻訳」のために、多少の誤りは適当に正してくれる(誤りを発見できない)
  • 日本語と英語では論法が逆(日本語は大事なことを最後に書く)
  • 日本語は構造的に書こうとすると自然な日本語にならない
  • ときどき物凄い勘違いをする
  • 原文の日本語がそもそも曖昧。特に係り受けが本人に聞かないと不明だったりする。
  • 日本語と英語の多義性を考慮する必要がある(例:Play=遊び?試合?演奏?…)
  • ただしものすごく速い、しかも無料。

以下の解説は、上記のようなGoogle翻訳の特性を利用して、英語投稿のワークフローと新しい英作文力向上のための勉強法を提案しています。特に先生方と若い学生さんがWeb上で深夜日中を問わずコラボして執筆するような環境を想定しています。細部に関してはノウハウもあるので割愛しちゃいますが、最大に重要な関数はこれです。

=GOOGLETRANSLATE(B1,”ja”,”en”)

これをGoogleスプレッドシートに入れてみてください。賢い先生であればこれだけで十分と思います。

つまりこの関数を使うことで、Google翻訳のエンジンをGoogle Spreadsheetから使うことができます*

関数リファレンス

構文 GOOGLETRANSLATE(テキスト, [ソース言語, ターゲット言語])

使い方としてのポイントはこの先です。ワークフローにしてまとめます。

<準備>

  1. まず以下のヘッダを1行目に用意し「表示→固定→1行」、A1〜F1に以下。

    Question, Answer(人間による英作文), Google英語, 質問の自動翻訳, 人間による日本語, 人間による英作文の邦訳, MEMO

  2. オンライン投稿によくあるWebフォームの質問をスプレッドシートのA列に分解して貼り付ける
  3. D列[D2]にA列を日本語訳する式を設定 [=GOOGLETRANSLATE(A2,“en”,“ja”)]
  4. E列にD列の日本語質問に該当する「とりあえずの日本語」を書く。和文論文から貼り付ける。いま書けない場合は「条件付き書式」を設定して空白セルに色付けしておくと良い。
    ここでは例として「触覚フィードバックを用いたショートニング不使用クッキーによるハードクッキーのテクスチャー解析」という仮の和文論文からのコピペを貼り付けておきます。
    *あえて係り受けが不明瞭なタイトルです。
  5. C列[C2]にE列を英訳するセルを設定する[=GOOGLETRANSLATE(E2,”ja”,”en”)]
  6. さらにF列[F2]にB列を日本語訳するセルを設定する [=GOOGLETRANSLATE(B2,“en”,“ja”)]
  7. G列はメモ、必要に応じて文字数カウントとか実装するといいです。文字数カウントはLEN()で作れますが、ワードカウントしたい人はGASで作るといいかもです(shirayuca@qiitaによる実装例)。

スクリーンショットにするとこのようになります。

<使い方>

手順通りに作ってくれた人は、もう使えると思います、あえてテンプレとしてダウンロードさせないのは「自分で作った方が理解できるしカスタマイズもできる」からです。列が右に左にするのは「その方が対訳として見やすい」からです。以下手順になります。

  1. D列の自動翻訳の日本語質問を読みながら、E列にまず日本語を書いていきます。
  2. するとC列に勝手に英語が生成されます。
  3. B列に「C列の英語を見ながら人間の英作文」を書きます。少なくとも単語で困ることはなく、書き出しもスラスラ書けます。ただしC列の英語が一発でOKになることはまずないです、疑ってかかるか、楽をしたければE列の日本語を改善していきましょう。
  4. 英作文が正しいかどうか、F列を見ながらすすめます。E列とF列がほぼ同じ意味になればよいわけです。
  5. あれ?もう完成していますね!しかも1作文ごとに英作文力がアップしていくことを感じられます。

上記の例では「not use」というGoogle翻訳の提案を無視して「without」としています。そもそも日本語のタイトルが冗長であることに気が付いたりもします。主文が「触覚フィードバックを用いた」なのか「ショートニングを使わない」なのか、Googleさんにはわかりません。MEMO欄に「おい主著者、どっちが主文だかはっきりしろ!」と書いておくと良いでしょう。右クリックで「メモ」や「コメント」を使うと校閲しやすく、Web上で高速に共著作業が進んでいきます。

さて本文の執筆です

上記は国際投稿の際のEasyChairやSIGGRAPH SISにおけるWebフォームの例ですが、本文も同様です。白井研究室の場合、和文の場合はCloudLaTeX,、英語論文はShareLaTexを使用していますので、CloudLaTeXからの英語→日本語の変換工程で構造的に執筆された日本語を英語に翻訳していく過程が必要になりますから、上記のシートをコピーしてカスタマイズして、A列の質問を主著者や先生のストラテジに置き換えていけば良いのです。

Google翻訳の特性上、あまり長い作文をしようと思わない方がいいです。一方で、コンテキスト(前後関係)も重要ですので、だいたい目安としては一段落程度で区切ったり、代名詞Itなどを補完しながら中間的な(=Googleさんにわかりやすい)言語で書いてあげると良いと思います。その言語を日本語で行える、右クリックすればメモなども使える、という点が上記のワークフローの特徴です。必要であればどんどん行を増やしていくと良いです。

最後にB列をガシッとコピーして、Word等のトラディショナルな英語チェック環境やエキサイト翻訳のようなクラシックな翻訳エンジンに通してみることをお勧めします。図版を入れる作業なども必要ですからこのワークシートだけで全てを終わらせるわけにはいきませんが、この段階で人間の有料英語レビューに依頼できるレベルまでは達しているはずです。Todo管理なども含めると分業もしやすくずいぶんとストレスの少ない英語執筆が可能になると思います。

 

ブログに書いた方がいいだろうなというレベルはこの辺りまでですね!

白井研究室のノウハウとしては、上記の方法だけで論文を書いている訳ではありません。これに加えてGAS(Google Apps Script)なども組みあわせていったりもします。ビデオの字幕やYouTube字幕などもこれでずいぶん改善されます。そもそもワークフローにこだわるというよりは自力で、動的に、改善していくことが重要と思います。

なおGoogle翻訳はGoogle Cloud API経由でも使える訳ですが、課金やセットアップが必要な情報に比べてもずいぶんスマートなのでした。
unokun.hatenablog.jp/entry/2015/08/08/103841

白井としては、これでAndroidタブレットやスマホでも書ける!というのは大きいです(右腕が使えませんので、机で両腕を使って書ける時間が限られているのですイタタ…)。

フィードバックありましたら @o_ob までどうぞ!

*(追記:2017/2/17 22:00)

本稿のGoogle Spreadsheet関数で利用できるGoogle翻訳では、フレーズ間の翻訳確率を計算して翻訳先の言語の適切な語順に並べ替える、フレーズベース機械翻訳(PBMT)を採用しているようです。2016年11月にアップデートされたニューラルネットワークベースのGoogle Neural Machine Translation(GNMT)はPBMTよりも翻訳精度が上がる印象がありますが、本稿の関数にはまだ実装されていないようです。
ご参考:グーグルの翻訳AIが「独自の言語」を生み出したといえる根拠(2016.11.24)
wired.jp/2016/11/24/google-ai-language-create/

(例1)
原文:Percent of overcrowded households among bottom quintile of income distribution.

Spreadsheet関数版Google翻訳(エンジン不明):所得分配の底五分位間の過密世帯の割合。
Web版Google翻訳(GNMT日英)所得分配の下位5分の1の間で混雑した世帯の割合。

ちなみにWeb版のほうもクリックすると翻訳候補として「底五分位間の」が出てきますのでやはり「新しい」とはいえGNMTはまだSpreadsheetには使われてないと見てよいでしょう。いつ反映されるのでしょうかね!楽しみです。ただしある日突然変わるので注意が必要です。原文や作文はちゃんと保持してくださいね。

(例2)2017/2/18 23:00追記
原文: Talk of tech innovation is bullshit. Shut up and get the work done – says Linus Torvalds

GNMT日本語訳: 技術革新の話はうそつきです。シャットダウンして作業を完了させる – Linus Torvalds

GoogleTranslate関数: ハイテク技術革新の話はでたらめです。黙って仕事を成し遂げる – Linus Torvalds氏は述べています

この文であればGoogleTranslate関数の方が素直な訳でいいですね、GNMTによる日本語訳は英語に直すと「The story of technological innovation is a liar. Shut down and complete the work」、うそつきとシャットダウンが強く残ってしまっています。
なおこの一文は実際のニュースとしてはもっと恣意的な翻訳をされているのでまだマシなのかもしれませんが…。

しかしGoogle翻訳(GNMT)の翻訳結果がお上品になるのは良いことなんだろうか?「ブルシッt」が「うそつきです」になる事で人類のヘイトを抑えられるどころかより齟齬を産んでるんじゃねーの、って気持ちもある。
この辺り、もう現実はチェス囲碁将棋AIと翻訳に関してはSFに両足突っ込んでる感じがしますね。シンギュラリティです。

ところでSpreadsheetにはこれ以外にも面白い関数がいっぱいあります。

ImportFeed, ImportXML, IMAGE, それに最新の株価・為替が取得できるGoogleFinance関数も便利です。

Excelで苦手なヒストグラムも一発で出せますよ!

どんどん使ってみてくださいね。

 

ご紹介の際は一言頂ければ幸いです

国際論文連発の研究室が明かす、英作文超ノウハウ。Google翻訳ってスプレッドシートから使えるんだ!|ギズモード・ジャパン t.co/VbFhLG4LFz

はじめての学会発表、何を練習すべきか?

初めての学会発表、さて何の準備をすべきだろうか?

ここまでの流れはこんな感じだったとする。

  1. 研究室の指導教員の先生が「この学会出してみない?」と誘う(Call For Papers)
  2. 締め切りに向かって論文を書く。この辺で最初の修羅場を味わう
  3. (査読の有無によっても異なるが)めでたく採択される
    ×→採択通知を共著者や先生に報告転送しそびれて叱られる
  4. 学会大会からの提出物を求められる
    例えば、最終原稿、ビデオ、著作権移譲フォームなど
    ×→その手の提出物を締め切り直前まで寝かせて先生に叱られる
  5. 学会参加登録、参加費の支払いを行う
  6. 大学に出張の伺いや、学生発表補助の申請を行う
  7. 旅行の準備
    宿の手配、新幹線や飛行機の手配、会場までのアクセスなども調査
  8. デモ発表がある場合はデモの完成や物流工程
    そもそも研究室の外で展示できるようなサイズではなかったり…どうやって安全に運び、構築・工作し、伝え、分解し、持って帰るか、いくらかかるかなど、ロジスティック(物流)を検討する。
  9. 発表練習1(ゲネプロ)
    パワポのストラテジーを先生と相談し、通し練習を行う。この段階での完成は7割程度。
  10. 当日のポスターや配布物などの印刷、名刺の印刷なども。
    「そもそも何人ぐらいくるのだろう?この学会。」という質問が出て当然。
  11. 「旅のしおり」の作成
    宿や乗る列車、現地の地図、タイムテーブルなどを含めた印刷物。最低限でもPDF。実家などに緊急連絡先・宿泊先などを連絡するのが面倒な時にも役にたつ。
  12. 当日のシミュレーション
  13. 発表練習(リハーサル)
    教室などを使って実際の環境に近い状況で時間などを精度良く測って行う。

…で、これで、完璧?否。

実際には、ここまでの準備では「伝えるだけのプレゼンテーション」しか準備できていない。

では何をやればいいか?書き出してみる。

1. 質疑応答の練習

2. 予習・聞き方の練習

3. 質問の仕方の練習

4. 懇親会などの準備

5. 見学、その他の見どころを調査

以下、順を追って解説する。

1. 質疑応答の練習

時間内に喋れば良いタイプのプレゼンテーションと違って、学会発表は学術バトルの場。実際のゴングは発表が終わった瞬間に鳴るものと心得るべき。なに?質問が出ないならそれでいい?…何を言っているのか。君のプレゼンテーションが未熟だから質問が出ないのだということを認識すべきだ。なに?自分の発表が素晴らしいから質問されない?…そういう考え方もあるだろう、しかし、もしかしたら裏番組のセッションにいい聴講者を持って行かれているのかもしれない。そう考えれば、書いた論文のタイトルが魅力的でないから、そのセッションに追いやられているのだ。反省すべきところはたくさんある。

そもそも、君は発表中に、「聴講者の目」を何回見たか?

あそこの先生は寝ているよ、あの学生はあくびをしていた。

君の発表が面白くない、ということを全力でアピールしているではないか。見ていないのは君だ。

質疑応答の時間、最後のゴングが鳴るまで、しっかりと殴り合いができることが理想。聴き手の興味を引き出し、知的好奇心を呼び起こし、質問を引き出してこそ、真の学会発表。

 

2. 予習・聞き方の練習

メモを取れ。そもそも聴講するセッションの予習ぐらいしよう。感覚で参加したり、一瞬でそのセッションが何を話す場なのか、座長が何者なのかを見極められるような経験者でなければ、事前に見たいセッションの1つや2つぐらい当たっておこう。

そして、聞くからには全面的にメモを取れ。研究室に持ち帰って、20分の発表を20分以上かけて、発表者以上にわかりやすい発表として研究室に持ち帰れ。

なに?難しすぎてわからない?…それはだな…発表者が悪い!

発表者が自分のことしか考えていない発表をしているにすぎない。そういうときは莫迦のふりをして質問すればいいのだ。

「すみません、門外漢なもので、頓珍漢な質問だったらごめんなさい〇〇は××の事なのでしょうか?」

この聞き方でいい。一説では”えらい大御所”がわざとそんな素人のふりをするなんていうスタイルもあるそうだが、あえて漢字で書くとわかるように「もんがいかん」も「とんちんかん」も「漢(おとこ)」の攻撃方法だ。門外から頓珍な攻撃を繰り出して、本質を突く!突く!突く!

一つ前の項目でも言った通り、発表者はろくに質問が出ない事で「フッ…俺様の発表が完璧すぎたのだな…」と勘違いしてしまうことがある。逆の立場に立ったら、なんと痛いことよ。突いてあげて。

 

3. 質問の仕方の練習

ところで良い質問とはなんだろうか?「突け」とは言ったが「相手を攻撃して叩き潰す」なんてことは、よっぽどたちが悪い発表か、頼まれでもしない限りやらないでよい(学内やゼミ内は別だ、全力でやれ)。論破もあまりやるべきではない、発表者は君ではないからだ。

一番大事なのは「建設的なディスカッション」というスタイルを守りつつ、「基礎力がしっかりしたボディブロー」を相手の腹筋に叩き込むことだ。相手が普段どれぐらい、どのようなトレーニングを積んでいるのかは、そのボディブローで見抜くことができる。ジャブやカウンターは不要。ストレート、もしくはショートアッパーがいい。間違えても大振りでジャイアントアッパーを打ち込んで空振りしてはいけない。限られた時間で「オッ、なんだこいつ!やるな!」と思わせれば勝負あり。長引かせる必要はない、休憩時間に名刺を交換しにいけば良い。

少なくとも、顔は割れる。良く言えば顔が売れる。

君と発表者の間にいい電気が流れる。

そして、大御所や、勘のいい先生はその場を見ている。

今度は君が発表する番だ。いい質問をもらったら、カウンターで返してやれ。

ちなみに君が発表者だったら以下の質疑応答カードは用意しておけ。

「ご質問ありがとうございます」

このカードは『感謝受け』というカード。呼吸を整え、迂闊なカウンターをもらうこと防ぐ。

「ただいまいただいた質問ですが、〇〇という理解でよろしいでしょうか?」

このカードは別名『再定義』というカードだ。当然、答えは用意されている。

「ありがとうございます、なかなかいい質問だと思います」

感謝も肯定もしている『健全防衛』。実際には図星であり、どう考えても負けている可能性があるのだが、感謝も肯定もしていることで、ボディブローを食らった後の内臓の揺れや嘔吐を防ぐことができる。

「そうですね、YesかNoかで答えるとすれば、Yesです」

このカードは『ディスクリート』というカードで、オフェンス時には「YesかNoかで言えば、どちらでしょうか?」という使い方もできる。しかし、

「そうですね、YesかNoかで答えるとすれば、YesでもNoでもあります」

という返し方もある。『アンチ・ディスクリート』というカード。というか、世の中の研究のほとんどが「YesでもNoでもある」からこそ研究したりデータをとったりしている。しかし「YesでもNoでもあります」という流れになると、当然発表者が延長して何か詳細な情報を伝えるチャンスを持つので、この流れになれば、持ち時間を使い切る流れだ。

 

他にも「〇〇はご存知でしょうか?」といった、いやらしく知識を問うトラップを仕掛けるような質問もあるのだが、今回はこの辺にしておく。

 

たくさん集まれば、印刷して袋詰めしてスターターパックとして販売したいぐらいだ。

 

4. 懇親会などの準備

懇親会は、フードバトルではない。名刺を配れ、挨拶をしろ、研究室の連中とつるむな。普通の先生なら学生とは距離を置いて、どこぞの先生と楽しそうに交流しているはずだから、そこにどんどん割って入るか、そばに「もの言いたげ」に立てば良い。紹介してもらってなんぼだし、先生だって自分の門下生を紹介してなんぼの場なのだ。

なお、もらった名刺は24時間以内に挨拶をしろ。Ccに先生のメールアドレスを入れておけば喜ばれる。メールの作文?そんなものは先生に見てもらえ、というか、それこそ事前に作文用意しておけばいい事ではないか。研究室のHPの紹介や、動画のURL、これまでの論文など、発表前後で何が変わるのか。

メールボックスに名前が入って入れば、検索できる。タイトルには工夫を。

そして早めの挨拶は、長めの会議の時には、次の共同研究や、就職先などの可能性を大きく広げる。

「あいさつが1日遅かったおかげで失ったチャンス」なんて、失った側はわからないのだぞ!!

 

5. 見学、その他の見どころを調査

学会発表はミッションである。入国審査で「観光かビジネスか」と聞かれたらビジネスと答えて良い(入国審査のこの質問、正確には「誰がお金を出しているか?」らしいが)。観光ではないから、学会開催中に抜け出して遊びにいったりは許されない。学会にも出資者にも留守を預かる他の学生にもトリプル裏切りになってしまう。学会が終わった夜の部は良い。できるだけ他の研究室の飲み会に巻き込まれて、いろんな文化を吸収しよう。飲みの席だけで大きな仕事をやってのける研究者だっているのだ。

観光とは別に「エスカーション」はどんどん行くべきだ。近隣の大学や研究所のオープンラボは予約制だったりするから、事前に調査して確実に行くべき。お金を払って見れる観光と比較にはならないものが見れるはずだ。また、学会によっては本当に観光旅行のようなエスカーションが付いてくることもあるが、これもおすすめである。有名な先生や大御所の奥様に会えることもある。よその大学の大先生が普段どのような行動やセンサーを持っているのか?良く観察すると良い。なお、この手の観光旅行エスカーションの記念写真はSNSには上げないほうがいいらしい。人によっては後ろめたいと考える人もいる。それがなんの予算で来ているか?学生のように個人的な出資であり、しばしの自主的休暇ならば問題はないだろうが、お堅い予算や重要な学務を抜け出して学会参加をし、若き学生たちの「引率」として、エスカーションに渋々参加している先生方の”笑顔”を、本人のコントロールが効かない場所に上げ晒すのはよっぽど勇気がないとできないことかもしれない。まあ一言挨拶はあったほうがいい。

 

さて、初めての学会発表、何の準備をすべきだろうか?

ここまでの流れは教えた。

ぜひ皆さんのエクスペリエンスを教えて欲しい。

Good luck!!

 

追記:学生にアカデミック社交会デビューさせるための先生のためのマニュアル (2016/11/28)

某阪大学の前田先生から

「せっかく学会に連れて行ったのに自分の発表時間以外姿を現さない学生」はどうしよう、

というご質問を頂いたので、懇親会などのアカデミック社交界に学生さんたちをうまくデビューさせる方法について追記しておきます。

つまりは「知らないひととの友達の作り方」なのですが、
私の師匠の久米先生は
「学会中は、俺、旧交を温めに行くから学生の面倒は見ないよ」
と言い切ってましたでのだいぶ割り切っていました。

もちろん3日あれば1日ぐらいはチームディナーはありますが、毎晩ではない、という感じです。
自分もそうするようにしています。
学会は先生自身が視野を広げ、大学人事や世間の動向を共有するべき場でもあります。

「私立大学も大変だと思っていたけど、国立大学も別の次元で大変だなあ…」
なんて感想が抱けないと、先生も過労で死にます。
そのような交流の時間を確保するためにも是非、発表練習は研究室で終わらせてきてほしい!

さて、もうひとりの私の師匠、草原先生は、いわゆる社交を丁寧にする人で、
「ほら白井くん、この人は〜〜で活躍しているXXさん」
という感じで、なんだか知らないけど有名そうな人によく紹介してくれました。そして、
「こちらは白井くん、工学部と芸術学部の間でちょっと変わったものづくりしている学生さんです」
という感じで知らない人とくっつけるのが上手な人でした。
(過去形にしてすみません、お二人とも大事な師匠です)

上記の短いセンテンスにあるように、一息で話せるぐらいの内容で、本人の自己承認欲求自立心をくすぐってあげるのが良いのかなと思います。

懇親会で先生は、学生の自己承認欲求と自立心、あとは近い世代の仲間とうまく
紹介(introduction+produce+inquiry)“して引き合わせてあげることでしょうね。
最近だと、Facebookでからませるぐらいのことは必要では。
ライバルという敵対関係ではなく、「仲良くすべき同胞」としてのインスタンスを獲得させる大事なお仕事ですね。

 

4月1日の君に送るコトバ ~振り返れば人生はいつも研究で,就職活動~

4月1日,エイプリルフールですね!

昨年度は就職委員だったこともあって,昨年末から情報メディア学科内で新しい就職活動週報システムとそれに連動した「週刊D科週活」というメールニュースを運営してきました.

毎回おもしろくてためになるコラムを書いていたのですが,今回は最終回なのと,ちょうど節目の日付なので,再掲しますね.

<以下>

情報メディア学科の白井です.

2016年度から別の委員を担当することになり,本日でこのコラムの執筆は最終回となりました.
そろそろ内々定なども出てきている中,一方では未だ「最初の履歴書」も書いていない学生さんも見受けられます.

履歴書,とはその名のとおり,履歴を書くものです.左側だけでなく右側の「自己PR」や「卒業研究テーマ」などもあります.
最初の1通目は,大変だと思います.何せ自分の人生を振り返って,
・どんなことを学んできたか
・自分と,希望の会社にどんな関係があるか?
・どれだけ貢献できるか?
・これからどんな人生を歩んでいきたいか?
これらを採用に結び付けて,構造的に作文していく必要があります.

「研究テーマ」も構造的な作文も,研究室の先生に相談してみてください.
これから1年ご指導をお願いする先生であれば,あなた自身の才能の掘り起こしも上手に行ってくれるでしょう.

ここに,一例として白井の”略歴”を引用してみます.

(講演用の略歴です,履歴書用ではありません)

1992年 東京工芸大学工学部最後の写真工学科卒業,1996年 同大学院画像工学専攻卒業.1996年 キヤノン(株)入社,キヤノングループの英国ゲームエンジン開発企業Criterionを経て,2001年 東京工業大学総合理工学研究科博士後期課程に復学,2004年に『床面提示型触覚エンタテイメントシステムの提案と開発』で博士(工学)取得.(財)NHK‐ES,フランスLavalでのVRによる地域振興,日本科学未来館科学コミュニケーターを経て,2010年より神奈川工科大学情報学部情報メディア学科准教授.専門はVRエンタテイメントシステム,メディアアートの工学教育.フランスで18年開催されている世界最大のVRフェスティバル「Laval Virtual」の国際デモ部門ReVolutionのチェアマン.24年続く国際学生対抗VRコンテスト「IVRC」の実行委員・審査員.著書に『WiiRemoteプログラミング』,『白井博士の未来のゲームデザイン ―エンターテインメントシステムの科学―』など.

振り返れば人生はいつも研究で,就職活動です.
大きな会社に長く勤めている人も,社内でのキャリアは常に考えていかなければなりません.
皆さんは,5年後,10年後,どんなスキルをもって,どんな仕事をしていたいでしょうか?

履歴書や就職活動での小さな気づきは,いまは辛くて苦しい日々かもしれません.
でも,成長して,通り過ぎてしまったら,辛いどころか,もう思い出すのも難しい感覚になっていきます.
これは皆さんが「成長している」ということなのです.
後になったら自分でもわからなくなってしまうことは,会ったこともない企業の採用担当者がわかるはずもありません.
『自分は~~ができます』といった書き方を推奨するマニュアルもありますが,できるスキルは多いに越したことがありませんが,新卒社員を採用する上で,一番大事なのは「伸び/成長」です.
どんなことに辛いと感じ,どんなことを自分で克服してきたか?それを書き残すことは(後になったら忘れてしまうだけに)大変難しいことなのですが,習慣化していくことで可能になります.

4年次の「必修8単位」を課す手卒業研究やゼミ,卒研指導の先生とのコミュニケーションも大変重要です.
あれこれ悩むよりも,未熟でもよいので手を動かして,レビューしてもらい,対話して,自分の人生に仮説を立てて,それを実現するために生きてください.

振り返れば人生はいつも研究で,就職活動です.
この4年生の1年間は皆さんの人生が凝縮されています.
よい縁と,よい機会に恵まれ,みなさんの人生に花が咲きますように.

エレベータなどで見かけたら,さわやかに挨拶くださいね 😉

 2015年度 情報メディア学科 就職委員 白井暁彦

レポートがどうしても書けない病気の学生におくるメール

いろんな大学(いろんな国)のいろんな学生に講義や演習をしていますが、「どうしてもレポートが書けない」という学生さんにあたることは、受験難度には直接関係なく多くあります。

いわゆる「レポートが出せない病」です。

昔からそういう学生は存在したし、思い返せば私もそうだったのですが。

決して頭ごなしに怒鳴りつけてはいけないとおもいますし、理由も聞かずに「受け取らない!」という巌とした事務的な態度や、「こんな締め切りも守れないようではこの業界では生きていけないよ!」という態度も大事かとは思いますが、実はその学生も「なんだキミ、書ければ意外と面白いじゃないか。時間に間に合っていればもっと評価高いのに惜しいね!」と言われて図に乗れば、その学生の才能が目覚めるかもしれません。それが私です。

つまりこれは教育機会だとおもいます。パワーで斬首刑をお伝えするだけでは教育機会の損失です。

さて、先天的な障害を疑う前に、まずは「レポートが出せないのですが…」という学生さんに向けた私のお伝えしたいことを引用しておきます。

(これは2年生の必修の演習だったという想定です)

学生のメール「レポート遅れてすみません。もうちょっと待ってもらえませんか?」

レポートの提出が何らかの難がありできないのであれば、締め切りを過ぎる前に、まずは担当の先生に連絡や相談をするべきではないでしょうか。
何から手を付けたらよいのかわからない、何をクリアすればよいのか明確でない、難しい、といった課題であったとしても、連絡なしに遅れ提出をしたり、連絡なしに未提出となるのは、お互いにとって不利益ではありませんか?
仮に「気持ちが乗らない」だったとしても、時間の無駄をしてほしいわけではありません。「考え方をこう変えるといいよ!」という一言は、実は講義の中でも言っていたかもしれませんし、質問したり、研究室に聞きに行けばいいかもしれません。

「ちょっと待ってもらえませんか?」は聞きませんよ。

先生方も長年、学生を見ていますので、
「納得ができない」「うまく書けない」「バイトがあり時間が割けなかった」
「簡単だと思ったが実は難しかった」「なんだかよくわからないが書けない」
などありとあらゆる理由や難儀があることはわかっています。
延長するといっても、何時まで待てばよいのでしょうか?
それを今、君が云うことができるなら、もうとっくに終わっているのではないでしょうか?

この演習は「必修」です。
持って生まれた特殊な才能が必要というわけではなく、
手順通り話を聞いて手を動かせば、誰もが跳べるハードルを設定しています。
それが必修のユニット教育であり、下の学年から積み上げで、段々高くなっていき、いずれは卒業研究のような、何十ページ、何百ページといった著作になっていきます。

時間内に出せないということは、その方法が間違っていたか、その演習を邪魔する何かがあったということです。
ですから、まずは時間内に出せなかった理由を自分なりに分析してみてください。
難しいことを書く必要はありません。何がやれて、何ができないのか?
キミにとって何が難しいのかは先生は全く分からないのですから!
それを丁寧にメールなりレポートの表紙なり考察なりに加えるか。
いかなる方法でもいいから伝えてみてください。わかりやすく。
先生が受理して採点するかどうかはそれを読んで判断すると思います。

がんばってください。 白井暁彦

実際の作文はもうちょっと箇条書きだったり事務的だったりするのですが、一度の躓きをバネに伸びることができるのも若さなので、先生方も血圧上げずにがんばってください。

☆がんばる=基本的なことを丁寧にやること(白井の定義)

誰が為に卒論執筆の鐘は鳴るか?

本日、平成26年度の卒業論文執筆に関わる重要書類を研究室学生に配布しました。

もう既に卒論を仮提出している学科などもありますが、
まずは、よく読んだ上で、疑問点・注意点があれば先生に相談し、学生同士で水平展開で共有してください。

時は師走です。
年内は日数的にはあと20日残っていますが、先生がゼミ形式で直接全体指導できるのは、実はあと数日〜1日のみというところが現実ではないでしょうか。

残りは個別指導になります。
つまり、先生よりも遅く大学に来て、先生よりも早く帰るという怠惰な学生には、(当たり前ですが)指導時間を享受する時間と機会がなくなります。
各自Googleカレンダー等を利用して先生に指導時間を依頼してください。
なお、一回あたりの指導時間は「概ね30分/人」が限界と思います。先生の正気を保つためにも、非同期時間を長くして、下手なお説教を爆発的に食らうよりは、こまめに、こまめに、そして他の学生も協力し(時にはカットインしたり、協働したりして)こまめに先生の効率と心の平穏とそのもとになる睡眠時間を維持させるべきです。

この時期の卒論執筆で重要な点をまとめておきます。

・ここまでの結果を明らかに
結果がないなら再度見直そう。先生は学生が見出してない結果を導くわけにはいかない。

・どんな終わりかたをするかイメージしよう
どうせ書くなら「爽やかな終わり方」がいいですよね。先輩の卒論を最後まで読んでみましょう。

・結果を踏まえて追実験を指定されれば実施する
“追実験”は先生の趣味や、マゾやイジメではありません。論旨を完成させるために必要なので、方法を提案しています。

・追実験に新4年生の協力を求める
知っているようで何も知らない彼らは、よき被験者であり、実験オペレーションマニュアルは論文執筆を加速させ、2月頃の引き継ぎの手間を大幅軽減します。

・追実験から結論→再度論文要旨を見直し
追実験は妄想レベル以下だった結論を強化し、トンネルの出口を掘り当てます。今こそこのトンネルの全長を測り、名前をつけるときがきました。

・12/25頃にあるであろう研究室の大掃除前に目標ページ数に達成
大掃除なんてやる暇ないと思うかもしれませんが、区切りもつかないと効率悪いですし、大掃除が始められませんし、掃除前にやっておかないと、実験器具やデータを撤去されると危険です。少なくとも新規実験は終わらせてデータやソースや原稿を二重三重にバックアップしておくべきです。

・ページ数達成後、校了・提出まではだいたい6回ぐらいの添削が入る
毎年の提出ファイル名に、SotsuronFinalV6.pdf というファイル名が多いことから推測できる値です。

・細かい修正点がないよう、配布した執筆要領を見直す
先生の添削エンジンをそこまで信用しないでください。

・先生のキューが長ければ学生間で見直す
ただキューを待って駄話しているぐらいなら、分散処理してください。

・”GoogleDrive卒論シート”で共有
企業秘密です。
ヒューマンインターフェイスなのかヒューマンインタフェースなのかヒューマンインタフェイスなのか。エンタテインメントシステムなのかエンタテイメントシステムなのかエンターテインメントシステムなのかは、先生に間違い指摘されたり口伝で聞くよりも共有辞書作るのが一番です。

・お互いを高めあって楽しい雰囲気で乗り切る。
先生も学生も、時間の浪費(集合遅れ,無断欠席)や瑣末なミス(添削指摘反映忘れなど)でヒステリシスを生まないよう配慮しましょう。

特に卒論執筆において「自宅作業」は幻想です。

しっかり冬休み取りたければ(カレンダー上はどう考えてもそうなる)、いま時間の借金をゼロにしておくことをお勧めします。

さいごに…卒論執筆は、今までの論文と違って、先生は共著ではなく、指導教員です。

ある時は二人三脚ですが、歩調を合わせるコミュニケーションが取れなければ、学生にとって「引き摺られて痛い…/引き摺って重い」ということにしかなりません。

学生も先生も常にお互いにリスペクトを持って、丁寧に残された時間を積み上げてゴールを切ってくださいね!

先生は
「うーん、この卒論は面白いね…素晴らしい!」
って言いたいんです。
言わせるように無理せず、リラックスして、頑張りましょう。

グッドラック! ^_^b

白井研究室の育て方

うちの学生が研究で評価されたそうです

このたび,白井研究室で指導している神奈川工科大学 情報学部 情報メディア学科4年生の鈴木久貴君が,世界最大のコンピュータグラフィックス&インタラクティブ技術の国際会議であるACM SIGGRAPH 2014において,ACM Student Research CompetitionのSemi-Finalistに選出されました.

これはSIGGRAPH 2014 Postersに投稿された学生発表のなかで学部生部門,院生部門それぞれにおける世界トップ3に選出されたということで大変な名誉であります.結果などはこちら.

SIGGRAPHのPostersという場所について

ACM SIGGRAPHのPostersには特に日本の大学から多くの発表が投稿されます.
ACM(Association for Computing Machinery, アメリカ合衆国をベースとする計算機科学分野の国際学会。1947年設立。IEEEとともに、この分野で最も影響力の強い学会。SIGGRAPHやSIGMODなど数多くの国際会議を開催している。また、チューリング賞、ゲーデル賞を授与する組織としても知られる; wikipedia)の採択規定では全カテゴリにおいて採択率33%を上回る必要があります.この時点でいわゆるふつうの国際会議のPaperより難度は高くなるときもあります.
鈴木君が今回投稿した件は,最も遅い締め切りの「Late Breaking」というカテゴリなので,採択率は25%程度と聞いております.某大学の事務は「Postersはポスターなんだから,口頭発表じゃないでしょ?」ということも言われたりするようです,それはまあしょうがないのですけど,ACM SIGGRAPHの難易度や参加者規模(数万人)対してその評価はあんまりです.
一説には,Postersよりも数段難度の高いTechnical Paperに投稿したほうがよい,という意見もあります.私もこれは完全に同意です.多くのCG系の研究室に所属する学生にとって,「SIGGRAPHに発表者として参加できる」ということは,大変な名誉であり,ドリームです.しかし1ページのアブストラクトしか載らないのに,年に一度のこのチャンスに,大変なアイディアを絞り出したり,一方では,Postersに通すために似たようなサブジェクトを細切れにしているような例など見かけると,本当に本末転倒だと思います.
ちなみに私は,某SIGGRAPH ASIAで似たような研究をしているカナダ系中国人の研究者に,「はあ?君のアイディアがどんなにすばらしかろうが,1ページ2ページのショートペーパーがあるぐらいでデカい面するな,こっちはIXXX(伏字)のフルペーパー通っているんだぞ!」と凄まれたことがあります.これはくやしい.ちなみに偶然の一致と思いたいけど,彼の研究室の学生は私のYouTubeビデオは見ているし,おそらくショートペーパーも見ている,しかし引用はされていない.「引用に値しないショートペーパーだから」という理論だそうです.これもくやしい.
日本の研究者のみなさん,研究者のタマゴのみなさん,まずは8ページから10ページの長文を書きましょう!
志は高く!話はそれからだ!
そうでなければ,Posterに出した論文はパクられる運命にあります.
そもそもSIGGRAPHのPostersの投稿規定にもそれに近い話は書かれているし.
とにかくPostersに出すなら,覚悟はしましょう.
ちなみにACM Student Research Competitionについて,産総研の加藤淳さんが「ACM Student Research Competition参加のすすめ」というブログエントリーを書かれています.こちらも別の視点のご意見ということで紹介させていただきます.

白井研究室の人の育て方について少々紹介

いい機会なので,白井研究室の人の育て方について,ちょっとまとめてみたいと思います.
白井研究室の人の育て方の基本方針は以下の通りです.
(1) その人にはその人にあったハードルを
(2) 30%ルール,いろんなことをやってみよう
(3) 「心の力」を最大限に信じる
…という考え方です.まあどれも当たり前なんですけど.

我々は未来に進んでいくしかない,残念ながら.

まず「(1) その人にはその人にあったハードルを」という考え方です.これは基本原則.
飛べないなら高いハードルは設定しません.
しかし白井先生は自分自身に高いハードルを設定しています.
これは”忍者式”とでもいいましょうか.低木を飛び越えているうちに,壁も越えられるようになる…ってあれです.

すごいスピードで成長するなら,どんどんと高いハードルがやってきます.

でもそうでないなら,低いハードルを設定し,低いところから増分も少なく増えていきます.
ただし増えていくことは変わりません.我々は未来に進んでいくしかないので.
そう、未来に進んでいくしかないんです!
記憶や知識や技能を持ったまま,過去に戻れるなら戻りたい!
…でもそんなことはできない,我々の時計にはラッチ機構がついていて,後戻りもCtrl+Zもできないんです.
だから飛べるようになったら,次からはもっと高く飛べるようになるしかないんです.残念だけど.
だから,うちの研究室では「チート厳禁」です.
世の中には,いろんなチートがありますが,あらゆる意味で「チートする」ということは,「本当は飛べないハードルを飛んだことにする」ということと定義できます.
チートするぐらいなら,物事を簡単にする努力をしたほうがいいです.
よく混同されやすい「やさしさ」ですが,特に周囲の「優しさ」は,落下時のクッションなど,「飛べないハードルを飛んでみたが失敗した人」に対して必要なのであって,飛ぶためのルールはルールとして,どの分野においても後戻りのできないものです.
マンションで育つ子供に「ベランダから落ちたら痛いからね!」と言って聞かせるのと,
1メートルの高さから飛び降りてみさせるのと,どちらが安全に貢献できるでしょうか?
こんなたとえもあります.
[Slashdot]スウェーデンの父親、ビデオゲームをプレイしたがる子供たちに本物の戦争を見せるため、中東へ連れていく
本当に”世界最悪の父親”ってのは,子供をパチンコ屋の駐車場で殺すような親のことであって,こういうのは”いい父親”だと思います.
「あれやっちゃだめ,これやっちゃだめ」,「危ないから規制しよう」というブレーキが,本当の意味で子供たちを「弱く」していることもあります.

白井研究室はいろんな事をやらせてみる

次に「(2) 30%ルール,いろんなことをやってみよう」について.
たとえば鈴木君はパキスタン人と日本人のハーフです.小学校から高校ぐらいまで,パキスタンで教育を受けています.その分,いろんなことを知っていたり知らなかったりします.
それこそが,彼の強みです.
学力とか,勉学とか,受験難易度とか世の中にはいろいろな尺度がありますが,本当の意味で「学ぶ人」は,自分で学ぶ人,すなわち初めてのことをゼロから色々と試し,自分で獲得する人です.
鈴木君にかかわらず,白井研究室は「30%ルール」という指導方針をとっています.
メインは卒業のために必要な学位にかかわる研究です.
サブは就活や,研究になるかどうかわからないエマージングな活動や企業連携などのプロジェクトです.
3つ目の30%は「趣味プロ」と呼ばれる外部活動です.ゲームでも部活動でも映画鑑賞でも,趣味的な活動をどれぐらい極めている極めているか?メインやサブに比較してどれぐらい時間をかけているか,が重要です.
最後の10%が,Blogなどの発信活動です.チーム内の共有ドキュメント,wiki,日記でも構いません.知の共有にどれだけ貢献したか?する意識があるか?です.
「30%ルール」については,過去に「はたらくじん」というサイトで特集していただいたことがありますのでこちらもご参照.
一つのことを長い時間かけてやることも重要ですし,その合間の精神の変化,成長,隙間時間の使い方をいかに他者に任せず自分のものとするか?という方法論の獲得でもあります.
工学だけでもなく,芸術活動だけでもなく,ビジネスも,ボランティアも一通り経験させます.
先生っぽいこともやらせてみますし,言語も英語だけでなく,フランス語,中国語も簡体字・繁体字など,かかわる言語すべてにチャレンジします.
向いているか向いてないか,なんてことは本人が知っているはずもないですから,やってみなければわかりません.
この「いろいろやらせてみる」は次の「心の力」に関係してきます.

白井研究室は”心の力”を最大限に信じる

さいごに「(3) 『心の力』を最大限に信じる」ということ.
心の力以外信用しない,というと「なんか信用されていない」,みたいに聞こえるかもしれませんが,「やるやる詐欺」をさせないということです.
まず「いろいろやらせてみる」をやったうえで,
「学生なんだから,やりたくないことはやるな」とハッキリといいいます.
「好きなことだけやれ」と言っているように聞こえますが,実際にはそんなに甘いものではないと思います.
今の世の中で人間がやらなければならない物事は複雑です,一つのことを達成するためにいろいろなスキルが必要.
もしやりたくない事があるなら,
・やりたくなるように努力する
・好きになるまでやってみる
・嫌いだからさっさと終わらせる努力をする
・それをやらなくてもいい世界に行けるように努力する
これらのいずれかしかありませんよ,ということです.
大人にとってはあたりまえのことですが,その覚悟がない人が,大学生にはたくさんいます.
今の学生のほとんどは,便利で恵まれた平和な子供時代を過ごしています.
大学受験も,もちろん試験で入ってくる学生もいますが,そうでない方法で入ってくる学生もたくさんいます.そのような学生に対して区別も差別もありません.当たり前ですが.
企業の人が聞いたら驚くかもしれませんが,
学生からの努力,根性,強制に対する反発は大きいです.
大人が抑圧して,首に縄をかけて,指導できるようならば,もっと勉強もできるのかもしれないけど,まずは自分の能力を測ること測られることに対して慣れていません.
平和ですね.
やりたいことに対して,脱出したい世の中に対して,いかに垂直揚力を維持できるか?
維持できないなら,いかに短い時間で必要な出力を出せるか?
そういった偏屈なエネルギー源しか,いまの世の中は頼りにできるものはありません.
もちろん,先生の言うことをきちんと聞いて,咀嚼して,理解して,自分で進められるのであれば,何の苦労もないのですけど,そういう人はどうやって育つのか?ということは受験教育などで明らかになっており,「心のスイッチON!」などと呼ばれていますが,どこでその「心の力そのもの」が生まれるのか?については明らかになっていません.まるで「天然もののウナギ」です.
私の研究室の学生には,迫害されたり,不登校であったり,マイノリティであったり……といった学生が多く集まるように感じています.「暖かい海ではないところ」で育った学生が集まる風土があるのでしょうか.いずれにせよ,「挫折をしているけれども明るい学生」が多いです.

じゃあ白井は何を指導しているのか?

研究室での私の立ち位置は,「指輪物語におけるガンダルフ」でありたいと思います.
賢人であり,博識であり,魔法使いであり,タフガイであり,本気を出せば不可能を可能にするような強い力を持っています.
いつも旅に出ていて普通の人には滅多に会えない存在,でもガンダルフにはなれません.理想です.
同じ旅人ならスナフキンぐらいまで,軽やかに,皮肉を言っていたいところですが,そこまで軽やかな存在感ではないです.
実際の学生から見れば,私は「眠った時に出てくる小人さん」,つまりブラウニーぐらいの立ち位置でしょうか.
しかもけっこう隠れるのに失敗しています.
学生が何日も徹夜して書いた,こ汚い論文を一晩もかからずに清書してしまう,そんなことも起きますが,期待されては動きません.
いやなことはやらない,嫌々言いながらやることは速攻でやる.そういう難しいバランス感覚です.

そもそもこの分野の先生はどれぐらいプログラミングすべきなのか?

ところで,今回のSIGGRAPHでのDCAJパーティにて,Paul DebevecとNelson Maxにお会いしました.
PaulはSIGGRAPHのVice Presidentであり,Scritter初代を生んだ,長野君の現在の師です.映画「MATRIX」の超有名シーン,バレット撮影のもとになる技術を大学院1年生で発表した同世代の研究者.
Nelson Maxはつくば万博(1985年)・富士通パビリオンで「UNIVERSE」を作ったドーム3D映像のパイオニアです.この人がいなければ私は未来を見ていないバカガキで,CGにも転んでいないと思います.
そしてNelsonは最近,Pixarに勤めているそうです!すげえ,いま60歳超えてますよね….
そこでPaulがNelsonに「プログラムコード,自分で書いてるの?」って聞いてました.
Nelsonは「もちろん」って答えてました.Paulは「すごいね!僕は最近そんなでもない」と.
私の知る限り,Paulは昔から自分で書いてました,ドキュメントも.HDRShopの翻訳をNHK-ESにいたころにやっていましたが,「その人独特のコードの匂い」というものはあるものです.
まあでもPaulも時間があれば自分で書くだろうな,単に謙遜しているだけかも.
西海岸のCG研究者が偉いな,映画業界から信頼されているな,と思う点はこのへん.
CG研究者として生きている人がそのまま,その産業のコード戦士として戦えるレベルにあること.
だからこそ大きな金額を払うに値する価値がある仕事をするし,その責任は研究者自身が負う.
プログラミングしているうちは頭ボケないらしいので,自分も見習いたいです.

背中を見せて闘うことは大事だが,それだけでは学生は育たない

さて,話を学生の教育に戻します.
背中を見せることは大事ですが,最前線に立っても学生は育ちません.
ある程度,本人のハードルの高さを意識しつつ,100+1%の努力を常に期待しつつ,
本気出した時のクオリティが高く,芸術的で美しくあること,このあたりが大事だと思います.
また学生に示すべきマルチタレント性のその先,つまり難しさも示しています.
白井もつタレントはいくつかありますが,その多様性,エンジニアリングと作家性とジャーナリズム,発信能力などなど,これらは指導して身につくものではなく,「あくまで習慣」であり「生きざま」であり,才能そのものです.
職人としては単一技能であることが重要ですが,ことメディアの分野においては多様性・多才であり,かつそれらを自己管理できることは重要な能力の一つですから,それは背中で示さなければならないことです.
つまり,書き物も,プログラミングも,私は私でやりますし,学生は学生で並列でやります.
どっちが優れているかは,本気勝負です.
もし私が実装できて,学生が実装できないなら,それはしかたがない,学んでいただくしかない.
もし学生が実装できて,わたしがそれを理解できない,追従できないなら,私の学生は共有し,説明できる必要があります.
そう教育していますし,「30%ルールの残り10%」はそのために担保されているようなものです.
もし私が共著者として検証できないのであれば,共著者として不適切ですし,いずれチートを生むでしょう.

よいゲームマスターであること

さいごに,”学生には秘密”のもう一つのロールを書いておくと,
「先生はゲームマスターである」ということです.
「白井研究室」というロールプレイングゲームにはあるときはガンダルフ,ある時はブラウニーとして参加しています.
しかしながら,どんなダンジョンに遠征するか,どんなボスが現れるか?どんな苦難の上にどんな宝を手に入れるか?
といったゲームデザイン,レベルデザイン,バランス調整は緻密に行われています.
“ゲームオーバー”になって死んでもらっても困るからです.
本当の意味でのゲームオーバーは,卒業したときに迎えてもらいます.
卒業して数年したら,
「あのゲームは楽しかったです,先生」と振り返って酒でも酌み交わせればと思います.
まだそんな学生が現れていないのが残念ですけど.
SIGGRAPH 2014 バンクーバーより帰国の機中にて 白井暁彦

2013年5月のほしい書籍リスト

雨なのもあって書店に行ってきました。
以下、「買ってもいいかな?」と思った本です。
調査はくまざわ書店アリオ橋本店

以下、順不同。棚構成順のような感じ。
旧作も含まれていますがお気になさらず。


「ソフトウェアデザイン総集編2001-2012」
Software Design 総集編 【2001~2012】

いままでのソフデザが1冊1PDFの形で収録された付録ディスクがついてきています。


「Objective-Cの絵本」
Objective-Cの絵本 (絵本シリーズ)


「インタフェースデザインの実践教室」
インタフェースデザインの実践教室 ―優れたユーザビリティを実現するアイデアとテクニック

後に紹介する「インタフェースデザインの心理学」とセットでほしい。


「OpenGLESとC++で作るiPhone/iPad実戦3Dゲーム」
OpenGL ESとC++で作るiPhone/iPad実戦3Dゲーム

Unity全盛の中、パンツァーゲームをGLESとC++で作るという視点が面白い。「実践」ではなく「実戦」。


「ドット絵 プロフェッショナルテクニック」
ドット絵プロフェッショナルテクニック―ドット打ちからアニメーションまで (Game developer books)

「Squirrelゲームプログラミング」
Squirrelゲームプログラミング 組み込みスクリプト言語による実践テクニック

ゲームスタジオのインハウススクリプトについての解説、特に日本のスタジオの雄あるスクウェア・エニックスからのノウハウ公開は珍しい。ビジュアル的にもさすがスクエニという感じで、オリジナルではあるけれども3Dキャラクターなども入っておりちゃんと読んでみたい本。

「ゲームプログラミングのための行動AI数学」
ゲームプログラミングのための行動AI数学

なんかタイトルが狙いすぎな気もするが、このシリーズの編集者の意向なのであろう。

<Unity関係> Unity4対応を買わねばならないので難しいところ

「Unityで作るiPhone/Androidアプリ入門」
Unityで作るiPhone/Androidアプリ入門

「Unityで作るスマートフォン3Dゲーム開発講座 Unity4対応」
Unityで作るスマートフォン3Dゲーム開発講座 Unity4対応 (SMART GAME DEVELOPER)

「ゲームの作り方 Unityで覚える遊びのアルゴリズム」
ゲームの作り方  Unityで覚える遊びのアルゴリズム

「Unity 4マスターブック―3Dゲームエンジンを使いこなす」
Unity 4マスターブック―3Dゲームエンジンを使いこなす

「Unityライブラリ辞典 ランタイム編」
Unityライブラリ辞典 ランタイム編

「独習UML 第4版 (CD-ROM付)」
独習UML 第4版 (CD-ROM付)

「パーフェクトPython」
パーフェクトPython (PERFECT SERIES 5)

「マンガライン デザイン・アイデア素材集」
マンガライン―デザイン・アイデア素材集

「アメコミデザイン」
アメコミデザイン

「和文フリーフォント116」
和文フリーフォント116 (design parts collection)

「これからはじめるInDesignの本 〔CS6/CS5.5対応版〕」
デザインの学校 これからはじめるInDesignの本 〔CS6/CS5.5対応版〕

「3D立体映像表現の基礎」
3D立体映像表現の基礎−基本原理から制作技術まで−

河合先生の本。

「ディジタル映像分析 OpenCVによる映像内容の解析」
ディジタル映像分析―OpenCVによる映像内容の解析

この本は本当に役に立ちそう、誰にでも役に立つわけじゃないけど。

「テクニカルアーティストスタートキット -映像制作に役立つCG理論と物理・数学の基礎- [演習データ付属]」
テクニカルアーティストスタートキット -映像制作に役立つCG理論と物理・数学の基礎- [演習データ付属]

著者陣がすごい、内容もマニアック。どこかの学校で使われていたりするんだろうか?

「Google API Expertが解説する Google Maps APIプログラミングガイド」
Google API Expertが解説する Google Maps APIプログラミングガイド

いまさらだけど、書籍があるとは知らなんだ。

「PC自作の基礎知識2013」
PC自作の基礎知識2013 (日経BPパソコンベストムック 日経WinPCセレクト)

PC自作なんて当たり前だと思うのだけど、学生は意外と知らないし、数年に一度ぐらい学ばないと新しい規格とか知らないので。

以下オーム社

「メディア学入門 (メディア学体系1)」
メディア学入門 (メディア学体系1)

「感覚・知覚・認知の基礎 (現代電子情報通信選書―知識の森)」
感覚・知覚・認知の基礎 (現代電子情報通信選書―知識の森)

「知能の原理 ―身体性に基づく構成論的アプローチ―」
知能の原理 ―身体性に基づく構成論的アプローチ―

「はじめてのAIプログラミング―C言語で作る人工知能と人工無能」
はじめてのAIプログラミング―C言語で作る人工知能と人工無能

「はじめてのAIアプリケーション−C言語で作るネットワークエージェントと機械学習−」
はじめてのAIアプリケーション−C言語で作るネットワークエージェントと機械学習−

以下オライリー

「インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針」
インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針

「実践 コンピュータビジョン」
実践 コンピュータビジョン

以下、美術・デザイン本

「ロゴデザインの見本帳」
ロゴデザインの見本帳

「ロゴづくりアイデア大全」
デザインを学ぶシリーズ ロゴづくりアイデア大全

「フライヤーのレイアウト」
フライヤーのレイアウト―映画・展覧会・演劇…目立つチラシのデザインテクニック


「パパとママにアピールするレイアウト&カラーズ」
パパとママにアピールするレイアウト&カラーズ -こども向け商品カタログ・雑誌・パンフレットのデザイン事例集 (LAYOUT & COLOURS)

ちなみに研究室向けにWindows8ストアアプリの開発情報探しに行ったんだけど、全く手に入らなかった!棚がないのかも。

余談なんだけど雑誌「イラストノート」が中村佑介特集だったので個人的に買ってしまった。
www.illust-note.jp/%E6%9C%80%E6%96%B0%E5%8F%B7/
イラストノートNO.26 (付録付き) (Seibundo mook)

http://www.illust-note.jp/%E6%9C%80%E6%96%B0%E5%8F%B7/

卒論プレゼン技術まとめ

卒論も提出し、成果展示も準備が終わり、いよいよ卒論プレゼンが明後日です。

以下、卒論プレゼン技術について、連続Tweetでつぶやいたものがあまりに反響があったのでまとめておきました。
ハッシュタグ #卒論プレゼン技術

あってるかどうか分かりませんし、審査をする先生としてはグッと心に秘めていることかもしれません。当日ついうっかり他の研究室の発表に突っ込んでしまうかもしれないので、とりあえず列挙してみました。

  • 卒論のプレゼンテーションで最も重要なことは、「自分自身が卒業するために、胸を張って研究したことを隣の研究室の先生に話せるかどうか」ということだ。専門家と非専門家の両側の理解と共感を得る視点が必要だ。指導教官や専門家の先生の視点なんて二の次。それは外部発表で。
  • 卒論のプレゼンで「まず言い訳をする」ということは、それが「結論」であるということだ。つまり「言い訳をしなくて済むよう、パズルを解く」という行為、すわなち研究に時間をかけていないということの証明。それを真顔で「通してください」と言われても審査するのは無理。
  • 紙に書いたシナリオを読まないとプレゼンできないということは、設計が甘いか、ビジュアルが足りないか、練習が足りない度胸が足りないかのどれかである。じゃあ読めば片付くのか?紙なしで読めば度胸はつくし、忘れている用語や要点は見えてくるし、練習になる。だからダメよ。
  • 質疑応答での瑣末なツッコミを避けるために、母集団、属性、実験の前提や引用な「瑣末な情報」は画面に入れておく
  • 君の視力で目を細めなければ見えないフォントは、オジサンたちは絶対読めない。
  • そして「余白の美よりレイアウトの美」。無意味な空白があるなら改行入れてでも、ちゃんと配置すべし
  • 「…で?」を言われたくなかったら、冒頭3ページまでに「結論」を述べろ。
  • 迷ったら「(タイトル)」に立ち戻れ。タイトルに結論が含まれていない時点で何かが終わっている。
  • 引用したビジュアルには大学名などで良いのでわかりやすい引用表記を入れよ。自分がやったかのように思っていなくても、見る側はそうは思わない。なお、引用についてはオジサンたちの視力がついてこない範囲で構わない。コントラストも下げ。喋り用。出所が明らかになれば良い。
  • 引用写真でも引出線入れて解説するだけでオリジナリティが追加される。
  • 自分が自信を持って話せない内容なら、こねくり回すよりもカットする。
  • 文字ばかりで話が長くなり、聴衆が眠くなるならビジュアルで1枚で語れるようにする。
  • 発表終了直後の審査員が最も聴きやすく、それでいてボディブローが効きやすい質問は『いろいろ素晴らしいんだけれども、この研究を一言で言うと、何が解決したの?』である。Twitter民なら普段の成果を生かして140文字以下で語って欲しい。
  • 卒論のプレゼンテーションを推敲していく過程で論文執筆時点では見えていなかった『新しい知見』が生まれてしまったりする。それはいままでの考察が甘かったということだが、悲観することはない。いまはうまく整理して胸を張って生き延びるべきだ。ここで折れてはすべてが無駄に
  • 君はその分野について既に「専門家」である。審査の先生方は別の分野の専門家である。質問の意図は『専門家だからこそ、そこは整理して回答できるはず』。なので回答は、Yes/Noでハッキリほしい。もしくは最初の一言で整理されているか。間違っても「言い訳」ではない。
  • すべての質疑応答には「質問意図」がある。質問意図が分からなければ、君の言葉で『~というご質問でしょうか?』と聞き返すべきだ。そして接頭詞に「ありがとうございます」を加えるのを忘れずに。審査の先生方は君とスパーリングがしたいわけではない、それはゼミでやるべき。
  • この発表時間は断罪でも免罪でも贖罪でもない。聞き手の理解を感じながら、相手の目を見て話す。そのために十分に設計する。そうすれば、終わった瞬間に、感動の拍手が巻き起こる。
  • アンチョコ見ていいですか?』ハア?何いってんの?頭に入ってない事を話す気?もう一年居る?
  • 最初の1分で『話の前提も結論も見えない話』をしてはいけない。もしかしたら「一般的なユーザ写真」や「普通のWebデザイン」などのビジュアル1つで十分な話をしているのかもしれないぞ。プレゼンテーションが始まった瞬間から結論に向かい、方向性とスケールをまず描こう。
  • 卒業研究は、就活が大変だろうと、外部発表を何回していようと、それぞれの学生にそれぞれの高さのハードルが設定されている。ハードルの高さは問題ではない。どのような方法論によって、仮説を立て、苦労をし、問題を解決したのか、それを整理して話せというだけのこと。
  • 学部の卒論には問題解決能力が問われる。修士の学位論文には問題解決能力に加えて問題発見能力が問われる。博士の学位審査にはそれらの能力を超えて、人類の歴史への寄与や学術分野を構築するビジョンを問われる。大学により基準は異なるが有名大学ほど博士候補が多く難度は高い。
  • 審査の先生方は優しく聞いているつもりなんだ。でも迂闊にも君の研究が面白かったりすると、普段のゼミの調子でスパーリングが始まることもある。たじろいだり、アタマ真っ白になっている場合ではない。ゴングが鳴るまでスパーリングを続けろ、指導教員はゴングかタオルの準備だ。
  • 指導教員と審査の先生方が場外乱闘を始めたとしても動じたり傍観してはいけない。タイムキーパーの先生にブロックサインか、両拳を上げて判定勝ち宣言を自分でするぐらいの勇気が必要だ。そこは最先端の共同研究テーマを発掘するか、研究室どうしの私恨を残すかの瀬戸際なのだ。
  • なんだかんだ言っても、卒論発表会は君たちの「晴れの舞台」なのだから。

以上です、頑張って!

Kindle Paperwhiteは論文校正に使えるか?

修論や卒論指導などで大量の紙を消費する時期です。

前回、「卒論TeXテンプレ」の話題が反応良かったので、その後ろ工程である論文指導・論文校正作業についても大学教員ライフをハックしてみたいと思います。

取り出しましたるは、今話題の「Kindle Paperwhite」です。

Kindle Paperwhite
7千円代で本格的な電子ペーパーデバイスの登場です。

電子ペーパーディスプレイは好きですが、e-Inkはそんなに好きではない私。

(個人的には国産のブリジストン製などがオススメ、中間調出せるし)

しかし、これが論文指導に使えるなら「本棚が減らせる」以上の価値があるかもしれません。

【まずはサイズ比較】

Kindle Paperwhiteですが、画面サイズ的にはちょうどA4に1/4ページ印刷したサイズ(つまりA6)です。

試しに、いつものように学生がDropboxで送ってきた最新の修士論文を校正することにします。

インクジェットプリンタで1/4プリンタはインクジェット複合機 Brother MFC-935CDN の最高画質で普通紙に出力しています。

20130122-231023.jpg

【↑蛍光灯下・夜の自室での比較】

20130122-145033

【↑昼光下・駅のプラットフォームで比較・ブレ有り】

写真があまり良くなくてスミマセン。
研究室でPCに向かって作業できるならいいのですが、実際にこの作業が必要になるのは移動しながら街中や電車などで使う環境を想定しているので、これぐらいのブレた環境で見たほうがイメージには近いですね。

上の写真をクリックしてよく見ていただくと分かりますが、このサイズでは紙のほうが見やすいです。

ただ、ちょっとだけPaperwhiteをピンチしてクローズアップで見ると、見比べる限りでは特に遜色はない……というか視力が落ちてきた先生方にはこっちのほうが見やすいかも?です。

20130122-145056.jpg

せっかくなのでA5印刷(A4に2in1印刷)したインクジェット紙とも比べてみましょう。

20130122-225356.jpg

【↑A5サイズの印刷(右)と標準表示のKindle(左)】

20130122-225337.jpg

【↑A5サイズの印刷(右)と標準表示のKindle(左)】

拡大表示になるとぐっと読みやすくなります。これはPDF出力時の設定(後述)で、うまく調整できるかも?

なお紙と違ってPaperWhiteには書き込めません(機能的にはマーカー機能がありますが、校正には使えるほどスピーディではない)。

しかも、学位論文ともなると軽く100ページを超えますので、A5印刷両面としても、1版印刷するだけで、時間も紙もかなり消費してしまいます。

一方で、Kindleであれば転送時間だけですし、セカンドディスプレイとしてノートPCのディスプレイ側に並べておくと作業しやすいことこの上なし。

ちょうどA4ノートPCの縦幅にピタリ。

20130122-225405.jpg

え、ウィンドウ分ければいいんじゃないの?って思う人も居るかもしれませんが、
とにかく見やすいディスプレイ。電子ペーパーバンザイ。
マルチディスプレイと違って、PCの操作でPDFが見えなくなったりはしませんし、移動中のノートPCとの連携は特に便利です。

論文の校正以外にも「会議のレジュメ+議事録」といった使い方や、「学生のレポートをKindleで表示しながらExcelで採点」など大学教員ライフハックには便利な使い方がいろいろ有りそうです。

【使う上でのTIPS】

まず常識的でないことを言いますが、Kindle.comのメールアドレスでのアップロードはオススメできません
というのもGmailの添付ファイルの上限は25MBです。学位論文のサイズとしては軽く超えることがあります。
また、添付できたとしてもTeXで生成した日本語PDFはそのままではKindleでは読めません。

さらにいうと、勝手にサーバー側でKindle形式にコンバートかけられるので、Wordなどはレイアウトの再現性がイマイチです。学位論文のようにレイアウトがそれほど凝ってないものであれば影響は少ないかもしれませんが、これで直しを入れられる学生さんとしては、再現性が高いほうがいいに越したことはないです。

兎にも角にも日本語の文字化けをどうにかしたいわけです。

SendToKindleIcon

 

そこで、Amazon.com (米国)でのみ無料公開されている「Send to Kindle」というアプリの使用をオススメします。

www.amazon.com/gp/sendtokindle

このアプリはAmazon本家でのみ使えるような雰囲気がありますが、日本のAmazonに登録したメールアドレスとパスワードがあっていて、Amazon.com上で日本のストアを使う設定があれば使えるようです。

(私の場合は米国のAmazonアカウントにはKindleデバイスを割り当てていませんがうまくいきました)

ちなみに、このアプリはインストールしても何も起きません。

Kindleに送りたいPDFファイルやWordのDoc, Docxをエクスプローラで選択して、右クリックすると、「Send to Kindle」というメニューが出ますので、そのまま選択すると、以下の様なダイアログが現れます。

SendToKindleDialog

私の場合「あきさんのKindle」の他に、iPhoneアプリの「Kindle」もアカウントに紐付けられているので同様に送信先として選択できます。

このアプリをインストールすると、印刷デバイスに「Send to Kindle」というプリンタが現れます。こちらはまるで印刷する感覚でKindleに高品質な電子書籍を送ることができます。
特に日本語フォントを再レンダリングしてくれるので文字化けとはおさらばできますし、PDF印刷でよく使う「縦横自動回転」や「2 in 1 印刷」、冊子印刷などのオプションもサポートします。

あとはKindleをWifiの繋がる場所においておくだけ!シンプルでスマートで、簡単です。

まとめ…Kindle PaperWhiteは論文校正に使えるか?

メリット:版を更新するたびに印刷する必要がないので紙が無駄にならない、持ち運びが楽、紙の山で混ざらない、iPadなどと比べて重くない・電池が持つ。
デメリット:カラーではない(FireHDも試したい)、書き込めない、学生が持ってない、ページ数が増えても手に感じない(学生の頑張りを触覚で感じられない→これは研究になるかも!?)。

結論:論文校正には使えるとおもいます!

お買い上げはこちらから(Amazon)↓

Kindle Paperwhite

Kindle Fire HD 16GB

Amazon Kindle PowerFast急速充電器 (端末には付属していません)

卒論が1ミリも進まない4年生におくる,TeX卒論サンプル

2013年度版加筆を計画中

INDEX

  • 序文
  • まずは読んでいただきたい完成版
  • TeXサンプルに書かれている日本語から…
  • はじめに
  • 卒論とは何なのか
  • TIPSと更新
  • 関連リンク

待つ身はつらいものです

(2013年初頭のお話)研究室内での卒論提出締め切りまであと10日ほどだというのに,いまだに毎日学校に来ない4年生がいらっしゃいます.

年末年始も,この成人式の連休も,私は彼の言葉を信じ,適切な課題(これも今の段階では絶体絶命ラインを大きく下回っているが)を設定し,呼びかけ,時には直電もし,待っているのですが,見事に裏切られます.

(私がなめられているのかもしれませんが,社会もナメているのかもしれませんが)

彼らはきっと自分の卒業を信じていないのでしょう.

しかし待つ身というのはつらいものです.K君、R君、S君、N君…はやく論文構成を出していただきたいのですが…。

…と学生に無理な負荷をかけても仕方ないので,自分自身でもどれぐらい時間がかかるか体験してみようと思いました.

研究室内でのTeXによる卒論のサンプルを丁寧に作って,サンプルがてらの未推敲の文章をモリモリと書いてみます.
(本当はやらねばならない事務仕事や執筆仕事があるのですが)
2時間もするうちに10ページはかけたので以下,公開してみます.

まずは読んでいただきたい完成版

Sotsuron(PDF)

zip 卒論が1ミリも進まない4年生におくる,卒論サンプル (26147) (TeX一式)

#卒論が1ミリも進まない4年生におくる,卒論サンプル README

Version 1.1 20:07 2013/01/15

【執筆に使用した環境】

執筆に使用した環境としては,LabEditorとTeXインストーラ3もしくはLabTeX Installerだけです.

■Lab Editor
www.labeditor.com/

□LabTeX Installer
www.labeditor.com/labtexinst.html
もしくは

□TeXインストーラ3
www.math.sci.hokudai.ac.jp/~abenori/soft/abtexinst.html

最近の国際会議などでよく使われるifxetexを通したい人はTexインストーラ3のほうがおすすめかも.

【使い方】
TeXインストーラ3をインストールし,LabEditorをインストールし,セットアップ後,
Sotsuron.texをLabEditorで開いてビルド(F12)します.

基本的にはLabEditorのマニュアルに従ってください.
図はコマンドラインでebb filename.pngして,bbサイズを取得します.

【おことわり -disclaimer-】
著作権は白井暁彦に帰属します.将来的に更新します(推敲していないので).
また本稿の内容は神奈川工科大学や白井研究室の特定の人物や特定の研究とは全く関係ありません.
どちらかというと,いままでの研究者人生,教育者,執筆者としての経験に基づいていますので,
中身的な保証もありません.フィードバックをいただけるのであれば幸いですが下の方法でお願いします.

【お問い合わせ】
メールは日に3桁超えるので,役に立ちません.
Twitter(@o_ob)ぐらいなら反応するかもしれません.
いずれにせよボランティアですから.
最新情報などはこちらへ

卒論が1ミリも進まない4年生におくる,TeX卒論サンプル


【謝辞】
ベースはこちらのyosshi71jpによるTeX解説から作っています.ゼロから作りたい人はこちらをどうぞ.
そのほうが絶対勉強になりますって!
d.hatena.ne.jp/yosshi71jp/20101210/1292005429

TeXサンプルに書かれている日本語から…

<以下,駄サンプル文から引用,改訂予定,上記PDFのほうが読み物としては読みやすいはず.以下,論述なので基本は「である調」であるべきだが、意図的に口語が混ざっていることに注意>

はじめに

本論文はドラゴンクエストにおける魔法の命名規則におけるユーザビリティにおける雑文から,TeXを使った卒論執筆手法を整理するものである.
論文の要旨とは,その論文の主題や前提となる背景,論文の構成,研究の成果や価値を特徴付ける実験手法や結果について1ページ程度で凝縮して表現するものである.

文体として「まず1章では…,
次に2章では…,最後に3章では…,
以上のような構成において,新しい視点を整理した.」といったテンプレートに沿った文体になるべきで,随筆調になったり,(たとえ本当に精神的な支えであったとしても)家族や恋人,指導教官への愛敬の念を述べてはいけない.

執筆順としては,完璧に書けないまでも,論文要旨は「卒業するぞ」と心に近い,指導教員と論文のストラテジを相談した直後に書いてしまうのが良い.後から『う~ん,ここはどうかな~』といって直されてはたまったものではないだろう(先生もたまったものではないのだ).

もちろん最初から完璧な論文要旨などかけるわけがない,しかし,骨子となる流れはできているべきなのだ.論文を「序論,本論,結論の3パートに分けよ」という指定がある大学もある.その場合は,どのパートが何章にあたるのか,示せる場所はここしかないし,ページボリュームを考える上でも,執筆終了できるまでの体力・時間配分もこの段階で設計されるべきなのである.
そして,最後に結論パートを書き終わった段階で,再度この要旨を推敲すれば良いのである.

本サンプルではドラゴンクエストにおける魔法の命名規則が出現するが,間違っても神奈川工科大学ではこのような学位論文を受け付けてはいないことを注記しておく.
また各大学・研究室では脈々と引き継がれてきた先輩方のテンプレや,先生方の指導方針があるはずである.そちらのほうが優先であることは間違いない.

%%% 目次
\tableofcontents
\mainmatter %%% 本文ここから

\part{序論} %3部構成を取る必要がない場合もあります
\chapter{はじめに}

\section{卒論とは何なのか}

卒業論文とは,大学を卒業するものが得る学士という称号と引き換えに書くものである.修士は修士論文,博士号あれば博士論文.
通常,「学位論文」と呼ぶ場合は博士論文を指すことが多い.

人によっては一生に一度の「名前の残る著作」であり,書く前と書いたあとでは,何かが違うはずである.

博士論文にもなれば数百ページを超える.人間として大切なものの1つや2つぐらい失う覚悟でなければ到底書ききれない.

学位論文は指導教員の指導に従い,フォーマットに沿った研究や執筆を行うことで,なんとか形になるものである.
修士論文では,学部時代に求められた問題解決能力に加えて,修士にふさわしい問題発見能力が備わっているかどうか,という点が多く見られるはずである.つまり研究として,本当に新規性があるかどうか(引用や予備調査など),客観的な品質が保たれているか(実験方法や誤差の扱い,再現性)などが重要である.

博士論文についてはここでは多くは語らない,ただ言えることは修士論文にページ数だけ多くなれば学位がもらえると言うことではないことである.
簡単にいえば,この学位論文を通して,人類の歴史にどのような意味をもたせ,新たな学際分野を創出していけるのか,といった点を示すための「点や直線ではない面積」が必要であることが多い.

こういった博士論文はすべて,大学の図書館および国立大学であれば国会図書館に収蔵されているはずである.
一方で,自信を持って「博士論文はこう書け!」といったお手本のようなものがないのも現実である.
誰もがそんな風に自信を持って博士号がとれるわけではない,本当に生きるか死ぬかのギリギリでもらえるラインであることが多いからである.

本サンプルではそのような切羽詰まった世界ではなく,
単なる\textbf{TeXで書く大きめの論文}を示すにとどまる.そのうち,気が向けば筆を執ることもあるかもしれないが,それはこれを活用した読者各位の心がけ次第といったところだろうか.

本サンプルが読者各位の人生の糧になる事を願ってやまない.

\section{課題の設定}
卒業研究において,最も最初に取り組むべき事はなんだろうか.

『就活が忙しくてそんなどころじゃなかったッス』という卒研生も多いだろう.
しかしながら,就活中の面接で「キミはどんな研究をしているのだね?」と聞かれなかった4年生はいないはずである.

その面接官は君に『マイクロソフトの新しいゲーム用コントローラであるKinect\texttrademark を使った,新奇なVRエンタテイメントシステムを開発しています』といった,超専門的で価値があるのかないのかわからない話をして貰いたいとは微塵も思っていないはずである.

問題は,その研究が
\begin{enumerate} %番号付き列挙.便利なので覚えるべし
\item 『どんな課題を解決しようとしているのか?』%ここに項目を書く
\item 『その課題解決はうちの業務に役に立ちそうか?』
\item 仮に役に立たなくても『そのガンバリはうちの業務に役に立ちそうか?』
\end{enumerate}

といった程度のことを聞いているに過ぎない.

このような背景において,間違っても

\begin{itemize} %ただの箇条書き,これも便利なので覚えるべし.
\item c++とC\#ではC\#のほうが得意です
\item Processingしか書けません
\item KinectはOpenNIもMicrosoft KinectSDKでもどっちでもいけます
\item 処理はGPU上で動いてます
\end{itemize}

なんていう話をしても仕方がないのである.
上記に列挙したような要素は,開発の中身であって,先端の研究をしている人間が,採用担当者や他の研究室の先生に『わかってもらおう』などという態度で前提をすっ飛ばして語っては,失礼千万あまりあまって,ただのギークと思われても仕方がない.

論文というものは,残念ながらインタラクティブ性をもたせることが難しい.
しかしながら,想定した読者に対して段階を踏ませることは可能である.
つまり,この章では『なんでそもそもこんな研究しとるねん』という「課題の設定」を行うべきなのである.
英語でわかりやすく言えば,\textit{motivation}である.
モチベーションがなければ,研究する意味もない.

そして,読み手にもそのモチベーションを共有させる必要があるのだ.

\section{陥りやすい罠}

この時期(論文執筆時点:2013年1月上旬),序論において陥りやすい過ちがある.
それはこのパートを「一番最初に書く」ということである.

%クォーテーションはこう書く↓
『なんだよさっき,“一番最初に”って言ったじゃないか!』とお怒りを受けそうだが,研究(\textit{re-search})を進める上で調査(\textit{search})をせよ,つまり先人の研究や論文検索をせよ,という前期のゼミで先生方が課しているようなアタリマエのことを述べただけであり,最初に書くのはせいぜいメモ程度,論文要旨程度の分量で構わない.

このパートは年末年始のコタツでTVなど見ながら書いていては,完全な随筆となってしまう.
資料として図書館で借りてきた図書をモクモク読みながら書いていても,
『ああ!俺の研究はどこまでもダメ研究だ!』という気持ちになってくる.

そしてどこまで書いても,
『ああ!この論文はこのペースで行くと100ページ超えてしまう……!今年は卒業無理かもしれない』という絶望感で覆われることになる.

だから書いてはいけないのだ.

もちろん,資料は借り給え.借りたら,有益そうなものはまず書名を文末にある引用文献リストに載せ給え.引用する必要があれば\ref{tex}といった形で本文で引用すれば良い.
図版なども同様である.
まずはスキャナでもスマホでもガラケーでもいいから図版を撮影し,画像の入れ方を学ぶべきである.
PNG図の入れ方がわかれば,あとからPowerPointでいくらでも清書したら良い.

書物を進める順番については次の章で述べる.

\chapter{執筆順序}

卒業論文に定められた執筆順序というものはない.
読み手からすれば「第1ページ,第1章から読むであろう」というナンバリングは存在するが,それも厳格に定められたルールではないだろう.

\fbox{読み手が正しく理解できるか},という品質の問題と,\fbox{読み手と同じ順序で書く}という方法は一致している必要がない.

つまり,第1章から書くのは間違いである.
第1章は,読み手の第一印象である書き手の丁寧さや,前提知識の共有,課題の共有を行うべき,大事な章である.
初めて卒業論文を書くであろう,君がいきなり書いても,論文を書き終わる頃にはもっと大きくなった君がいる.
絶対に推敲したくなるに違いない.

では,どこの章から書くべきなのだろうか?
筆者おすすめの方法は以下のとおりである.

おすすめの執筆順序
下のTeXソースをコンパイルするとこのような美しい表になる

% 表の挿入
\begin{table}[h]
\caption{おすすめの執筆順序}% {}内に表題を書く
\begin{center}
\begin{tabular}{|c|c|l|} %セル内の位置{c:センタリング,l:左寄せ},パイプ「|」縦罫線
\hline
1 & 4章 & 開発の中身,実験方法となんとなく見えている(or 予想される)結果 \\
\hline
2 & 3章 & 理論と仮説,この段階ではだいたいでいい,上記実験のベースになっている素案ぐらいでも. \\
\hline
3 & 5章 & 結果のグラフ,理解できるグラフを描きなおすために実験をやり直してもいい.チート厳禁. \\
\hline
4 & 2章+3章 & 関連研究,課題設定→理論までの展開を整理しながら \\
\hline
5 & 1章+6章 & できた結果について素直に受け止められるよう,風呂敷を広げすぎずに. \\
\hline
6 & 論文概要 & 章構成を再度見直し,推敲時にブレないように,ここで固める. \\
\hline
7 & 全章推敲 & このあたりでやっと先輩や先生に見せられるレベル,ただし卒業は見通しが出る. \\
\hline
\end{tabular}
\end{center}
\end{table}

以上のような流れで書いて見ることをおすすめする.

この流れは特に工学をベースとする学問を想定している.

\subsection{4章は“君なら書ける”}

4章は「動いているもんがあるんだから,書けるだろ」という考えでいい.
プログラミングをやめて,コメントやWikiを書くつもりで,コードの設計や,開発環境のセットアップなどを書き始めるのもエンジンがかかる.\footnote{実際には「開発環境などは付録に書け」と指導教員の指導を受けるだろう.だとしても,冬休み期間中に1ミリも執筆が進まないよりは,先生の血圧計は高まらないことが経験的に報告されている.}

\subsection{写真を撮れ}
まずは動いているものがあれば,写真を撮ろう.スクリーンショットを撮ろう.ソースコードの大事な場所や体験者の様子など,わかりやすい図(\textit{key figure})を配置して,キャプションに,言いたかったことをしっかりメモしておこう.
先生にそれを見てもらえば大体のあらすじはわかる.言葉尻は優しくなり,血圧計の針も下がろうというものだ.

『動いているプログラムすらないんです……』という学生もいるだろう.
そんな時は引きこもりなどする必要はない.アンケートを作ればよいのだ.

\subsubsection{予備調査:アンケートを作り,結果を示す}
研究の核である実験に入る前に「予備調査」を行うべきである.

例えばコンピュータサイエンスに関わる研究分野でも,人間が関わる研究は多い.
しかし,『被験者』とあっさり述べたとしても,誰が被験者なのか,予備調査をしているのだろうか?

例えば『○○を用いたコミュニケーション支援の研究』といった研究テーマがあったとする.
しかし論文のどこを読んでも『誰が』,『誰を支援するのか』,『どのような人がその支援を必要としているのか』が明確にされていない論文を書くことはたやすい.

本人は2章の「先行研究」で述べたつもりである.
もしくは『先生の言うとおりにすすめたんですぅ……』という話かもしれない.
仮に引用があったとしても,時代も,対象も,コンテキストも違うのである.
被験者の予備調査,文系的には「マーケットリサーチ」ぐらいはしても良いだろう.

今日ではGoogle Docsを用いたGoogle Formによるアンケート作成が便利である.
先生に見せてみる事で,研究手法の前提を確認する事もできる.被験者依頼の事前入力にも使える.

何より,プログラミングを1行もしなくても,このアンケート作成をして家族だろうがバイト仲間だろうが彼女の友達だろうが入力してもらえば『それらしいグラフ』は誕生する.

最終的に先生が「そんなデータはこの論文に含めてはいけないよ」とおっしゃるかもしれない.
しかし,卒論が1ミリも進まない君にとっては重要なことではないだろうか.

\subsection{5章は分解すれば書ける}

次に「5章のグラフ」は価値が大きい.グラフは0.3~0.5ページに換算できる.学会発表やゼミなどでPowerPoint用にコチョコチョとした凝縮したスクリーンプレゼンテーション用の図を書いている学生がいるが,この際なので,そのPPTXファイルを論文執筆用にスライドページコピーを使って「分解」しよう.

例えば,ある実験のパラメータを$\left\{X,Y\right\}$とし,被験者が5名 $\left\{A,B,C,D,E\right\}$といたとしよう.
スクリーンプレゼンテーションでは1ページで終わらせる内容かもしれないが,今回の論文ではそれはいけない.
そんな濃縮度では読み手は全く理解できない.

まずパラメータX,次にY,被験者の年令や性別などの分類も「分解」する必要があるかもしれない.

単位や背景となる補足情報を含めて考えれば,それぐらいの希釈は必要である.
そもそもこれはスクリーンプレゼンテーションではなく,「紙媒体」なのである.
凝縮して見せることに意味はなく,またアニメーションも使えない.カラー印刷だって使えない可能性もある.

例えば,データ点「▲」などが詰まりすぎて見えないグラフなどはPowerPointでは許されるかもしれない.
しかし学位論文ではそのページが全てなのである.許される許されない以前の問題で,読めない.

\subsection{2章+3章はひとつの章}
セオリー通り書くと,2章は「先行研究」であり,3章は「理論」である.

しかし,理論も先行研究も,初学者の端くれである4年生にはなんとハードルの高いことか.

先行研究の調査は日々の習慣である.
図書館に通い,学会に通い,ゼミに真剣に取り組み,足繁く論文や,先端の研究者をウォッチしてこそ,先行研究リストやBibtexのデータベースを構築できるものである.

しかし,冬休みに至るまで,動画ウォッチ三昧の日々を送ってきた君にとって,そんな蓄積を求めるのは『何かのハラスメントか』と思うに違いない.

\subsubsection{2章が書けない動画中毒者向けマッピング手法}

では,考え方を変えてみてはどうだろうか.
動画をウォッチしているのであれば,現在取り組むべき問題を見つかるはずである.最先端の「やってみた」ではこんなことが起きている,こんな動画が流行った,そんなポインタから,どんな研究者がこれをやっているのか,それは本当に新しいのか,など調査を始めればよいのである.

もちろんニコ動やYouTubeの動画URLは参考文献にはならない.しかし動画URLの引用1に対して,似たような分野の論文が2~3件は見つけられるはずだ.見つけられないなら君は情弱者だ.
いや百歩譲ってIPDLやUSPTOといった特許検索(最近はGoogleでもパテントサーチできる)を使えば,絶対に何か出てくるものである.

それらの要素をまずは紙に書き出してマップにしてみよう.
十字線を引いて,君の研究テーマの軸を適当に用意して,マッピングすればいい.

例えば最初は『重い/軽い』,『無意識/意識』といった適当な軸で構わない.
さらに何度かシャッフルして,先生や先輩に一度見せて,助けを求めながら,他者の研究をぶった切るラインを見つければ良い.

最後に,この論文,君の研究テーマにおいて「この課題について解決する」という結び方で語れるように,2章を配置すれば良い.
もちろん要素は3つぐらいあっても良い.この3要素は「解決すべき課題」として3章の「理論」で述べれば良い.

\subsubsection{3章はアルゴリズムがあれば書ける}

仮説や理論など,最初から書けるはずがない.

心配することはない,まずは上記の3要素が見つかれば,一旦4章と5章に戻り,実験を増やして,ちゃんと要素ごと解決すればよいのだ.

例えば解決すべき課題が3つあれば,3-1,3-2,3-3という構成になる,実験方法や開発物として4-1,4-2,4-3が生まれる.この中にスピンアウト作品が含まれることもある.
そして結果が5-1,5-2,5-3,さらに5-4として,別の意味を持った視点も生まれてくるだろう.

ではここで振り返って「3章で書くべきこと」は何なのだろうか?

それは「アルゴリズム」である.

理論化しづらい複雑で整理されていない現象を,その開発したシステムや仮説は整理してくれる.
式やフローチャートで表現出来れば十分アルゴリズム化することはできるだろう.
逆に,不確定な要素が残っているなら,もういちど実験方法から見なおしたほうがいい.

逆にここで,アルゴリズムに落とせないと,何の研究をしているのか全くわからない.
うまく,法則性や傾向などを語ることができれば,かなりの快感があるので頑張って欲しい.

ここでの頑張りは,見返りが大きい.

もしどうしても「言語的にしか表現できない現象」なのであれば,それは,仮説として論調を整えるしかない.
仮説として,誰も唱えていないことを2章で明らかにしておこう.
その仮説を裏付ける「当たり前の結果」を5章で示す準備も忘れずに.

\section{1+6章は最後に書け}

さて,3章で理論や仮説が成立すれば論文はひとつに繋がる.

\subsection{6章は“軽い妄想”でいい,将来的な意味を書こう}

おそらくこの段階の論文は,4章と5章が分厚く育ち,場合によっては「まだ開発と実験を繰り返している」という状態かもしれない.
このフェーズに入れば,論文はどんどんとページを増やすことができる.まずは写真を撮りまくってほしい.

しかしタイムリミットまであと数日という段階までこれを続けてはいけない.徹夜続きもそろそろ限界だろう.
「撮れない写真」を撮るために頑張るのではなく「\textit{ここは一旦筆を置く}」という姿勢をとるために,まずは開発を終わろう.

そして,将来的な開発要素を6章に書き連ねよう.
こんなことを実装したかった,こうあるべきだ,ここの最低品質なコードをどうにかしたい,その辺りは箇条書きメモ程度で書いて,あとで先生に表現を助けてもらえば良い.
どちらかというと,将来的にどうなるか,スケーラビリティが大きくなればどうなるか?といった事を書けば良い.

たとえば君の研究テーマが数年後に「Googleがはじめた」としたらどうだろうか?
君は悔しいかもしれないが,どうやったら「それを予測し得たか?」のほうが重要ではないか?

おすすめの方法は『予想図』をイラストレーションすることだ.
Google画像検索では出てこないぞ,自分で撮影するか,描くしかない.
ただし,動いているもので描写する必要は,ここではない.
フェイクでいいとは言わない,読み手が想像できる程度のリアリティがあればいい.

「軽い妄想」でいいので,将来的な意味を教えてほしい,という章であるべき.

\subsection{ついに1章に!}

なんだかおかしな話だが,これでやっと1章を書くだけのすべてが揃ったわけだ.
君はこの研究論文についてのすべてを知っている.
みんなが知っているあの研究,あの動画のあの技術,実はそうではない,こうすることでありえないことが起きる……
度重なる苦難,ありえない実装方法,裏付ける被験者データ……よくできた学位論文はよくできた長編SF小説のような読後感がある.

それを「あたかも想定内」であるかのように書くことができる時がきた.

さあ,1章を残り時間の「半分」をかけて,書けば良い.

\section{論文概要ふたたび}

言うまでもなく,ここで論文概要を加筆・推敲しよう.
間違っても途中で修正してはいけない,論文がブレると周りで巻き込まれる先生や先輩が可哀想だ.
できればA4いっぱいいっぱいに熱意を持って書こう.

\section{全章推敲}

全章推敲は100ページ近くになった論文に対して,無駄な紙の山ができ,本当に心苦しい.エコでないので一刻もはやく終わらせたいところである.
残念ながら,この作業は通常,時間終了まで何回やっても終わらないループである.

大事なことは以下のポイントだろうか.
\begin{enumerate}
\item たまには印刷してみる.紙のほうがはるかにはかどる(A5サイズなどでよい).
\item 先生が修正指摘した箇所は二度と修正候補にならないように確実に修正する
\item 日付等のバージョン番号で管理し,古いバージョンのTeXは削除や変更ではなく保存しておく
\item 本気で最終版ならバインダーに入れて
\item 先生がブレることもある
\end{enumerate}

(1)は電車移動中やファミレスなどで気分転換作業するのに適している.

(2)は,学生は軽い気持ちで修正を反映し忘れるが,先生からすると\underline{一気に血圧が上がる反逆行為}である.本当に完全に修正完了しているならもう手を加えず,バインダーに入れ,TeXファイルはinputコマンドを使い分割してしまおう(本稿ではドラクエ魔法部分がそれにあたるので参考にされたし).

(3)長い時間徹夜で校正作業を行なっていると,見落としも多くなる.表紙をうまく使うと日付で見分けることができる.そして古いものは箱にでも入れて視界から消そう.Amazon箱などが便利である.

(4)バインダーに入れて,表紙をつけるとそれらしくなる.卒業への実感がみえてくる.とおもいきや,表紙を糊付けしようにも,ノリが乾かない,最終タイトルそもそも決まってない,といった絶望的な「不測の事態」が目の前に明らかになるので,まちがっても締め切り当日朝などに作業してはいけない.もし締め切り直前に作業するなら「先生が設定した締め切り」の前日にこっそり作業し,先生の出勤前に机上に“耳を揃えて”提出しておくのがカッコイイ.その際に間違えても,捨て台詞的なことを言ってはいけない.

先生と君はバディのようなものだ.自分からラインを切るようなことは自殺行為である.君の学位審査が終わるまでは.

★そんな先生の指導ストレスを少しでも軽減するために書いたエントリー「Kindle Paperwhiteは論文校正に使えるか?」もどうぞ.

% 図の挿入
\begin{figure}[htbp]
\begin{center}
\includegraphics[bb=0 0 432 576,width=5cm]{figall/phd101212s.png}
\end{center}
\caption{Piled Higher and Deeper:「“FINAL”.doc」(10/12/2012)より www.phdcomics.com/ 参照}
\label{http://www.phdcomics.com/comics/archive.php?comicid=1531}
\end{figure}

(5)最後に,先生も人間である.沢山の学生を同時に指導し,若い君たちの勢いに押されて何日も徹夜していれば,間違いもある.
そんな時には怒号に怒号や号泣で返すのではなく,まずは確かな方針に従うことだ.
そんな時に,論文概要は君を助けてくれるだろう.
だから今,卒論が1ミリも進まないい君は,いますぐ,先生と論文概要と章構成については合意を得て置かなければならない.

\section{一旦筆を置く前に}

以上の通り,一気に書き綴って見たが,お役に立てたら幸いである.

「右を左に,左を右に……」としている時間は,今はない.
いままで寝て過ごしてきたツケは,君が払わなければならない.
君の卒論を指導する先生も“もちろん”心中するつもりだが,同じ勢いで闘えば,若い君よりも先に倒れることは間違いないのだから.

ちなみに君が先に倒れるなら,先生は安心して家族のいる家に帰ることができる.
果たしてそれは幸せな終わり方だろうか?

代わりに,君の卒業は1年遠のき,就職先も失う.君は来年も同じ研究室にいられるかどうかもわからない.
君の親御さんの経済的ダメージもある.
どんなにお金持ちだったとしても,老後に予定されていた海外旅行は1回はなくなるだろう.
年下の兄弟がいれば,彼らは進学を諦めるかもしれない.
それは君の最後の踏ん張り次第なのである.

『先生,ここの直しは明日までに仕上げておきます!今日は帰ってお休みください!』
というセリフが自然と出てくれば一人前である.
一方で,
『先生,なんだか研究,面白くなってきちゃいました』
なんてセリフを1月の下旬に聞く絶望感は,正直殺人的である.

このサンプルを見て,少しでも良い学士が誕生することを願ってやまない.

TIPSと更新

・目次にサブセクションまで含ませたい


 デフォルトのままでは目次には「1.1」までは含まれても「1.1.1」までは含まれません.大学のフォーマットによっては「サブセクションまで目次に含める」などあると思いますので,
 

\setcounter{tocdepth}{2}

 をプリアンブル部に加えて下さい.プリアンブルとはTeXファイル冒頭の「\documentclass[]{}」から「\begin{document}」までの間です.

・章タイトルを中央揃えしたい

未確認情報ですが,うちの学生いわく:
こちらのコードをプリアンブルに配置してください.こちらは,章番号が振られている標題のみセンタリングを行います.

\def\@makechapterhead#1{\hbox{}%
\vskip2\Cvs
{\parindent\z@
% \raggedright% オリジナルの定義(左揃え)
\centering% 中央揃え
% \raggedleft% 右揃え
\reset@font\huge\bfseries
\ifnum \c@secnumdepth >\m@ne
\setlength\@tempdima{\linewidth}%
\vtop{\hsize\@tempdima%
\if@mainmatter% ← report クラスの場合この行不要
\@chapapp\thechapter\@chappos\\%
\fi% ← report クラスの場合この行不要
#1}%
\else
#1\relax
\fi}\nobreak\vskip3\Cvs}

参考文献が[1]形式ではなく「上付きカッコ1)」だった

\usepackage{makeidx}の下,\makeindexの上に以下を書くと良いそうです.

\makeatletter
\DeclareRobustCommand\cite{\unskip
\@ifnextchar[{\@tempswatrue\@citex}{\@tempswafalse\@citex[]}}
\def\@cite#1#2{$^{\hbox{\scriptsize{#1\if@tempswa , #2\fi})}}$}
\def\@biblabel#1{#1)}
\makeatother 

関連リンク

お茶の水女子大・伊藤先生による「修士論文の作り方」およびそこから他の先生方へのリンク

itolab.is.ocha.ac.jp/~itot/lecture/msthesis.html

【関連】

卒論、そろそろ図書館を本気で活用すべき時期。

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